銀行の信用創造機能、仮想通貨台頭で危機感=英中銀副総
仮想通貨が信用創造に影響する懸念
英国の中央銀行であるイングランド銀行(BoE)の副総裁、Jon Cuncliffe氏は、仮想通貨(暗号資産)経済圏の出現により、銀行の信用創造機能が弱まるか、消滅する可能性すらあると発言した。
2月28日にロンドン大学スクールオブエコノミクスで行われたスピーチで副総裁は、ソーシャルメディアのプラットフォームにステーブルコインを統合すると、人々が現在銀行に保有している預金の多くをステーブルコインに移してしまう恐れがあると予測した。
そうした場合、ステーブルコインが他の金融資産にどのように裏付けられるかにもよるが、銀行システムを通じた実体経済への信用の供給が弱まるか、なくなる可能性もある。この変化は、重大な経済的影響を伴うと考えられる。
そして、BoEは貨幣が「安全かつ確実に機能する」ことを保証する役目を持っているが、仮想通貨は英国政府、規制当局、イングランド銀行にとって「深刻な問題」をもたらし得ると続けた。
Cuncliffe氏は、ステーブルコインの利点についても認めている。「国境を越えた取引の決済コストを大幅に削減する」ことや、銀行サービスを受けられない状況にある人々に対して、簡単で安価な決済サービスを提供することで、より広い人々を金融システムに参加可能にする点などを挙げた。
利点を認識しつつも、規制当局と中央銀行に対し、新興の仮想通貨エコシステムが「システム的に重要」になる前に、それがもたらす課題に備えるよう意見した。
具体例としては、フェイスブックが主導する仮想通貨リブラに言及。フェイスブックは大規模に社会で活用されているため、「リブラ」は、「非常に急速なペースで、金融システムにとって重要になる」採用レベルまで達する可能性があると危惧している。
ステーブルコインに関する報告書
Cuncliffe氏は、金融安定理事会(FSB)が2020年に「ステーブルコインに関する規制上の推奨事項」を検討する報告書を発表する予定についても言及した。
ステーブルコインに関しては、今年は他にも様々な国際機関から、報告書がリリースされる予定である。
2020年7月には、国際通貨基金(IMF)により、加盟国における金融主権を含むマクロ経済的影響に関する報告書、同じく2020年7月には、AMLおよびCFTのリスクに関する金融活動作業部会(FATF)からの報告も予定されている。
先月には、G20の共同声明で、「グローバルなステーブルコイン」のリリース前に国際金融システムへの影響を精査する必要性が表明された。
今後も、国際的な金融機関がステーブルコインへどのような見方を示すのか注目される。
参考:BoE発言
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します