アジアから圧倒的な流動性を、仮想通貨交換業における米国進出の重要性

現在、Liquidは2020年1月の米国でのサービス拡大を目指した動きに尽力しています。米国はグローバルな金融サービス展開に欠かせない国だからです。

なぜ米国が重要であるのか、そして仮想通貨エコシステムの拡大にLiquidはどう寄与していくのか。今回は主にそれらをテーマにお話しを進めていきます。

前回の記事紹介
前回記事では、分散された金融システムは必ずしも必要なのかという視点から、今後の金融システムの展望、また仮想通貨の将来についてお話ししました。 仮想通貨業界、今後発展していくのは分散型と中央集権のハイブリットモデル|Liquidコラム(1)

金融における米国の存在感

仮想通貨の最大の魅力は「ボーダレス」であるところです。一方で、世界には170ほどの法定通貨が存在しますが、主に使われているのはUSD、ユーロ、円とこの3つくらいに留まり、それも結局は、米国と日本とECB(欧州中央銀行)がコントロールしています。

さて、もともとお金は「金(ゴールド)」が扱われていましたが、21世紀のデジタルな世界になり国の中央銀行が紙幣を刷るようになりました。一方どこにも囚われず、発行体もなく国が潰れようが問題ないというのがビットコインであったりします。

そのようなビットコインなど仮想通貨の最大の魅力である「ボーダレス」ですが、そのニーズは国によって異なります。一時期は中国中心で価格が高騰したこともありましたが、後に中国政府によってビットコインは締め出されることとなりました。その後は日本でも同様の盛り上がりを見せましたが、流出問題などもあり相場は急落。

そのような流れの中で、復活をしてきているのが米国です。4月以降の上昇相場はドルベースであることがその証左でしょう。

そうなると、交換事業者としてやる以上、このような国にまたがってサービスを提供していくことはとても重要になってきます。また米国は常に金融の中心であり、かつICOやSTOに関してはSEC(米証券取引委員会)の動向に世界の注目が集まります

FATFが行うマネーロンダリング規制に関連した動きにおいても、米国の意向は強い影響力をもちます。そのような流れをみると、米国に拠点がないとブランド的にも、将来の成長を考えたときにも置き去りになってしまうでしょう。

これまでにない流動性を

日本のベンチャーとして海外で頑張っている企業は何社かありますが、金融のベンチャーでは皆無です。しかし仮想通貨に関しては、アジアが盛り上がっているという部分もあり、流動性を提供できるという点で我々はとてもユニークだと思っています。

日本と海外のお客様もいて、今回米国進出をしてライセンスを取ることによって、米国のお客様も入る。これまで以上の流動性を提供できることになります。

それがビットコインやイーサリアムと、よりトークンエコノミーが広がっていくことにより、良い循環が生まれると思っているので、もともと米国はマストな選択肢です。また我々のマーケットエントリーの形としては、パートナー(バーチャルカレンシーパートナーズ)と一緒にやっていくことになります。

ただ、各国の規制を遵守しながら、グローバルに金融サービスを展開していくのは非常に難しいといえます。

例えば、米国で有名なコインベースは日本で交換業者の登録が取れていません。またオンライン証券で米国No.1のイー・トレードも日本で事業を展開できておらず、同国で一番大きい銀行であるJPモルガン・チェースもこちらにはないのが現状です。

法令を遵守しながらグローバルに進出していくこと。それは金融サービスにはまだないので、我々としてしっかりやっていきたいところであります。

米国に進出する上での優位性

かたよりがなくグローバルにお客様を持つ意義というのはとても重要です。そして、その根本的な部分にあるのは流動性だと思っています。

今後はウォレットやペイメント業者、交換事業者など色々な会社がさらに出てくるでしょう。そしてATMやコンビニでも仮想通貨を使えるようになる時代がくると私は思っているのですが、事業者が販売所型の場合、それらは大量の仮想通貨を保有することになります。

そうなるとどこかで通貨を交換しなければならなく、事業者が安心して取引・交換ができる場所が必要となってきます。そのような場所が我々の目指すところの1つです。

一般のユーザーももちろん重要ですが、仮想通貨のエコシステムが大きくなるには色々なプレイヤーが入ってくる必要があって、彼らに流動性を提供していくということを含めて「Liquid」とさせていただいています。またそのためには米国にある程度のプレゼンスがあることが重要になってくるでしょう。

我々には、アジアから圧倒的な流動性を持ってこれるという優位性がある。そういった点からも、米国に進出していく中で上手くやっていけると思っています。

規制はバランスが重要

この業界が大きくなっていくには、法令順守は絶対に必要です。オフショアで本人確認もしない、メールアドレスだけで口座を開設できてしまう業者もありますが、それだとマネーロンダリングの温床になってしまう可能性もあります。

しかしそのようなことが容認される状況は、この業界がメインストリームに向かうにつれてなくなっていくでしょう。ただし過度な規制は、法令順守をしていく上でのコストも増えてしまい、再びアンダーグラウンドに戻っていくといった、本来意図していたところと真逆の状態を生み出してしまう可能性もあります

そうならないためにも、イノベーションと規制とのバランス、それがどこが一番良いのかといった部分が重要になってきます。そこはまだ、どこも模索中であって、その良いバランスを探せた国が市場を大きくしていけるでしょう。

その点、日本はFXが好きな土壌もあって、仮想通貨にも熱狂していたことから、うまくバランスをとっていければチャンスがあると思っています。

栢森 加里矢 リキッドグループ株式会社共同創業者・CEO

ブロックチェーンテクノロジーを基盤とした次世代の金融サービスを提供するグローバルフィ ンテック企業のリキッドグループ共同創業者・CEO。

創業以前はソフトバンクグループのSVPとしてアジア事業を統括。また、Globespan Capital Partnersのシニア・ディレクターとして日本及びアジアの投資、米国投資先のアジア事業開発を統括。三菱商事株式会社でナチュラルローソン創業、英ブーツ社とのJVを立上げた。東京大学法学部卒業、ハーバード大学MBA取得。

栢森 加里矢 Twitter( @MikeKayamoriJP)

仮想通貨交換業のグローバル展開に必要なもの、そして業界の展望とは|Liquidコラム(3)

次回記事では、グローバルな金融サービス展開に必要な要素や規制のバランス、取引所の存在意義などをテーマにお話ししていきます。

コメントしてBTCを貰おう