米Coin Center、仮想通貨の税務ガイダンスを議会に提案
上院財務委員会へ書簡
米暗号資産(仮想通貨)擁護団体「コインセンター(Coin Center)」は21日、米連邦議員に対し、仮想通貨の課税について明確なガイダンスを求める書簡を送った。
上院財務委員会のロン・ワイデン委員長とマイク・クラポ委員に宛てた書簡の中でコインセンターは、キャピタルゲイン税に対する少額免除の設定や、仮想通貨ネットワークにおけるブロック報酬の課税方法について提案している。
ワシントンDCを拠点とするコインセンターは、仮想通貨やブロックチェーン技術に関する公共政策について、調査や提言を行う非営利団体。「自由でオープンなブロックチェーン・ネットワークを利用し、イノベーションを起こす自由を最大化する政策」を推進している。
コインセンターは、各国政府がブロックチェーン規制を検討する際に留意すべき6つの原則を提言した経緯があり、その一つが税制に特化したものだった。
少額免除基準の設定
コインセンターは、外貨購入と同様、少額免除基準(デミニマス基準)を仮想通貨の利用に設けるべきだと提案している。
内国歳入庁(IRS)は2014年3月のガイダンスで、仮想通貨は財産として扱われ、売却や取引による利益はキャピタルゲインとして課税されるとしたが、財産には最低限の免除額が適用されない。そのため、ビットコインでコーヒーを購入するなどの日常の小さな行為ですら課税対象となり、多くの摩擦を生むため、決済手段として普及することが困難になる。
コインセンターは、以前の議会会期で提出された「仮想通貨課税公正化法案(Virtual Currency Tax Fairness Act)」に言及。日常的な用途に使用される少額の仮想通貨取引に対して、キャピタルゲイン税から免除される免除基準の創設を目的とする同法案を考慮するように、財務委員会に要請した。
取引相手の報告要件の廃止
また、コインセンターは、仮想通貨に関して第二当事者の税法上の報告義務を適用しないことを検討するよう求めている。
仮想通貨の送付先に関して「不完全または存在しない」情報の提供を、ユーザーが要求される可能性があると同団体は指摘。「一般人が他の一般人に関する非常に立ち入った情報を収集し、令状なしに政府への報告を強制すること」は違憲であり、プライバシーの懸念や申告者に過度の負担を生じさせると主張した。
また、同団体は、2016年にIRSが米大手取引所コインベースに対し、税務申告違反に関係のないユーザーを含む大量のユーザーデータの提出を求めた「John Doe」(何某)召喚状の事例をあげている。このような召喚状の発行権限は、憲法上の権利保護の面から議会によって慎重に検討され、IRSへの制限も考慮されるべきだとコインセンターは指摘した。
ブロック報酬、エアドロップ、ハードフォーク
コインセンターは仮想通貨ネットワーク上でのマイニングやステーキングから得られるブロック報酬や、ハードフォーク、エアドロップなどによる報酬については、明確な税務上の新たなガイダンスが必要だとしている。
コインセンターは、「新しい価値が創造された瞬間」、つまり報酬が得られた時点で課税されるべきではなく、その報酬を売却した時点で課税されるべきだと主張。ブロック報酬を納税者の土地で採れた果物や作物、誕生した子牛などに例え、農作物や家畜の販売と同様に、仮想通貨を販売した時点で課税すべきだと説明した。
また、IRSが課税方法について適切なガイダンスを提供するまでの間は、納税者のためにセーフハーバーを設けるべきだと提案。下院に提出された「フォーク資産をもつ納税者のためのセーフ・ハーバー法案」に言及した。
コインセンターは、IRSがハードフォークに関して明確なガイダンスを示していないことから生じる、納税者の責任の及ばない負債について、納税者を保護する合理的方法が示されているとして、この法案を評価している。
ブローカーの定義
書簡では、「インフラ投資及び雇用法案」では「ブローカー」の定義が拡大され、マイナーやライトニング・ノードなども含むと解釈できるようになったことに警鐘を鳴らしている。またこの法案では、仮想通貨を扱う全てのブローカーに対し、取引相手の個人情報の報告を求める権限を財務省に与えるもので、セルフホスト型のウォレットへの送金も対象となるという。
コインセンターは、マイナー、ステーカー、ウォレットソフト開発者など、仮想通貨ユーザーに対し単にソフトウェアやインフラを提供しているに過ぎない事業者に、第三者への報告要件を課すべきではないと主張。このような事業者は、納税者に関する詳細な情報を入手する手段も権利もないだけでなく、監視する義務を負うべきではないと説明し、ブローカーの定義から明確に除外するよう求めた。
コインセンターによる提案は、7月の米上院財務委員会からの要請に答えたもので、同委員会は仮想通貨の税務ガイダンスに関する回答を9月8日まで受け付けている。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します