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ステーブルコイン決済を「普通」に INSPAYが「Sui」を選んだ理由

INSPAYが語る、少額・高頻度決済におけるSuiの優位性 「並列実行」の重要性も強調

次世代決済インフラを手がけるINSPAY株式会社(東京都千代田区)は、メッセージのように自由にお金を動かせるよう設計された高性能ブロックチェーン「Sui」と連携し、Sui基盤のステーブルコイン決済を全国規模の商取引ネットワークに導入する取り組みを進めている。

INSPAYグループは、自動販売機の広範なネットワークをはじめ、国内1万台以上の決済対応端末にQRコード決済システムを提供している。今後はSui上のステーブルコイン決済を既存の決済網に組み込んでいく方針だ。

Mysten Labsとの協業の一環として、INSPAYは7月13、14日に東京で開催された「WebX 2026」に出展。自動販売機とクレーンゲームを使い、USDCとUSDsuiによるSui上のステーブルコイン決済を実店舗環境で実演した。2日間で計470件の決済が行われた。

WebX 2026に出展したINSPAYとSuiの共同ブース。自動販売機やクレーンゲームを使ったステーブルコイン決済を実演した

今回、Sui Japanの公式Xでは、INSPAY事業開発責任者の田中夏子氏と、Mysten Labs Japan合同会社Senior Solution EngineerのTomohiro Taki氏による公開対談を実施。ステーブルコイン決済の可能性や、INSPAYがSuiを採用した理由などについて意見を交わした。

Suiの開発を主導したMysten Labsは、米Facebook(現Meta)のデジタル通貨構想「Libra(後のDiem)」に携わったエンジニアらが2021年に創業した。

対談では、田中氏がSuiの主な優位性として、決済スピードと、多くの場合、利用者のガス代負担を完全になくせる「ガスレス」なユーザー体験の二点を挙げた。Taki氏は、Suiの並列実行能力がリテール決済に不可欠であると強調した。

対談の主なやり取りは以下の通り。

Taki:INSPAYの事業内容を教えてください。

田中:国内のリテール分野の実店舗向けに、QRコード方式の決済端末システムを開発・提供しています。INSPAYグループとして、自動販売機やゲームセンターのクレーンゲームなどで1万台以上の導入実績があります。日本人のかなりの人が、月に一回程度は利用しているような飲食店チェーンでも納入済みです。いずれも少額で高頻度の決済が必要な用途に適したシステムです。

Taki:それらの決済にステーブルコイン方式を組み込もうという構想ですね。

田中:その通りです。自販機などの利用者のウォレット(電子財布)から、加盟店のウォレットに直接価値を移転するという取引構造に意義があると考えています。既存の金融システムを否定しているわけではないですが、例えば現状のキャッシュレス決済だと、加盟店には一定の決済手数料が発生します。

Taki:確かに、Suiにはアプリ事業者などがガス代(ブロックチェーンを使う際の利用料・処理手数料)を肩代わりする仕組みがあり、利用者がガス代を負担しない決済システムを実現することが可能です。

田中:現在は、利用者の決済が終わっても実際の入金まで時間がかかり、加盟店の資金繰り上の負担になっています。実際に、2026年7月にはクレジットカード決済代行企業全東信が破産し、飲食店などの加盟店が売り上げを回収できない事態も発生しました。ステーブルコインで決済の構造を簡素にすれば、こうした決済・清算に伴うリスクを減らせる可能性があります。

Taki:INSPAYほどの導入実績を持つ会社なら、Sui以外のブロックチェーン基盤も選択肢だったはずです。最終的に、Suiを選んだ理由を教えてください。

田中:2025年という早い時期に、Mysten Labsの皆さんと実店舗でのステーブルコイン決済のあり方を真剣に話し合えたことが大きかったです。技術面では、決済の速さが決め手の一つでした。店頭での決済の検証も行いましたが、1秒以内で完了するので待たされている感覚になりませんでした。

WebX 2026で展示されたINSPAYの決済端末

Taki:確かに、すでに消費者が「PayPay」など現行の電子決済のスピードに慣れている環境下で、それより遅い決済技術に置き換えるのは合理的ではないですね。

田中:ブロックチェーンによっては、決済完了まで少し待たされるケースがあります。その点、Suiでは、決済に必要な基本的な機能が期待通りに動きます。もう一つの理由は、先ほども話題になった通りSuiはガスレス、つまり利用者にガス代がかからないようにできることです。自販機で買い物したり、飲食店で食事したりするたびに「ガス代のトークンを用意してください」と求められれば、利用者は離れてしまいます。

Taki:Suiの優位性には、互いに依存しない複数の決済を同時に処理できる「並列実行」もあると思います。さらにINSPAYのエンジニアからは、二重払い防止やレシート発行などの基本機能が「Sui Payment Kit(ペイメントキット)」としてまとまっていることも評価してもらえたようです。まさに、Suiは「普通のことを普通にできる」決済技術なのだと考えています。

田中:やはり、ステーブルコインの普及では、利用者が日常的に使って楽しいとか、買い物に使えてうれしいとかといった体験がすごく大切だと思います。

自動販売機でSui上のステーブルコイン決済を体験する来場者

Taki:同感です。私もWebX 2026のブースを見学しました。Suiベースの決済で自販機やクレーンゲーム機のデモを体験する人で賑わっていました。見学者からはどんなフィードバックがありましたか。

田中:Sui公式ウォレット「Slush Wallet」によるQRコード決済を体験してもらいました。2日間で470件の決済が行われました。体験者からは「ステーブルコインでここまでできるのか」「決済早いですね」といった前向きな声が多く、みなさんがXに投稿した体験動画にも大きな反響がありました。

Taki:2日間にわたって実際に運用する中で、トラブルなどはありましたか。

田中:トラブルらしいトラブルは正直なかったですね。今後は、実店舗でのステーブルコイン決済を引き続きパートナーと一緒に検証していきたいと考えています。いきなり本格導入するのは難しいと思いますので、まずは今回のようなデモやPoC(概念実証)から始め、ユーザー体験やオペレーション、精算の仕組みなどを一緒にやりながら改善していきます。INSPAYには実店舗決済で培ってきたノウハウがありますので、それを生かしながら段階的に実用化につなげていくことができます。

ステーブルコイン決済に対応したクレーンゲームを体験する来場者

Taki:私は今日、外出時にルーレット付きの自販機でお茶を買いました。当たったら、もう飲料を一本もらえますが、私は夏の軽装でポケットもなく、もらっても持ち運びに困る状況でした。ステーブルコインによる決済なら、一本分の権利をNFT(非代替性トークン)チケットとしてウォレットに付与して、次に使うなり、他人にあげるなりという使い方もできます。

田中:INSPAYもステーブルコインを単なる通貨ではなく、プログラマブルなお金ととらえています。例えば、決済業者にPayPayやSuicaなど他の電子決済と比較してもらう際に、ステーブルコインならキャンペーンで何%オフにするなど、いわばお金をデザインできることが大きな利点だと思います。また、当社が提供済みの決済端末はハードウエア自体を交換する必要がなく、遠隔操作でステーブルコイン決済に転換できるのも強みだと思います。

Taki:従来の電子決済では、決済そのものと顧客との継続的な関係を別々の仕組みで管理するケースが一般的です。一方、Sui上のステーブルコイン決済では、自販機による販売でも、決済と顧客の購入履歴やポイントなどの機能を組み合わせることができます。Mysten LabsはINSPAYとの協業で、特にリテール分野でステーブルコインを活用した決済の機能を十分に引き出したいと考えています。

【INSPAYについて】

INSPAYは、実店舗向けの新世代決済端末および決済プラットフォームを開発・提供するテクノロジー企業です。INSPAYグループとして、自動販売機やアミューズメント機器などを中心に国内で約3万台の端末を展開しています。既存のキャッシュレス決済に加え、ステーブルコインなどブロックチェーンを活用した決済にも対応し、デジタルマネーを日常の消費につなぐ決済インフラの構築を進めています。
公式HP:https://www.inspay.jp/