エンジニアが語る仮想通貨Stellar(ステラ)、トークンエコノミーにおける強みとコインチェック上場の背景

トークンエコノミーにおけるStellarを利用する利点など、今回のコラムでは、トークンエコノミーの視点からStellarの強みを解説していきます。

また、Stellar独自の強固なセキュリティの仕組みなども、分かりやすくお伝えします。

トークンエコノミーでのStellarの強み

現在のEUでは、Stellarを使用している商品がかなり多くあります。日本ではあまり聞いたことがない、馴染みがない企業が多いのですが、VISAと契約しているフランスの送金大手のTEMPO(テンポ)では、Stellarを入金するとVISAで買い物が出来たり、他のEU企業では海外送金サービスを作っていたり、ドイツ銀行もグループ企業を含めて使用を開始しています。

このように、送金分野では利用を順調に拡大していますが、トークンエコノミーで採用すると考えたとき、様々なカウンターパートが出てきます。そして、トークンエコノミーの中での利用で重要となってくるのが、速さと手数料の安さです

そもそも、トークンエコノミー中で簡単に何が行われるかというと、バウンティや、そのバウンティに対して報酬を支払う、そしてその報酬でまた別の商品を買うといった行為が日々繰り返されます。そして、この循環行為が、利用ユーザー数に比例してトランザクション数を増加させます。

現在のトランザクションをみると、そのほとんどは、取引上の送金であったり、あくまで投資のための利用が多いのではないでしょうか。そして、トークンエコノミーを構想する上で課題となると考えているのが、一度取引所に入金すれば売却するまで動かないところです。

売却するタイミングは人によって様々ですが、それが当日かもしれないし、1か月に一度あるかないかなど、トークンエコノミーで利用されるようになった際にはかなりのトランザクション数が発生するはずです。さらに信用情報やコントラクトを持たせた際に、所有権の移動などをより簡単にしないといけないなどの問題も発生します。

例えば、送金が遅いとなると、今後IoTを絡めたホテル事業が普及してスマートキー採用となった場合、それをビットコインで実行しようとして家の前で開錠されるまで10分待つとかなってしまい、それはナンセンスです。さらに、送金にも手数料がかかっているので、その手数料をどうするかという問題もあります。

手数料はユーザーに負担してもらうというのが、一番簡単な解決方法だと思いますが、それでユーザーの残高も減っていく仕組みを作ってしまうと、流行っていくのは難しいでしょう。使えば使うほど自分のお金が減っていくというサービスでは、ユーザーは利用したがりません。

ただ鍵が欲しいだけなのに、毎回高い手数料がかかる上、さらに遅いとなると問題です。その点Stellarだと上手く対処することが出来ます。Stellarの場合、10円で1万回くらいのトランザクション送ることが出来るくらい手数料が安く固定であるため、ユーザーではなく事業者がそこを負担するというのも無理なく可能でしょう。

コスト面でみても、あるプロジェクトで試算してみたとき、ユーザー数が1万人到達で約5~600円程度の費用でしたので、企業側の負担がほとんどなく、トークンエコノミーとすごく相性が良いといえます。

また、ユーザー数が急激に増えても、事業者としての計画もかなり立ちやすいです。例えば、トランザクション手数料が完全無料の取引所「StellarX」というものがあり、手数料が安いためその費用を事業者側が負担して運営している例もあります。

トークンエコノミーの面で見ると、かなりのトランザクション数が発生します。そもそも、エコノミー(経済圏)というくらいなので、少数でやっているのはエコノミーとは呼べないでしょう。

エコノミーの規模が、100人から1万人と急激に人数が増えた時もStellarのトランザクションであれば、コストはそこまで上がりません。AWSとかクラウドベンダーへ払っているインフラコストのほんの一部と思えるので、toB向けのビジネス事業者がビジネスをやりやすいです。

私は、そこが今後トークンエコノミーでStellarが使われていくと、一番力を発揮する部分だと思っています。

Coincheck上場の背景

Stellarの直近の話題だと、Coincheckへの上場があるでしょう。これまで挙げた複数の理由が、今の日本市場に持ってきた理由の1つとなったかは不明です。

やはり安さと速さ、また何といっても事前にコストが把握出来るので、事業プランが立てやすいと思います。コストがよめないインフラは使うことは難しいのではないでしょうか。

尚且つ今後、ZkVMを使ったペイメントチャンネルができれば、一人ひとりのやりとりになるのですが、手数料はゼロで何度もやりとりが出来るようになります。それは、トークンエコノミー内でStellarの優位性は上げる1つの要因となるでしょう。

コインチェックでのStellarの上場は、Stellarのネットワークが日本中で広がる窓口という意味ではすごく良い事例ではないかと考えてます

Stellarのセキュリティの高さ

Stellarのセキュリティの高さについてお伝えしていないことがあるので、ここで重要なことを一つお話します。Stellarは、発行者と配布者を別に分けることが推奨されています。

発行者は新たにトークンを発行したり、発行したトークンに関して色々な制約をかせれる、いうなら絶大的な神のような力を持っています。1アドレス毎にこのトークンを誰に送るかというのも決定可能です。

例えば、Aには送るけどBには送らないといったことや、送った先のアドレスが、この人は悪いことをしたからトークンの移動を凍結するということも出来ます。そして、Stellarでは発行者は自分が発行したトークンを保有出来ません。

100億トークンを作ったとすると、配布者に必ず渡さないといけなく、ICOやIEOした際にそれぞれに配布する形になります。そのように役割が明確に分かれてるので、例えば、ここで配布者が秘密鍵を盗まれるような事件が起きたとしても、発行者がいるので安全です。

発行者に依頼すれば、動かすことも売ることも全く出来なく、盗まれた悪質なアドレスが凍結することが出来ます。そのようなところで権限がしっかりと分かれ、発行者と配布者を分けることによってセキュリティの高さが実現していて、これはビジネスにおいて非常に重要な要素となります。

今ではトークンが流出した後は泣き寝入りになってしまいますが、Stellarの場合は発行者がいるのでトークンの凍結が可能です。企業でトークン発行を行う場合など、発行者をまず経営層でマルチシグにして、配布者もマルチシグにすることでさらにセキュリティを強化することも可能でしょう。

また、Stellarのコミュニティから、マルチシグの1個の鍵を預かるサービスも出てきていて、鍵を預ける人がいない、あるいは自分で鍵を持つリスクを取りたくない人などは、そういったサービスを利用するのもありでしょう。

高地 明 ブロックチェーンエンジニア

ITベンチャー、上場SI企業を経て、マネーフォワードにJoinしアプリエンジニアとして従事。その後DMM.comに入社し、CTO室でR&D業務を行い、ブロックチェーン研究室へ移動。セキュアWalletの開発、Stellarの調査、検証などを実施。2019/11にDMM.comを退職後、IoTベンチャーにJoin。

好きな開発言語はCrystalとReasonML。

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