資金調達からファン作りまで!アニメ業界におけるFintech活用の事例と可能性|Fintertechコラム

こんにちは。Fintertech ストラテジーグループの大島です。 初めての投稿ですので、簡単に自己紹介を。

大島 卓也 (Takuya Oshima) Fintertech株式会社ストラテジーグループ

2011年に大和総研ビジネス・イノベーションに入社。自治体のスマートシティ推進計画策定支援から、大手総合通信事業者の基幹系システム開発・保守まで、システムに関する業務を幅広く経験。2016年、社内の新規ビジネス企画を発端としてブロックチェーンに興味を持ち、関連特許を2件出願(2017年、2018年に1件ずつ登録済み)。2018年よりFintertechに所属。現在は新規事業の企画、立上げに携わる。

好きなアニメは機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-、攻殻機動隊シリーズ、涼宮ハルヒの消失。

このような経歴ですので金融ど真ん中の出身ではないですが、ブロックチェーンが新しい社会・コミュニティの有り方を作っていくのではないかと考えています。ということで早速ではありますが、アニメ業界におけるブロックチェーンを含むFintech活用の可能性について書いていこうと思います。

1.アニメ業界の現状と課題

市場規模という観点からすれば、アニメ業界は日本において数少ない成長産業と言えるでしょう。下表の通り2013年から特に海外での成長が著しく、今では2兆円を越える市場となっています。

表:アニメ産業市場の推移 2002~2017年
(参照:https://aja.gr.jp/jigyou/chousa/sangyo_toukei)

しかし課題も表面化しつつあります。下表はアニメパッケージの売上推移ですが、2005年をピークに年々下降の傾向にあります。アニメ市場全体で言えば代わりに配信ビジネスが伸びている状況ですが、これは現在のアニメの製作体制に大きく響く話でもあります。

表:アニメパッケージビジネス売上推移 2000~2017
(参照:https://aja.gr.jp/jigyou/chousa/sangyo_toukei)

2.製作委員会方式について

2019年現在、アニメの多くは製作委員会方式により製作されています。製作委員会方式そのものの説明はWikipedia先生が分かりやすく説明してくれていますので詳細は割愛しますが、この方式が導入され始めた1990年代後半から2000年代前半まではパッケージの売り上げが好調であったことから、非常に有効な方式であったと言えるでしょう。

しかしながら、この製作委員会方式はパッケージの売上がメインの収益として計算されているため、パッケージの売上の下降は投資回収能力の低下とほぼ同義となります。上表の通り、2005年を境にパッケージの売上は下降傾向にあり、投資回収できている作品の数は減少していると考えられます。さらに、投資回収見込みが低下すればその分アニメの制作費を上げることは難しく、そのしわ寄せはアニメ制作スタジオにも及びます。制作スタジオの収益源は制作費が大半を占めますので、制作費の低下は制作スタジオの収益性の低下に直結します。

全体としては成長産業であるアニメ業界ではありますが、視聴スタイルの変化や配信ビジネスの台頭など市場環境が大きく変化しているところでもありますので、「製作委員会方式に代わるビジネスモデル」「アニメ制作スタジオの収益性の向上」は大きな課題と言えるでしょう。

3.アニメ業界におけるFintech活用の現状

上述の通り変革が求められているアニメ業界においては、近年Fintechを活用して資金調達を行う事例が増えてきています。それぞれ紹介していきましょう。

投資型クラウドファンディングの活用

当記事においては金銭がリターンとして返ってくるタイプのクラウドファンディングを『投資型』として一括りにしていますが、Sony Bank GATEというサービスにて2作品事例が確認されています。アニメ製作は当たりはずれが大きいという性質上、投資型クラウドファンディングにおける事例はまだ少ないですが、2作品とも目標金額を達成しており、徐々に増えてくると考えられます。

『ひもてはうす』の製作を応援する投資型クラウドファンディング。『ひもてはうす』は株式会社バウンスィが企画および製作を手掛ける新作オリジナルアニメです。本作品は「gdgd妖精s」や「てさぐれ!部活もの」シリーズを手掛けた石ダテコー太郎氏が監督を務め、1話完結のショートコメディアニメとして2018年10月よりTOKYO M...
オリジナルアニメーション作品「サンタ・カンパニー」の制作を応援する投資型クラウドファンディング。本作品は株式会社KENJI STUDIOが手掛けるオリジナルアニメです。従来のアニメーション製作の主流である製作委員会方式とは異なる新たなスキームを確立するとともに教育業界、アニメーション業界の活性化に貢献します。

購入型クラウドファンディングの活用

アニメ業界において最も事例が多いのがこの形式ではないでしょうか。代表的なサービスとしてはMakuakeCAMPFIREReadyforGREEN FUNDING などが挙げられます。購入型クラウドファンディングはリターンが金銭ではなくモノやサービスであるため、商業的な成功をおさめなくてもリターンの提供は可能であり、資金調達側からすれば最も使いやすい形式と考えられます。また、買う側としても1口1,000円程度から購入可能であるため、気軽に出せる価格帯であることも事例が多い理由と言えるでしょう。

購入型クラウドファンディングにはアニメ以外にも様々なジャンルの案件がありますが、弊社独自の集計ではアニメ制作にかかわる案件は他ジャンルに比べ1案件の平均単価が高い傾向にあり、ファン層のマインドとビジネススキームの相性が良いという点から、今後さらに活用が増えてくるであろう方式と考えられます。

※コメント欄における盛り上がり方がアニメとそれ以外では段違いだったりします

【追加情報】2016年11月22日追記  第2弾プロジェクトのご案内 皆さま 皆さまにご支援をいただいた映画『この世界の片隅に』がついに完成し、2016年11月12日より、日本全国の劇場で公開の運びとなりました。熱いご支援、誠にありがとうございました。  私たちはそんな本作を、日本の皆様だけでなく世界...

投げ銭サービスの活用

いわゆる『投げ銭サービス』の定義は現状定まっていないので、ここではクリエイターから直接作品を購入することのできるサービスとして事例を紹介していきたいと思います。

まず紹介したいのはBlockPunkというサービスです。こちらは単にクリエイターの制作した動画やイラストを買うことができるだけでなく、購入したデジタルコンテンツを交換/再販することで収入を得られるサービスになっています。また、交換や再販により得られた収益の一部はクリエイターに還元される仕組みとなっているのも特徴と言えます。 BlockPunkはブロックチェーンを活用したサービスでもあり、購入した作品がオリジナルであることを、ブロックチェーン上で発行されたデジタル証明書にて担保する仕組みになっています。

既にMAPPAARCHといった商業のプレイヤーも参加しており、制作スタジオの収入源の多様化に寄与し得るサービスとも考えられます。

BlockPunkを使えば、クリエイターはデジタル上で動画とイラストの限定版を販売できます。購入者はサービス上でコンテンツを再販することができ、再販時も利益の一部がクリエイターへ還元されます。ファンは好きなクリエイターから作品を購入し、収集、再販することができます。

続いてAniqueというサービス。こちらはアニメや漫画において制作されたアートワークをデジタルコンテンツとして売買することができるサービスです。BlockPunk同様こちらもブロックチェーン上でデジタルコンテンツの保有権が管理されており、所有権が売買された際にはその一部がクリエイターに還元される仕組みになっています。

売買可能なアートワークとして、進撃の巨人というビッグネームの商業作品のコンテンツが出品されたことは大きな話題となりました。これも制作スタジオの収入源の多様化に寄与し得るサービスと捉えています。

アニメ、マンガ、ゲームなどの優れたアートワークを世界にひとつのコレクションとして保有、売買するサービスです。

ICO(イニシャルコインオファリング)の活用

企業や団体が独自の仮想通貨トークンを発行して資金調達を行うことをICOといいます。新規株式発行の仮想通貨版と言えば分かりやすいでしょうか。

本スキームは日本ではあまり事例がありませんが、アニメでは唯一山本寛監督の『薄暮』というアニメーション映画の製作資金としてICOが実施されました。薄暮のプロジェクトでは新しい制作方式の実現を目指し、下記3つのトークンが発行されました。

①TWC(Twilight Coin:トワイライトコイン):ICOにて発行するトークンであり、プラットフォームにTWCをデポジットすることで、DIT、およびSUTを発行することができる。本プラットフォームに参加するクリエイターやアニメスタジオが増え、デポジット量が増えていくほどTWCの市場における流通量が減少し、価値が向上していく。

②DIT(Digital Item Token:デジタルアイテムトークン):サインや写真、原画、音声データ、鑑賞券などの所有権をブロックチェーン上に記録したものであり、クラウドファンディングの支援金に対するお礼として支援者に付与される。将来的には、DITをDEX(分散型取引所)にて売買可能にすることも予定しており、購入したDITを自由に取引することができるようになる。

③SUT(Second Usage Token:二次利用権):ブロックチェーン上に記録された、作品を流通させるための二次利用権を表章するトークン。二次利用権の許諾内容およびライセンシーが記録され、誰がどのSUTを持っているのかがブロックチェーン上でオープンになる。SUTを所有せずに二次利用している場合は、プラットフォームで検出することができる。また、同人誌制作のようなファン同士で楽しむための二次創作についても、積極的にSUTを付与し、クリエイターの了解のもと二次創作者が制作している仕組みを普及させる。

(参照:)https://twilight-anime.jp/news/ico03/

※2018/12/15にプリセールが行われましたが、クラウドセールは開始されていない状況でもあり、その後の詳細は不明です。

他の事例として外せないのはオタクコインです。こちらは現状コインが発行されているだけではありますが、先日社団法人化されたことや、運営の中心的な企業であるTokyo Otaku Modeがブロックチェーンを活用した翻訳サービスの実証実験をスタートさせるなど積極的な活動を展開しており、今後さらに普及していくことが予想されます。理事に出版社やアニメ制作会社のメンバーが含まれている点からも、アニメ製作資金の調達に使われる未来も近いのではと考えられます。

※これは個人的な感想ではありますが、直接スタジオに応援を送るとコインがもらえるというサービス設計は、ファン心理が非常に満たされるものであると感じています。

世界中のアニメ/漫画/ゲームファン向けコミュニティ通貨「オタクコイン」。アプリをインストールしてオタクコインをもらおう

※ICOについては、2019年5月31日成立の資金決済法および金融商品取引法(金商法)の法改正により、今後金融商品取引法の対象になる可能性があります。

4.まとめ

今回の記事ではアニメ業界におけるFintech活用事例について紹介してきました。業界における課題を背景に、新しい資金調達方法としてFintechの活用事例が増えてきているということが分かって頂けたかと思います。

そして、ファン作りという観点においてもFintechの活用は有用であるとも筆者は考えます。クラウドファンディング、投げ銭、ICOのいずれにも共通して言えることは資金調達側と出資側の距離を縮めることであり、これはアニメに置き換えれば作品とファンの距離を縮めることにつながると言えるのではないでしょうか。

テレビの向こう側でしかなかったアニメの世界に少しでも係わることができたという体験・機会を与えることは、ユーザーにとって非常に嬉しいことであるはずで、Fintechの活用は単なる資金調達にとどまらず、アニメファンの視聴体験のアップデートにつながる話であり、製作側から見れば、より深いファンの獲得が可能になる話でもあると考えています。

Fintechの活用は単なる資金調達だけではなく、むしろそれこそが一番の効果・魅力ではないでしょうか。

日本のアニメーション業界が今後も継続して発展を続け、世界中のアニメファンがそれを楽しみ続けることの出来る世界をFintechというものが支える未来を願いながら、今後もアニメ業界におけるFintech活用について注目していきたいと思います。

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