CoinPostで今最も読まれています

考察記事:「ジキルとハイド」中国の仮想通貨/ブロックチェーン施策に見る二面性

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

中国の仮想通貨/ブロックチェーン施策に見る二面性
中国当局は最近、ブロックチェーン重視の施策を打ち出し始めている。ここ数年、仮想通貨とブロックチェーンという「二兎を追う」状況だったことからすれば大きな変化である。仮想通貨は禁止、ブロックチェーンには門戸開放という一見相反する施策の背景を考察した。

はじめに

ここ数年の中国当局は、仮想通貨資産とブロックチェーンという「二兎を追う」方法を模索するような動きを見せていました。

それが今日では「ビットコインではなくブロックチェーンを」という方針がより顕著になっています。

今回、その背景と今後の展望を考察してみました。

中国当局が2018年8月に行った主要施策の振り返り

まず、中国当局が先月2018年8月に行った、仮想通貨関連の主要施策を振り返ってみます。

  • 中国共産党(CPC): ブロックチェーンの入門書を発行。技術解説のほか、主要機能/導入事例/課題に論点も紹介している
  • 中国人民銀行(PBoC): ブロックチェーン技術を元にした貿易金融プラットフォームの開発支援に乗り出した。銀行間で行われる国際決済を円滑にすると共に、中小企業が様々な形でそれらの取引に加われるようにする狙いがある
  • 最高人民法院(CSPC): 電子証跡の保管と認証を行うテクノロジーとしてブロックチェーンを認める趣旨を含む、新たな法規制を発表した
  • 中国銀行(BoC): フィンテックおよびブロックチェーンの技術開発に向けた積極的な投資計画を発表した
  • またこの間、中国当局は仮想通貨資産に関連するあらゆる活動に、公然と攻撃的な姿勢をとってきました。

    具体的には以下のようなものです。

  • 昨年2017年9月に行われたICOの全面禁止と、同月に出された国内仮想通貨交換所に対する業務停止命令。結果、この1年間で85のICOプロジェクトが終了、90の取引所が閉鎖を余儀なくされました。
  • 当局はさらに、100の国際取引所の禁止に踏み切っています。
  • さらにWebChatのような大手プラットフォームから暗号通貨関連アカウントをブロックする取り組みにも着手しました。
  • いまや、中国国内で仮想通貨取引を行うにはVPNを使うしかありません。

    ここで、次の2つの疑問が浮かびます。

  • なぜ中国当局はこうした「ジキルとハイド」のような極端な二面性のあるアプローチを取るのか。
  • そして、こうした動きは今後も続く可能性があるのか。
  • 2008年の米中対話の内容にヒントが?

    先に結論を記せば、残念ながら直接的な答えはまだ見つかっていません。

    しかし今から10年前、ブッシュ政権と中国共産党幹部の間で行われた米中関係に関する対話の内容が、現在の中国当局の考えを読み解くヒントになるかもしれません。

    その対話では、アフガニスタン侵攻やテロの脅威といった今に続く、国際問題が話し合われました。

    その際にブッシュ政権のある幹部は中国側に、

    「夜通し考えていることは何か」

    と尋ねました。

    これに対し中国高官は、

    「数字の8。どちらも国内の安定には不可欠な数字だ。GDP成長率であり、失業率の上限でもある。」

    と答えたと伝えられます。

    中国の為政者はその権力の安定性と正統性を何よりも重んじる――裏を返せばそれだけ危機を感じていることを思わず明らかにしたというわけです。

    同時に、それら安定性と正統性には経済発展が不可欠という認識も示しました。

    この意識はおそらく今でも変わっていないでしょう。

    もしそうだとするならば、中国当局はその権力基盤を脅かす可能性のあるテクノロジー(言うまでもなく暗号通貨も該当します)を、決して野放しにはしません。

    先端技術の「改変適用」は今回が初めての話ではない

    中国は過去にも先端技術を国内向けに「改変適用」したことがあります。

    それは「金盾(グレート・ファイアウォール)」です。

    アリババテンセントが時流に乗ったビジネスモデルを打ち立てて成功を収めた背景には、中国当局によるこの大掛かりな保護主義的技術施策がありました。

    Facebook等の米国資本の大企業を当局が締め出す効果は大きなものでした。

    結果、成功を収めたこれら国内企業は共産党幹部と蜜月の関係を築くことになります。

    当局のネット検閲にも協力的であると伝えられます。

    ブロックチェーン規制の現実味

    しかし、ブロックチェーンを当局がこれまでと同様のアプローチでうまく操れるかというと疑問が残ります。

    その最大の理由が、ブロックチェーン/P2Pが持つ「必然的に分散する性質」です。

    これまでにも当局は、仮想通貨取引や仮想通貨資産を禁止または規制するために、結局のところ「インターネット全体をブロックする」やり方を取らざるを得ませんでした。

    ブロックチェーンをどのようにして検出し、規制の網をかけるのか――そう考えれば、むしろ当局はビットコインを初めとする仮想通貨の広範な受容と、その延長にある経済発展を視野に入れるべきではないでしょうか。

    中国共産党公式の「ブロックチェーン入門書」

    出典: http://theory.people.com.cn/n1/2018/0813/c40531-30225582.html

    単純な開放政策でよいか

    その一方で、手放しで開放政策に向かえばいいかと言えば、それもまた疑問です。

    仮に仮想通貨が国際間貿易の基軸媒体になった場合、歴史的に中国の輸出産業を支えてきた為替コントロールが効力を失うおそれがあります。

    また、仮想通貨に特有の「揮発性(=消えてなくなるかもしれない性質)」があることは否定できません。

    中国には現在、約14億の人口があるとされます。そのうちのごく一部の人であっても保有する仮想通貨を喪失したら、社会的な影響は甚大です。

    開放政策と、システムの緊急停止のような備えを両睨みにする必要が出てきます。

    まとめに代えて

    中国は過去を重んじる国柄です。

    将来の施策もまた過去の影響を受けるのは間違いないでしょう。

    一方で、中国が仮想通貨分野での技術革新にとって、豊かな土壌であることも確かなことと思われます。

    先に触れたように、中国では、権力の正統と安定の裏側には必ず経済発展があります。

    仮想通貨やブロックチェーンのグローバルな発展を見て、現在の北京当局がどこまで柔軟な姿勢を示すことができるか、注目されます。

    参考記事: Making Sense Of China’s Grand Blockchain Strategy

    CoinPostの関連記事

    【速報】中国仮想通貨禁止政策に、国内最大手検索エンジン「バイドゥ」も協力|フォーラム内での仮想通貨に関連する投稿を禁止へ
    中国の最大手検索エンジン、バイドゥが仮想通貨、ブロックチェーンや電子資産などのフォーラムを一切禁止する事を発表した。中国では他にもWechatやAlibabaが仮想通貨に対する対応を厳しくしている傾向が見受けられる。
    【速報】中国規制当局、124の海外取引所へのアクセスをブロックへ|仮想通貨規制を大幅強化する方針
    本日、中国の金融規制当局の報道窓口とされている「上海証券タイムズ」は、中国の「国家フィンテックリスク対策局」が国内で利用可能となっている海外取引所を124社特定し、それらのIPアドレスを完全に封鎖する予定であると報道した。中国国内で密かに継続していた取引所へのアクセスを完全にブロックする意向だ。
    CoinPost App DL
    注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
    11:00
    テザー社、USDT超えて最先端技術提供へ 4つの新部門立ち上げ
    USDTを発行するテザー社は事業部門を4つに再編する計画を発表した。ステーブルコインを超えた、より包括的なソリューションを提供していく計画だ。
    10:10
    「BTC半減期後の相場はマクロ経済が主導」10x Research分析
    仮想通貨ビットコインの半減期後の相場を主導するのはマクロ経済であると10x ResearchのCEOが指摘。現状ではビットコインの今後価格が5万ドルまで下がる可能性もあると述べている。
    09:35
    Aptos開発企業、マイクロソフトやSKテレコムなどと提携
    アプトス・ラボが数社と共同で開発するAptos Ascendは、金融機関向けのデジタル資産管理プラットフォームだ。この製品はAzure OpenAI Serviceを使用する。
    07:55
    仮想通貨取引所バイナンス、ドバイで完全な事業ライセンス取得
    バイナンスは昨年同局からMVPライセンスを取得したが、同ライセンスには3段階のプロセスがあり、今回は最終段階をクリアしたことになった。
    07:20
    「半減期後にBTC価格は下落する可能性」JPモルガン
    半減期後に仮想通貨ビットコインの価格は下落する可能性があると、JPモルガンのアナリストは分析。17日のレポートで分析の根拠を説明している。
    06:30
    バイナンス、新たな仮想通貨ローンチパッド「メガドロップ」発表
    最初に選ばれたプロジェクトは仮想通貨ビットコインのステーキングプラットフォーム「BounceBit」で、168,000,000 BBトークンがMegadropを通して配布される予定だ。
    06:00
    コインベース、ソラナミームコイン「WIF」の永久先物提供へ
    米仮想通貨取引所大手コインベース(およびインターナショナル取引所)は19日、ソラナ基盤のミームコイン「WIF」のパーペチュアル先物取引を新たに提供する予定を発表した。
    04/18 木曜日
    17:05
    Flare Network、PFP NFT生成AIサービスの一部機能を公開
    Flare Network(フレアネットワーク)はデータに特化したブロックチェーンとしてAIを強化。Atrivと提携してコードなしでNFTを生成するプラットフォームを提供。このプラットフォームは、デジタルアートの取引と集大成を容易にし、安全なクロスチェーン取引をサポートする予定。
    17:00
    ビットコインの新トークン標準「Runes」が注目される理由
    仮想通貨 ビットコイン新たな代替トークン基準「Runes」にコミュニティの注目と期待が集まっている。ビットコイン版NFTの発行を可能にしたOrdinalsの開発者が、設計した新たなプロトコルで、ビットコインの半減期に合わせてローンチされる。
    16:25
    ソラナのDEX「Drift」、18万ユーザーに1億トークンのエアドロップ実施へ
    ソラナのDEXプロトコル、Driftが1億トークンのエアドロップを実施予定。取引量200億ドル超のプラットフォームで、ユーザー活動に基づくトークン配布が行われる。新たな暗号資産(仮想通貨)DRIFTの詳細を解説。
    15:00
    コンサル大手EY、イーサリアム基盤の契約管理サービスを立ち上げ
    世界四大会計事務所の一つ、アーンスト・アンド・ヤングは、ブロックチェーン技術を活用した企業契約管理ソリューション「EY OpsChain Contract Manager」の立ち上げを発表した。
    14:00
    「ビットコイン半減期は年単位で見れば価格に大きなインパクト」Bitwise分析
    Bitwiseは今後の価格についてビットコイン半減期の長期的な影響は過小評価されていると述べた。一方、ゴールドマン・サックスはマクロ経済情況も重要と分析している。
    12:00
    RWA分散型金融Centrifuge、23億円調達
    Centrifugeは新たな資金を利用し、Baseチェーン上に構築され、Coinbase Verificationと統合されたRWA向けの機関投資家グレードの融資市場の構築に取り組んでいく。
    10:50
    分散型決済Slash Payment、エアドロップ第一弾の詳細発表
    仮想通貨決済サービス「Slash Payments」は、独自トークンSVLエアドロップ第一弾の詳細を発表した.。SlashのNFT保有者などが対象となる。
    08:15
    Roninチェーンが初のWeb2ゲームIP導入、韓国の「Ragnarok」
    「Ragnarok: Monster World」は、Ragnarokが出すWeb3戦略ゲームで、タワーディフェンスとモンスター収集の要素を組み合わせたこのゲームだ。プレイヤーは「Ragmons」を集めたり、PvPモードで戦ったり、ギルドを作ったりできる。

    通貨データ

    グローバル情報
    一覧
    プロジェクト
    アナウンス
    上場/ペア
    イベント情報
    一覧
    2024/04/20 ~ 2024/04/21
    大阪 京セラドーム大阪
    2024/04/25 ~ 2024/04/26
    東京 国立新美術館
    重要指標
    一覧
    新着指標
    一覧