CoinPostで今最も読まれています

gumi國光社長インタビュー【後編】:ブロックチェーンで新しい経済圏をゲームの中で作る

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

gumi國光社長に独占インタビュー後編
5月30日に仮想通貨・ブロックチェーン事業への参入と、子会社gumi venturesを通じて仮想通貨ファンド(gumi Cryptos匿名組合)を組成し、仮想通貨への投資を開始していることを併せて発表したgumiの國光宏尚社長にCoinPost独占インタビューを行いました。前編、後編の二部構成となっており、gumi創業時のインターネット業界の動きと現在のブロックチェーンの動きとの比較など今回も興味深い内容となっております。前編と併せてご覧下さい。

前編はこちら

gumi國光社長インタビュー【前編】:ブロックチェーンで新しい経済圏をゲームの中で作る
仮想通貨・ブロックチェーン事業への参入と、子会社gumi venturesを通じて仮想通貨ファンド(gumi Cryptos匿名組合)を組成し、仮想通貨への投資を開始していることを併せて発表したgumiの國光宏尚社長にCoinPost独占インタビューを行いました。

ブロックチェーンファンドの投資基準について

國光氏:

大きな投資基準は、トラストレスで、自律的で、Decentralizedなネットワーク、そしてデジタルデータがユニークで資産性を持つというブロックチェーンならではの、ブロックチェーンにしかできないことをやろうとしている会社かどうかという観点です。

そしてもう一つの観点は、チームの実行力です。ICOなどを行なっているブロックチェーンのプロジェクトは、今までのスタートアップのやり方と全く異なっています。一般的に、スタートアップは資金力もなければ、チームの規模も小さいため、大企業とまともに戦ったら負けてしまうので、できる限りステルスで、他社にばれないように事業やプロジェクトを進めるわけですが、ブロックチェーンのプロジェクトの場合、ICOするにあたって、ホワイトペーパーの作成と開示が必要になることから、事業内容から技術面の情報まで、全てがオープンになってしまう。

そうなると、一体どうやって大手と競争していくのでしょうか。僕はその答えが、チームの実行力だと考えています。そしてその観点から、人材が豊富でチーム力もしっかりした企業が多いシリコンバレーに注目しています。

ブロックチェーンネットワークをより強固なものにするために

國光氏:

ブロックチェーンの領域では、スケーラビリティの問題が生じうるのですが、これまでのブロックチェーン関連の商品・サービスは、送金決済等での利用が中心で、スケーラビリティが問題視されるほど使われてきませんでした。

そのため、技術的な課題は理論上の問題だけが議論されていました。しかし、クリプトキティのようなdApps(分散型アプリケーション)が初めてユースケースとして登場し、実際にトラフィックが多く集まって、問題が意識されるようになり、それを解決すべくプロトコルレイヤーの強固化が図られるようになりました。このように、実際のユースケースが生まれることで、課題と解決策が明らかになり、技術が改善されていきます。

懐かしい話をすると、僕らが会社を創業した2007年は面白い年で、この10年間のインターネットを引っ張ってきたスマホとソーシャルネットワーク、そしてAWSなどのクラウドが出てきたばかりの時期でした。

今でこそAWSなどのクラウドは当たり前のように使われていますが、最初の頃のAWSはサーバーが落ちやすく、大手企業は怖くて使えたものではありませんでした。なので、AWSの最初の主要な顧客は僕らゲーム業界でした。

ゲームは本当にトラフィックが多いので、実際AWSのサーバーが頻繁に落ちていました。その後、僕らゲーム業界とアマゾン側とで、連携を取りながら問題点を話し合う中で、AWSのスケーラビリティがどんどん改善されていき、5年、10年経った今では、皆が安心して使えるようになった、というのがクラウドサービスの成長の流れです。今はまさにその当時に似ているなと思います

つまり、先ほどお話したソーシャルゲームとAWSのときと同様に、ここからdAppsのゲームを含めて、1秒間に数千回、数万回のトラフィックが発生するユースケースがどんどん増えていき、プロトコルレイヤーが強化されていくものと思っています。

ブロックチェーンはいきなり通貨、金融という一番信頼性が求められる分野から入ってしまったため、失敗が許されるような実験ができませんでした。銀行の送金の場合、お金が届かなかったら非常に問題ですが、ゲームの場合はサーバーが落ちても一定程度は許容されます。

もちろん良いことではないですが(笑)。そのため、dAppsゲームなどを通じて、問題点が明るみになることは、その後の技術改善に繋がるため良いことだと考えます。こうしてブロックチェーンのプロトコルやネットワークがより強固なものになれば、不動産や医療だったり様々な分野で更に活用されるようになるのだと思います。

ブロックチェーンファンドで投資されているプロジェクトについて

出典:株式会社gumi 2018年4月期 通期及び第4四半期決算説明資料 添付資料

國光氏:

BASISがやろうとしているのは、Decentralized版のテザー(米ドルとペッグした暗号通貨)です。仮想通貨の価格ボラティリティが激しい点は、実利用していく上では大きなデメリットであるため、ステーブルコインの必要性はあると考えていますが、テザーはセントラライズされた通貨であるほか、ドルペッグなのにドルが本当にリザーブされているかどうかよくわからないといった問題があります。

このBASISはテザーのようなセントラライズされたステーブルコインではなく、自律的でDecentralizedな形でやろうとしている非常に興味深いプロジェクトです。

また、ROBOT CACHEはDecentralized版のSteam(ゲームのプラットフォーム)のプロジェクトです。現在のPCゲームのプラットフォームの問題点は約30%もの手数料が取られているほか、ゲームの二次流通ができないということです。

パッケージの時は、自分が購入したゲームを中古で売っていたじゃないですか。中古のリユースマーケットは割と大きかったのですが、デジタル時代になると売れないからリユースマーケットが消えてしまった。

ROBOT CACHEが面白いのは、限りなくDecentralizedされていて、手数料がごくわずかで、ユーザーが自分で購入したコンテンツを売り、二次流通させることができ、そこから一部パブリッシャーにお金が入る、というイメージです。

ブロックチェーンの大きな特徴としては、仲介者を極限まで無くせる事じゃないかなとも考えております。従来のインターネットはそもそも中間部分をできるだけ減らしてきましたが、現在のインターネットはアマゾンやアップル、グーグル、エアービーアンドビー、ウーバーみたいなプラットフォームの運営主体が凄く利益をあげています。

そういった部分にブロックチェーンやスマートコントラクトを用いることで、こうした中間のプラットフォームを無くすことができると考えています。ROBOT CACHEはまさにこの中間部分を無くそうという試みです。

今後の仮想通貨、ブロックチェーン業界の動きについて

撮影:CoinPost編集部

國光氏:

仮想通貨そのものに意味があるとは考えていなくて、新しいテクノロジーがどういった形で世の中を変えていくのか、ということが重要だと考えています。今までは、ブロックチェーンじゃないとできないこと、ブロックチェーンならではのことが中々見つかってきませんでした。

2000年くらいのインターネットバブルの時、インターネットは何でもできる、すぐに世の中を変えることができる、と期待が高まりすぎた結果、バブルになり、そのバブルは弾けました。しかし、そこでインターネットの未来に賭けて、開発などに取り組んできた人たちの中からグーグルやフェイスブックが生まれてきて、実際にインターネットは世の中を変え、米国ナスダックの株価はインターネットバブル時よりも今の方が高くなっています。

よく言われることですが、結局人はテクノロジーの未来を見る時に、短期的な部分では期待過剰になる一方で、長期的な可能性は過小評価しがちです。仮想通貨やブロックチェーンも世の中を変えると言われて、期待値だけが高まった結果、結局大きな構造変化は生み出していないといった批判をされていますが、ここから重要になってくるのは、ブロックチェーンのテクノロジーを信じて、ブロックチェーンがどう世の中を変えていくのかということに真剣に向き合うことです。

世界中に開発者は沢山いるので、今後ブロックチェーンでないとできないことが次々に発明されてくると思います。なので、ここからこの1、2年の動きの中では、投機的な価格の上がり下がりではなく、「どういうことがブロックチェーンじゃないとできないのか」、「ブロックチェーンはどういう価値提供を世の中にできるのか」という、より技術的な、ブロックチェーンの部分に向き合うプロジェクトが世の中に沢山生まれてくるのではないでしょうか。

様々なユースケースが生まれ、世の中の人たちが「これがブロックチェーンの本質だったのか」と気づき始めると、再びブロックチェーンの市場が伸びていくでしょう。なので、ここから1、2年は起業家やエンジニアたちが、空想ではなく、実装して本当に動かして、これで「世の中を変える」というのを証明していく期間になるのだろうなと考えています。

國光社長略歴

撮影:CoinPost編集部

経歴

2004年、カリフォルニアのサンタモニカカレッジを卒業後、株式会社アットムービーへ入社し、同年取締役に就任。映画やドラマのプロデュースを手掛ける一方で、様々なインターネット関係の新規事業を立ち上げる。

2007年、株式会社gumiを創業し、代表取締役に就任。

2012年、投資事業開始のため株式会社gumi venturesを設立し、取締役に就任。

2015年、VR/AR関連のスタートアップを支援する100%子会社Tokyo XR Startups 株式会社を設立し、代表取締役に就任。

2016年、主に北米のVR/AR企業への投資を目的としたVR FUND,L.P.のジェネラルパートナーとして運営に参画、また韓国にてSeoul XR Startups Co., Ltd.を設立し取締役に就任。

2017年、北欧地域のVR/AR関連スタートアップを支援するNordic XR Startups Oy.を設立し、代表取締役に就任。

2018年、株式会社gumi venturesを通じてgumi Cryptos匿名組合を組成し、仮想通貨・ブロックチェーン事業に参入。

注意事項

本記事は、投資勧誘を目的としたものではありません。実際に投資を行われる際には、本記事の情報に全面的に依拠して投資判断を下すことはお控えいただき、投資に関するご決定は皆さまご自身の判断で行われるようお願いいたします。

前編はこちら

gumi國光社長インタビュー【前編】:ブロックチェーンで新しい経済圏をゲームの中で作る
仮想通貨・ブロックチェーン事業への参入と、子会社gumi venturesを通じて仮想通貨ファンド(gumi Cryptos匿名組合)を組成し、仮想通貨への投資を開始していることを併せて発表したgumiの國光宏尚社長にCoinPost独占インタビューを行いました。
CoinPost App DL
注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
04/20 土曜日
18:00
TON、Telegramのユーザーに照準 トンコイン奨励金を提供
Telegramのウォレットがサポートするブロックチェーン「TON」の手数料削減と、1,100万TONのインセンティブプログラムを開始。特に500万単位の暗号資産(仮想通貨)TONがTelegramユーザーに報酬として付与される。
16:30
日銀、CBDC戦略の中間報告を公表 想定モデルと5つの課題
日本銀行が公表したCBDC中間整理報告書の主要論点や影響について解説。CBDCの導入方針やデジタル通貨の未来についての展望を探る。
12:30
コスモス基盤のInjective、Web3スマホ「JamboPhone」でDeFi機能提供
レイヤー1ブロックチェーンInjectiveは、Jamboテクノロジーと提携してWeb3スマホ「JamboPhone」でDeFi機能を提供すると発表した。
12:00
知らずに損しているかも?取引所選び 3つの注意点
ビットコインなどの投資初心者に大事な暗号資産(仮想通貨)取引所選びと、後悔しがちな代表的な失敗事例3つを解説。手数料、価格、取扱銘柄の違いを比較し、最適な仮想通貨取引所を見極めるポイント、賢い投資戦略と失敗回避のためのチェックリストも提供。
10:30
ソラナWeb3ゲーム「Nyan Heroes」、Epicのストアでトップ30入り
ブロックチェーンゲーム「Nyan Heroes」はEpic Games Storeで最もプレイされたゲームでトップ30以内に入った。今後NFT機能や独自の仮想通貨も導入する予定だ。
09:15
ビットコイン、4度目の半減期完了 報酬が3.125 BTCに
直近の米経済指標(3月の雇用統計やCPI等)が景気の堅調さを改めて示しているため、FRBが利下げを急ぐ必要がなくなりつつあるとの観測が高まってきており、仮想通貨や株のようなリスク資産をさらに押し上げる力は弱まってきたようだ。
08:25
BTCクジラが1900億円相当のビットコイン押し目買い、エヌビディアなど大幅安|金融短観
19日のアジア時間はイスラエルがイランに対して報復攻撃を実施したとのメディア報道が嫌気され日経平均指数や上海総合指数などは大きく下がったが、その後攻撃の規模が限定されており核施設に被害はなかったとの報道を受け米国の株式市場ではこのニュースへの反応は見られなかった。
06:45
Magic Eden、BaseチェーンのNFTに対応へ Open Editionミントも予定
Magic Edenは現在NFTマーケットプレイスのランキングで1位。ビットコイン半減期を背景に需要が高まるビットコインOrdinalsおよびビットコイン上の「Runes」への期待が出来高を押し上げている。
06:15
マイクロストラテジーのセイラー会長、自社株売却で570億円の利益
マイクロストラテジーの株価は仮想通貨ビットコインの3月の高騰に伴い3月27日に1,919ドルまで値上がりした。同株は年初来+71.37%のパフォーマンスを見せた。
04/19 金曜日
18:00
2024年注目の仮想通貨10選 セクター別の主要銘柄
暗号資産(仮想通貨)市場を代表する、注目銘柄10選。ビットコイン現物ETFが承認され半減期を迎える2024年。RWAやAI銘柄などセクター毎に投資活動が活発化。年初来の騰落率を含む各種データを網羅。ソラナのミームコインやエアドロップの効果は業界全体に影響している。
13:53
Yuga Labs、NFTゲームの知的財産権をゲームスタジオ「Faraway」に売却
著名NFTコレクション「Bored Ape Yacht Club」で知られるYuga Labsは、同社が開発するNFTゲーム「HV-MTL」と「Legends of the Mara」の知的財産権を、ゲームスタジオ「Faraway」に売却したと発表した。
11:54
中東情勢緊迫化で株やビットコインなど急落、リスク回避の動き強まる
中東情勢を巡りイスラエルのイランへの報復攻撃が伝わり、日経平均株価や仮想通貨ビットコインなどリスク性資産が暴落した。先行き懸念からリスク回避の動きが強まっている。
11:30
Ondo Finance、米国債建てトークンUSDYをコスモスで展開へ
資産トークン化企業Ondo Financeは、Noble Chainと提携して米国債建てトークンUSDYなどの資産をコスモス上で展開すると発表した。
11:00
テザー社、USDT超えて最先端技術提供へ 4つの新部門立ち上げ
USDTを発行するテザー社は事業部門を4つに再編する計画を発表した。ステーブルコインを超えた、より包括的なソリューションを提供していく計画だ。
10:10
「BTC半減期後の相場はマクロ経済が主導」10x Research分析
仮想通貨ビットコインの半減期後の相場を主導するのはマクロ経済であると10x ResearchのCEOが指摘。現状ではビットコインの今後価格が5万ドルまで下がる可能性もあると述べている。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
イベント情報
一覧
2024/04/20 ~ 2024/04/21
大阪 京セラドーム大阪
2024/04/25 ~ 2024/04/26
東京 国立新美術館
重要指標
一覧
新着指標
一覧