CoinPostで今最も読まれています

モナコインに対する攻撃|史上最大級のブロックチェーン攻撃事件

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

モナコインのブロックチェーンが攻撃され、MONA価格が下落
17日に最高値で約430円をつけていたMONA価格は、370円まで下落(約−14%)しました。今回のBlock withholding attack、Selfish Miningと呼ばれる攻撃について解説しました。
今回の事件での攻撃について
今回の事件は被害額だけでは計ることができない重大事件です。PoWの特性上生じているリスクであるため、この手法を模倣する人が続出すると、他のPoW通貨にも影響が出る可能性があります。また、取引所は、承認間隔が短く、ハッシュパワーが低いPoW通貨の承認回数を増やす対応が増えるかもしれません。
PoWとは
仕事の証明(Proof of Work)。 ビットコインのシステム運用のために定められたマイニングルール。マイニングによる報酬は、計算能力の高さが重視される。
PoSとは
保有による証明(Proof of Stake)。PoWと違い、コインの保有量を重視して新規発行の仮想通貨が貰える仕組みのこと。マイニング(採掘)ではなく、フォージング(鋳造)と呼ばれる。

▶️CoinPost:仮想通貨用語集

モナコインのブロックチェーンが攻撃され、MONA価格が下落しました。

出典元:bitbank

17日に最高値で約430円をつけていたMONA価格は、370円まで下落(約−14%)しました。

この事件は、Block withholding attackSelfish Miningと呼ばれる手法での攻撃によるものです。

一体何が起きたのか、Block withholding attack、Selfish Miningとは何か、一から解説していきます。

ブロックチェーンの分岐について

まず、通常時のブロックチェーンの分岐についておさらいします。

ブロックチェーンは、トランザクション(取引履歴)などをまとめたものであるブロックが、次々と鎖のようにつながりながら保存されていっている、とイメージする方が多いと思います。

この流れの中で、同時に複数のブロックがマイニングされる場合があります。

悪意を持ったユーザーによるものなどのケースがありますが、ここでは偶然同時に複数ブロックが生成されたケースを説明します。

画像のように、PoWのブロックチェーンでは、「長いブロックチェーンが正当なもの」とされ、マイナーは長いブロックチェーンにブロックを繋げることにインセンティブがあるため、短い方は捨てられて、長いブロックチェーンが続いていくことになります。

今回の事件での攻撃について

それでは今回の事件の話に戻ります。

マイナーはブロックをマイニングした場合、通常であればすぐにブロードキャスト(ビットコインネットワークに送信し全世界に公開)します。

しかし、今回の事件では、次のブロックを掘るのに優位な条件を持ったマイナーが、ブロードキャストせずにマイニングしつづけました。

青:最長と思われているブロックチェーン
灰:隠されたブロックチェーン

先ほどの話に戻ると、PoWのブロックチェーンでは最長のものが続き、短い方は捨てられます。

しかし、今の状態では、最長と思われているブロックチェーンよりも長い、隠されたものが存在していることになります。

ここで一気に、隠されたブロックチェーンがブロードキャストされたとします。

灰:破棄されたブロックチェーン
青:正当なものとみなされたブロックチェーン

すると、PoWの「長いブロックチェーンが優先」のルールが適用され、今まで最長と思われていた灰↑のチェーンは破棄されます。

つまり、この間に行われたトランザクションも無効になります。

これをreorg(re-organization:再編成)と言い、これらの一連の流れを意図的に起こすものが、Block withholding attack、Selfish Miningと呼ばれる攻撃です。

具体的な経緯と被害額

青(正):Livecoinへの送金取引記録○
灰(隠):Livecoinへの送金取引記録×

Livecoinという取引所は、青↑のブロックチェーンで「取引所にMONAが送金され、他通貨との売買も完了」という取引が記録されていました。

その後、先ほどの手順通り灰↓のブロックチェーンがブロードキャストされました。

灰(廃棄):Livecoinへの送金取引記録○
青(正):Livecoinへの送金取引記録×

その結果、「取引所にMONAが送金され、他通貨との売買も完了」という取引記録が破棄されてしまいました。

正当なものとなった青↓のブロックチェーンでは、そのMONAが別のアドレスに移動された取引記録が存在し、それが正しいものとして残っています。

これにより発生した被害の総額は、約24,000 MONA(正確な数字は不明)と推測されています。

17日の1 MONA=約417 円で計算すると、約1,000万円の被害額となります。

この攻撃の対策

PoWである以上、対策出来ることは「取引所が入金OKとする時のブロック承認数を上げる」以外に有効なものはないとされています。

他にはPoSへの移行も提案されています。

注意点として、これは、PoWだから危険、PoSだから危険ではないという話ではありません。

最も単純なPoSは、最も長いブロックチェーンを承認するインセンティブがないことが原因で、適当に全取引を承認していくマイナーが出て、分岐が収束し辛くなるという「Nothing at Stake問題」なども指摘されています。

よって、優劣ではなく、どの部分を重視するかという話になります。

取引所の対応

モナコインを扱う大手取引所であるbitbankとbitFlyerはそれぞれ対応を発表しました。

  • bitbank:出金一時停止→再開、ブロック承認数を100回へ引き上げ
  • bitFlyer:ブロック承認数の一時的な引き上げ

bitbank

bitFlyer

今回の事件で注目すべき点

出典元:shutterstock

今回の事件で注目すべきなのは、「ブロックチェーンに対する攻撃」による被害であることです。

例えばコインチェックのネムハッキング事件では、膨大な被害額で話題になりましたが、ブロックチェーンの問題ではなく、あくまでも「取引所の問題」であったことが言えます。

しかし、今回の問題は「ブロックチェーン」自体に対して行われたものです。

ブロックチェーンが何故世界的に注目されているのか、どこが優れているのか、それは「改ざんが困難」という点です。

確かに、ブロックの中の取引記録が改ざんされた訳ではありませんが、実質ブロックチェーンの書き換えが行われたと言っても過言ではありません。

今後業界にどう影響するか

今回の攻撃は以前より手法として指摘されていたものの、大規模で実際に行われたのは初とされています。

PoWの特性上生じているリスクであるため、実際に出来ると知って模倣する人が続出すると、他のPoW通貨にも影響が出る可能性があります。

特に、承認間隔が短く、ハッシュパワーが低いPoW通貨です。

これらの通貨ホルダーがその危険を避けるために売りを入れ、価格が下がり、マイニング報酬が下がってマイナー離れが起きると、ハッシュパワーは更に低くなり、更に攻撃しやすくなるという悪循環に陥ります。

また、取引所はbitFlyerやbitbankのように承認回数を増やす措置を取ることが考えられ、こちらも承認間隔が短く、ハッシュパワーが低いPoWの全通貨に起きる可能性があります。

このように、今回の事件は被害額だけでは計ることができない事件です。

これはPoWだけで終わらせるべき話ではなく、PoSに存在するセキュリティリスクも含め、今後更にコミュニティでの議論を進める必要性があると言えます。

CoinPost App DL
注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
03/29 金曜日
05:50
Bybit、ソラナミームコイン「POPCAT」の永久先物提供
ソラナの仮想通貨ミームコインへの需要は未だ高い。代表的な犬系ミームコイン「WIF」は29日過去最高値を更新し、前日比で20%上昇している。
03/28 木曜日
17:35
分散型AIの3大プロジェクトが団結、新トークン「ASI」に統合へ
SingularityNET、Fetch.ai、Ocean Protocolが人工超知能連合を結成し、各プロジェクトの暗号資産(仮想通貨)を新トークンASIに統合する計画を発表。単一の分散型AIネットワークとしてリニューアルを目指す。AGIの父と呼ばれるベン・ゲーツェル博士が主導する。
15:58
ビットコインのレイヤー2「BEVM」ローンチ
BEVMがメインネットをローンチ。暗号資産(仮想通貨)ビットコインをガス通貨として利用するEVM互換のレイヤー2ネットワーク。シリーズAで数十億円を調達し、分散型ビットコインクロスチェーンカストディサービスを実現。
15:00
NEARプロトコル、マルチチェーン再ステーキング「LiNEAR」始動へ 
NEARプロトコルがChain Signaturesを導入、暗号資産(仮想通貨)の相互運用性を強化。ビットコインやイーサリアムなど複数のブロックチェーンをサポートする。オムニチェーン再ステーキングLiNEARが始動。
14:15
「イーサリアムが有価証券でもETF化は可能」ブラックロックCEO
仮想通貨イーサリアムに関しては、米国においてその法的ステータスが定かではない。CFTCは商品(コモディティ)と見做している一方、SECはETHに関係するスイスのイーサリアム財団を調査していることが先週報じられた。
10:45
Parallel Studios、VanEckやソラナベンチャーズから53億円調達
パラレルはイーサリアムメインネットおよびBaseチェーン上で稼働するものだが、先日発表された、コロニーのローンチ先がソラナのブロックチェーンであることや、今回ソラナベンチャーズが出資したことから、今後クロスチェーンでの展開が考えられる。
10:15
イーサリアム「BLOB」にデジタルアートを記録する方法 Ethscriptionsが導入
イーサリアムのチェーン上にデジタルアートなどを記録するEthscriptionsは「BlobScriptions」を発表。ブロブにデータを記録する方法となる。
08:10
21Shares、欧州でTONの上場取引型金融商品を提供
今月初めテレグラムは仮想通貨TONを正式に統合し広告収入をチャンネル所有者と共有し、TONブロックチェーン上でToncoinを使って報酬を支払うようになった。この動きが投資家からの需要を押し上げたようだ。
07:30
ブラックロック「BUILD」、一週間で240億円超の資金流入を記録
ブロックチェーン上でトークン化された現実世界資産(RWA)の運用を提供するOndo Financeからの10億円以上新たな資金もありファンドの規模は拡大中。
06:50
スクエニやソラナ財団、Elixir Gamesに21億円出資
Elixir Gamesは、ゲームローンチャー「Elixir Games Launcher」で、さまざまなWeb3ゲームを遊べるPCアプリを提供。また、Web3ゲームがNFTなどのゲーム内資産のセールを代行するローンチパッドで、ミントなどの機能を提供する予定だ。
05:50
SECに有利か、裁判官がコインベースの棄却申し立て認めず
その一方、裁判官は、コインベースが顧客が仮想通貨ウォレットアプリを利用できるようにしたときに、無登録ブローカーとして運営していたというSECの主張を取り下げることを決定した。
03/27 水曜日
17:25
Slash Payment、独自トークンのエアドロップ対象条件を発表
暗号資産(仮想通貨)決済サービスSlash PaaymentのエコシステムトークンSVLについて、エアドロップの参加条件が明かされた。分散型決済エコシステムの利益が、ステーキング参加者に還元。スナップショットまでに割り当てを増やすことも可能だ。
17:00
ビットコインなど仮想通貨投資の始め方|初心者が注意すべきリスクとおすすめ戦略
ビットコインなど暗号資産(仮想通貨)投資の初心者向けスタートガイドを解説。基本戦略や知識、特に注意すべきリスクやセキュリティ対策を紹介し、「何歳から始められる?」のか、取引所ごとの年齢制限一覧も提供。
16:04
KDDIのNFT市場「αU market」、アニモカブランズとの連携開始
KDDIが展開する「αU market」で、『PHANTOM GALAXIES』の限定版NFT販売を開始。アニモカブランズが支援するブロックチェーンゲームとの連携施策の第一弾。暗号資産(仮想通貨)ウォレット「αU wallet」を接続して購入できる。
14:23
21Shares「半減期前のビットコインは、過去の歴史とは異なるダイナミクスを経験している」
スイスを拠点にする資産運用企業21Sharesは、仮想通貨ビットコインの半減期が市場に及ぼす影響について分析したレポートを発表。ビットコインは現在、過去3回の半減期とは、「異なる市場ダイナミクスを経験している」と指摘した。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
イベント情報
一覧
2024/03/28 15:00 ~ 18:00
東京 東京日本橋タワーB2階
2024/04/06 ~ 2024/04/09
香港 香港コンベンション・アンド・エキシビション・センター3FG
2024/04/09 14:00 ~ 16:00
その他 オンライン
2024/04/13 ~ 2024/04/14
東京 東京都港区
重要指標
一覧
新着指標
一覧