お金も時間と共に価値を失えば、世界は良くなる|前編

貧困や環境問題、世の中の様々な課題の根本原因が「お金の仕組み」にあるといったら、あなたはどのように思いますか?おかしな話に聞こえるでしょうか。

本記事では、なぜ今のお金の仕組みが問題であるのか、過去の事例なども参考にしながら説明していきます。

諸課題の原因は「お金の仕組み」にある?

谷口 貴久 Freewill COO/Valueism CEO

ドイツに移住、起業しています。 社会問題に対して、自分の頭で考えて行動したかったからです。 環境に良いものの輸出入と、地球環境保護の為の『時間と共に価値が減るお金』の発行に取り組んでます。 Facebookプロフィールはこちらから。

こんにちは。今回のコラムを執筆した、株式会社FreewillでCOOを務めている谷口貴久です。

大学ではITを専攻、英国に留学し、世界50ヵ国ほどを旅して周りました。大学卒業後は一旦ITから離れ、世界最大級のチェーンストア企業でエリアマネジャーを務めました。

その後、アフリカのギニアで学校設立プロジェクトに携わる機会に恵まれ、その経験を通してITの可能性を再認識し、現職に至ります。

現職では、メガバンクでの40ヵ国に渡るグローバルITプロジェクトのマネジメント、大手旅行業者にご依頼頂いたインド10億円規模M&Aプロジェクトのマネジメント、大手メディアへのITコンサルティング、複数のブロックチェーン技術を利用したシステムの企画/設計/開発マネジメント、等の業務に携わってきました。

2019年6月よりドイツに移住し、FreewillのCOOを継続しながら、Freewillとは関連会社となる会社をドイツに設立する形で、起業しています。

さて、2019年5月をもって、日本の元号は30年程続いた「平成」から「令和」へと変わりました。

僕は昭和の最後の年に生まれたので、人生のほとんどが「平成」でしたが、その約30年という短い時間の間で社会は急激に変化しました。

家に備え付けてあるものだった電話は携帯電話へ、それが今ではスマートフォンという形で、ほとんどすべての人が、いつでもどこでも、インターネットを利用できる便利な時代になりました。

一方で、課題はまだまだ山積みです。皆さんも、「SDGs(持続可能な開発目標)」という言葉を見たり聞いたりされた事があるのではないでしょうか。

「SDGs」とは

2015年の国連サミットで採択された、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標。「貧困をなくそう」や「飢餓をゼロに」、「気候変動に具体的な対策を」や「海の豊かさを守ろう」など、17のゴールを掲げています。

例えば、21世紀の現在でも、10人に1人が1日2$に満たないお金で生活する極度の貧困状態にあります。また、9人に1人が飢餓状態にあるといい、現状は深刻です。

地球の気温は継続的に上昇し、異常気象や生態系の破壊、資源の枯渇を生み出していて(飢餓も気候変動の影響による資源の枯渇で増えたと言われています)、海ではお金を優先した乱獲の為、このままでは30年後には魚がいなくなるとも言われています。

「SDGs」では課題は17に分類されていますが、これらの課題の根本にある原因は、大きく2つだと僕は考えています。

それは、「人の意識」と「お金の仕組み」です。

ただ、「人の意識」はともかく、「お金の仕組み」が今も社会に存在する多くの課題の根本的な原因だと言うと、いまいちピンと来ない人も多いのではないでしょうか。

ここでは、世界で実際にあったお話も交えて、それについてできるだけわかりやすく説明をしていきます。皆さんとも切っても切れない「お金の仕組み」についての、とても重要なお話だと思いますので、読んで頂けると嬉しいです。

人類がこの惑星の上で今後も生存できるかどうかを決める、決定的な問いだと思っています。

お金とモノ、とれないバランス

今、お金と無縁な生活をされている人はほとんどいないでしょう。むしろ、無縁どころか、僕たちのほとんどは、お金に毎日振り回されて生きているのではないでしょうか。

お金がこれほど大きな存在なのは、それが食べ物を買えたり、家賃を払えたり、映画を見に行けたりと、人が「価値」を感じるものと交換できるからです。

大昔はいわゆる「物々交換」をしていたと言いますから、なるほど、この点でも世の中はとても便利になりました。

また、今のお金の仕組みは、僕たちが生まれてからこれまで当たり前のように存在していましたから、あまり疑問を持つ人は少ないかも知れません。

でも、次の点はどうでしょうか。

天秤の片方のお皿にはお金が乗っていて、もう片方のお皿には、食べものや着るもの、サービスなど、お金で交換できる、人が「価値」を感じるものが乗っています。

この、人が「価値」を感じるものは、すべて人の時間と地球の資源でできています。当たり前ですが、これらは無限にはありません。もっとも、富める国の人はあたかも無限にあるように錯覚してしまいがちですが。

また、それらは時間と共にその価値を失います。食べ物は腐りますし、着るものや住むところなども、時間とともにその価値を失っていきます。スーパーマーケットで、閉店間際になると割引のシールが貼られることなど良い例でしょう。

では、お金はどうでしょうか。

お金は無限に増やすことができます。貨幣を新たに発行するとか、通帳の数字の桁を増やすだけの作業です。

そして、時間とともに価値を失うということも普通はありません。1万円は1年後も1万円です。この1万円で、例えば食べものを購入すれば、その食べものの1年後の価値は0円に等しいかも知れません。

天秤の一方には、無限に増えていくお金、そしてもう一方にのっているのは、食べ物や着るものなど、いずれなくなっていく「有限」のものです。そうです。この天秤は最初からアンバランスなのです。

不均衡な天秤の対価

このアンバランスは時間とともに広がります。これがバランスをとれているように見えるのは、何かを犠牲にしてお金と反対側のお皿に乗せているからです。

働きすぎによる過労死。世界で最も裕福な8人の富と、経済的に恵まれない36億人の富が同じだという異常なまでの貧富の拡大。気候変動に代表される、資源の枯渇や砂漠化など、自然環境の悪化。

犠牲にしているのは、かけがえのない、人の時間と地球の資源なのです。

では、もしも、お金も時間とともに価値を失えばどうでしょうか。この天秤はバランスがとれ、人にとっても地球にとっても本当に良い世の中になるのではないでしょうか。

とてもぶっとんだ話に聞こえるかも知れませんが、実際に時間とともに価値を失うお金が歴史上、世界各地で使われていた例があります。見てみましょう。

価値を失っていくお金が繁栄のカギ

古代世界のエジプトは世界の最先進国でした。そして、その当時のエジプトで使われていたのが、時間とともに価値を失うお金の仕組みです。

お金で交換できるものが時間とともに価値を失うのだから、お金も価値を失っていくのが当たり前だと考えられていたそうです。

このお金は貯めていても損をするので、人は、別のモノで自分達の豊かさを維持しようと、土地の改良など、自分たちに長期的な利益をもたらすものにお金を変えました。

そして、自然と共に生きる、とても豊かな生活が長く続きましたが、ローマ人がエジプトに侵略し、価値が減らないお金の仕組みを強制した時、エジプトの繁栄は終わったといいます。

西欧中世では、1150年から1350年は「ビジネスの黄金時代」とも呼ばれる時代でした。今でも多くの人が見物する、信仰的にも経済的にも意義深い大聖堂の多くは、この時代に作られたものです。

この時代でも、時間と共に価値を失うお金が使われていた為、人はそれらの価値がより長く続くものにお金を変えました。

価値を失うお金で大恐慌から復活

最近の例もあります。1929年の世界大恐慌後、ドイツの隣にあるオーストリアのヴェルグルという町もその影響を受け、町は借金を抱え、多くの失業者であふれる状態でした。

そこで、その時の町長はこの状況をなんとかしようと、時間と共に価値を失うお金を導入しました。簡単にいうと1ヵ月に1%ずつ価値が減少するというものです。

このお金は持っていても損をするので、皆がそれをすぐに使いました。誰も貯めることなく、経済という生き物の中で、お金は血液のように人と人の間を循環します。

時間と共に価値を失うお金は、もちろん利子なんてなしに借りることができた為、皆がお金を借りて事業を始めました。

その結果、2年後には失業者の姿が消え、町民は自分が手に入れたお金で木を植え始めたといいます。人は税金を前払いするようになり、町の税収はなんと8倍になりましたが、最後は国家が介入し、このお金は禁止されました。

ここまででいくつかの事例を紹介しましたが、そのようなお金の仕組みが人の意識をどのような方向に向けるのか、そして、それをふまえて僕が何を実現しようとしているのか。それは後半の記事でお話ししたいと思います。

お金も時間と共に価値を失えば、世界は良くなる(後半)|Freewillコラム

後半記事では、時間と共に価値が減っていくお金の仕組みが人の意識をどのような方向に向けるのか、そして、それをふまえて僕が何を実現しようとしているのかをお話していきます。

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