CoinPostで今最も読まれています

メルカリ版の仮想通貨?「メルコイン」の利用例を日本初公開|国内最大規模イーサリアム技術者会議「Hi-Con 2018」

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

メルカリ×ブロックチェーン
11月10日に開催された、国内最大規模のイーサリアム技術者会議「Hi-Con」にコインポスト編集部も参加した。 メルペイのブロックチェーン・エンジニアNakamura Keita氏は同カンファレンスにて、社内で試験的に運用されているブロックチェーン技術を導入した新たなメルカリMercariXの開発理由や利用法、課題など、その詳細をスピーチした。

メルカリ×ブロックチェーン

11月10日に開催された、国内最大級のイーサリアム技術者会議「Hi-Con」にコインポスト編集部も参加。今回は、「メルカリ×ブロックチェーン」に関するレポートをお届けする。

メルカリがブロックチェーンに取り組む理由

国内最大のフリマアプリサービスを運営する「メルカリ」は、ブロックチェーンの利点として、主に以下の3点が挙げている。

  • 改ざん困難性
  • 対検閲性
  • 非中央集権的
  • メルペイ分散型台帳開発部は、これら三つの特徴が今後どのように社会を変化し、それにメルカリがどう対応していくのか考察している。

    ブロックチェーンは、メルカリのようなフリマアプリなどのサービスにおいて、以下の二つの変化をもたらすと推測される。

    • プラットフォーム環境の変化
    • 信用の形の変化

    プラットフォーム環境の変化

    出典:Hi-Con公式資料

    • 1) 一つの大きなプラットフォームサービスを運営する企業に多くの人が集中
    • 2) 多くの情報が集まることにより利便性が向上
    • 3) より人が集まる
    • 4) より利便性が向上する

    といったように、中央集権に人が集まり、一つのプラットフォームに力が一極集中するといった特徴があった。

    しかし、ブロックチェーン技術が導入されると、このプラットフォームの中央集権的な管理は消え、個人間取引がより盛んになるプラットフォームが生まれてくると考えられる。

    新たな信用の形

    出典:Hi-Con公式資料

    また、開発チームは、新たな信用の形がブロックチェーンによってもたらされるだろうと考えている。

    例えばメルカリのような売買、交換をするサービスなどは、その運営会社を信用することでしか成立しない。

    つまり今までは、サービス成立には第三者機関の存在によって担保された信用が必要不可欠であった。

    しかし、ブロックチェーン技術には「改ざんが困難」という特徴と、「耐検閲性」つまり「ブロックチェーン上の取引内容の改ざんやネットワークへの参加制限を故意的にすることが困難」であるという特徴を備えるため、そもそも第三者機関を信頼する必要がなくなる。

    この第三者機関による信用の担保を必要としないことを「Trustless」とも表現する。

    よって将来、個人間のやりとりでも信頼を必要とせずにブロックチェーン上で行うことが可能になると思われる。

    以上のようなブロックチェーンの特徴を応用し、新たな信用の形を備えたP2Pマーケットプレイスのコンセプトモデルを、メルカリ社内で実験的に公開しているとのことだ。

    新たなメルカリ|MercariX

    ブロックチェーンがもたらすであろう「プラットフォーム環境の変化」と「信用の形の変化」をメルカリの中でどのように実現するのかといった課題がある中、このMercariXというアプリケーションが実験的に考案された。

    現在、MercariXは、大きく分けて2つのアプリケーションを実装している。

    出典:Hi-Con公式資料

    一つ目は、現在のメルカリと同じような、出品者と購入者が取引を行う機能を備えたアプリケーション。二つ目は、エスクローマーケット機能を備えたアプリケーションで、これは仲介をするためだけのアプリケーションだ。

    現在MercariXはテストとして、社内でリリース、運用されている。

    売買機能を備えたアプリケーション

    以下は、商品が並んでいるページ。

    この部分は、今のメルカリと違いはあまりない。

    出典:Hi-Con公式資料

    一番の特徴は、ユーザー同士でチャット型のコミュニケーションを取れること。

    出典:Hi-Con公式資料

    ブロックチェーンという新しい技術を導入することで、使い方のわからないユーザーが多く現れることが予想されるため、このチャット機能を使いユーザー同士が助け合うことで円滑にサービス利用できることを想定している。

    エスクローアプリケーション

    このエスクローアプリがP2P取引(個人間取引)及びブロックチェーン利用の肝となる機能だ。

    アプリの機能は、普段メルカリが担当している監視などの仲介を個人が行うというもの。

    基本的には上述したチャット、メッセージ機能を利用し仲介を進める。

    出典:Hi-Con公式資料

    メルカリ社内では試験的に、同社社員が独自通貨の「メルコイン」を使用して、様々な物品の売買を行っているという。

    現在のビジネススキーム

    出典:Hi-Con公式資料

    今のメルカリのビジネススキームはどのようになっているのだろうか。

    メルカリのサービスは、商品を売買するマーケットプレイスの役割と、それを仲介(エスクロー)する仲介業の役割の二つで構成されている。

    1)マーケットプレイス

    まず売り手が商品を出品し、それを欲しい買い手が購入する。

    一旦買い手はお金をメルカリに渡し、売り手は運送業者に物品を渡す。

    その次に買い手の元に商品が届き、レビューが完了すると、売り手にお金が支払われる。

    2)エスクロー

    物品の売買が行われると、その取引が不正なく終わるか監視する。

    責任の範囲としては、買い手がきっちり料金を支払っているのか、商品を受け取れたのか、運送業者がしっかりと荷物を届けたのか、売り手が正当に評価されているのか、などメルカリに関わる全ての行為に及ぶ。

    このように仲介に関して、現在メルカリは全ての責任を負い、それと引き換えに10%の手数料を受け取るという形になっている。

    以上が、現在のビジネススキームの形だ。

    MercariXのビジネススキーム

    MercariXでは、ビジネススキームはどのように変化しているのだろうか。

    出典:Hi-Con公式資料

    一番大きく変化している点は、インセンティブの部分だ。

    お金が個人などに対して、P2Pで動くようになるという特徴がある。

    また、現在のメルカリのサービスでは不正を監視するなど、取引の仲介を行っているが、その役割がメルカリから個人へと移行する。

    出典:Hi-Con公式資料

    買い手はMercariXのマーケットアプリで商品を閲覧し、マッチングを行い、売り手は商品を出品する。

    取引を行うと、買い手、売り手の両者は仲介をする個人のエスクローに仲介料を払う。

    運送に関してもブロックチェーンを利用し、商品が送られたかを確認するための機能の開発を計画している。

    つまり、MercariXは、全てがメルコインによってメルカリを通さず直接お金が送られ、取引が進められていくところに最大の特徴がある。

    ここで一番気になることは、どのようにマネタイズするのかという点だ。

    MercariXには仲介(エスクロー)を行う個人が存在するが、その部分はメルカリが変わらず担当できる部分で、メルカリができる保守の仕方を提供し続けることで利益を得られるとしている。

    また、利用者の全員がMercariXを使うのではなく、現行のMercariと共に併用していくことになると考えているとのこと。

    MercariXの課題

    出典:Hi-Con公式資料

    1. トランザクション量
    2. セキュリティ
    3. インセンティブ設計
    4. 法律

    1.トランザクション量

    捌けるトランザクション量には限りがあるため、MercariXのようなマーケットプレイスで、商品情報などのデータを交換する大きなトランザクションを発生させるようなプロトコルを運用するためには、どのくらいのスケールやスペックが必要かという問題がある。

    2.セキュリティ

    ブロックチェーンとセキュリティ問題は切っても切り離せない関係にあり、鍵の管理や、トークンを使った不正トランザクションをいかに検知するかという課題が残っている。

    3.インセンティブ設計

    このシステム(インセンティブ設計)で個人間で信頼を持って公平にやりとりができるのか、本当にその取引を仲介できるのか、サービスや人がうまく回るのかといった課題がある。また、そもそもユーザーはこのサービスを使いたいのかという点もよく考えなければならない。

    この点においては、重点を置いて調査を行なっている。

    4.法律

    仮想通貨やブロックチェーンには、遵守すべき課題がかなり多く、これらをクリアしていくために何をしなければならないのか明確にする必要がある。

    課題にどうアプローチするか

    1.トランザクション量

    出典:Hi-Con公式資料

    • Casper、TendermintなどのPoSの利用
    • Shardingの利用
    • side chainによる解決
    • オフチェーンだが、ステートチャネルの利用

    2.セキュリティ

    出典:Hi-Con公式資料

    • 秘密鍵の管理、サイン方法の研究
    • ウォレットへの入出金から不正トランザクションを検知できる仕組み
    • 楕円曲線暗号や量子暗号に関しての研究
    • Safetyや、Liveness、BFTのようなコンセンサスが本当に安全かどうかの検証

    3.インセンティブ設計

    出典:Hi-Con公式資料

    • 公平で使いたくなるよう設計するためのゲーム理論的なアプローチ(現在、社内でテスト中)
    • トークンエコノミーが広がっていくと予測されるため、サイドチェーンの利用
    • 仮想通貨のボラティリティが通貨としての利用に不向きなため、ステーブルコインなどの利用の検討

    4.法律

    出典:Hi-Con公式資料

    • アンチマネーロンダリングなどの不正阻止の体制の構築
    • 不正出金に対するインセンティブ設計

    おわりに

    この記事で使用した資料は、全て「Hi-Con 2018」のスピーチで利用されたスライドを引用したものです。

    スライドの一覧は、このリンクから閲覧することができます。

    また、現在メルペイ分散型台帳開発部は、分散システムエンジニアを募集しているそうです。

    興味のある方は、応募されてみてはいかがでしょうか。

    出典:Hi-Con公式資料

    CoinPostの関連記事

    安全なスマートコントラクト開発の手引きとなる「ソフトウェア開発ライフサイクル」とは|Hi-Con 2018注目内容取材
    11月10日に開催された大規模イーサリアム技術者会議「Hi-Con」を取材。「テストツール「Mythril」とセキュリティ開発ライフサイクル」と題したConsenSys Diligenceの共同創始者Tom Lindeman氏によるスピーチの模様をお届けします。
    メルカリが新アプリ『Mercari X』を披露|ブロックチェーン技術に注力
    大手フリマアプリのメルカリは4日、「Mercari Tech Conf 2018」を開催し、今まで謎に包まれていた同社の金融事業子会社『メルペイ』とテスト中の新アプリ『Mercari X』を披露した。
    CoinPost App DL
    注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
    03/28 木曜日
    17:35
    分散型AIの3大プロジェクトが団結、新トークン「ASI」に統合へ
    SingularityNET、Fetch.ai、Ocean Protocolが人工超知能連合を結成し、各プロジェクトの暗号資産(仮想通貨)を新トークンASIに統合する計画を発表。単一の分散型AIネットワークとしてリニューアルを目指す。AGIの父と呼ばれるベン・ゲーツェル博士が主導する。
    15:58
    ビットコインのレイヤー2「BEVM」ローンチ
    BEVMがメインネットをローンチ。暗号資産(仮想通貨)ビットコインをガス通貨として利用するEVM互換のレイヤー2ネットワーク。シリーズAで数十億円を調達し、分散型ビットコインクロスチェーンカストディサービスを実現。
    15:00
    NEARプロトコル、マルチチェーン再ステーキング「LiNEAR」始動へ 
    NEARプロトコルがChain Signaturesを導入、暗号資産(仮想通貨)の相互運用性を強化。ビットコインやイーサリアムなど複数のブロックチェーンをサポートする。オムニチェーン再ステーキングLiNEARが始動。
    14:15
    「イーサリアムが有価証券でもETF化は可能」ブラックロックCEO
    仮想通貨イーサリアムに関しては、米国においてその法的ステータスが定かではない。CFTCは商品(コモディティ)と見做している一方、SECはETHに関係するスイスのイーサリアム財団を調査していることが先週報じられた。
    10:45
    Parallel Studios、VanEckやソラナベンチャーズから53億円調達
    パラレルはイーサリアムメインネットおよびBaseチェーン上で稼働するものだが、先日発表された、コロニーのローンチ先がソラナのブロックチェーンであることや、今回ソラナベンチャーズが出資したことから、今後クロスチェーンでの展開が考えられる。
    10:15
    イーサリアム「BLOB」にデジタルアートを記録する方法 Ethscriptionsが導入
    イーサリアムのチェーン上にデジタルアートなどを記録するEthscriptionsは「BlobScriptions」を発表。ブロブにデータを記録する方法となる。
    08:10
    21Shares、欧州でTONの上場取引型金融商品を提供
    今月初めテレグラムは仮想通貨TONを正式に統合し広告収入をチャンネル所有者と共有し、TONブロックチェーン上でToncoinを使って報酬を支払うようになった。この動きが投資家からの需要を押し上げたようだ。
    07:30
    ブラックロック「BUILD」、一週間で240億円超の資金流入を記録
    ブロックチェーン上でトークン化された現実世界資産(RWA)の運用を提供するOndo Financeからの10億円以上新たな資金もありファンドの規模は拡大中。
    06:50
    スクエニやソラナ財団、Elixir Gamesに21億円出資
    Elixir Gamesは、ゲームローンチャー「Elixir Games Launcher」で、さまざまなWeb3ゲームを遊べるPCアプリを提供。また、Web3ゲームがNFTなどのゲーム内資産のセールを代行するローンチパッドで、ミントなどの機能を提供する予定だ。
    05:50
    SECに有利か、裁判官がコインベースの棄却申し立て認めず
    その一方、裁判官は、コインベースが顧客が仮想通貨ウォレットアプリを利用できるようにしたときに、無登録ブローカーとして運営していたというSECの主張を取り下げることを決定した。
    03/27 水曜日
    17:25
    Slash Payment、独自トークンのエアドロップ対象条件を発表
    暗号資産(仮想通貨)決済サービスSlash PaaymentのエコシステムトークンSVLについて、エアドロップの参加条件が明かされた。分散型決済エコシステムの利益が、ステーキング参加者に還元。スナップショットまでに割り当てを増やすことも可能だ。
    17:00
    ビットコインなど仮想通貨投資の始め方|初心者が注意すべきリスクとおすすめ戦略
    ビットコインなど暗号資産(仮想通貨)投資の初心者向けスタートガイドを解説。基本戦略や知識、特に注意すべきリスクやセキュリティ対策を紹介し、「何歳から始められる?」のか、取引所ごとの年齢制限一覧も提供。
    16:04
    KDDIのNFT市場「αU market」、アニモカブランズとの連携開始
    KDDIが展開する「αU market」で、『PHANTOM GALAXIES』の限定版NFT販売を開始。アニモカブランズが支援するブロックチェーンゲームとの連携施策の第一弾。暗号資産(仮想通貨)ウォレット「αU wallet」を接続して購入できる。
    14:23
    21Shares「半減期前のビットコインは、過去の歴史とは異なるダイナミクスを経験している」
    スイスを拠点にする資産運用企業21Sharesは、仮想通貨ビットコインの半減期が市場に及ぼす影響について分析したレポートを発表。ビットコインは現在、過去3回の半減期とは、「異なる市場ダイナミクスを経験している」と指摘した。
    12:23
    ビットコイン7万ドル台で堅調推移、コインベース・プレミアムは強気から中立に
    暗号資産(仮想通貨)市場では、半減期前のビットコインは過去最高値に迫る7万ドル台まで反発して堅調推移を辿る。米国の機関投資家動向を示すコインベース・プレミアムは強気から中立に転じた。

    通貨データ

    グローバル情報
    一覧
    プロジェクト
    アナウンス
    上場/ペア
    イベント情報
    一覧
    2024/03/28 15:00 ~ 18:00
    東京 東京日本橋タワーB2階
    2024/04/06 ~ 2024/04/09
    香港 香港コンベンション・アンド・エキシビション・センター3FG
    2024/04/09 14:00 ~ 16:00
    その他 オンライン
    2024/04/13 ~ 2024/04/14
    東京 東京都港区
    重要指標
    一覧
    新着指標
    一覧