イラン、没収した仮想通貨採掘マシンを返却へ
マイニングマシンの一部を返却開始
イラン当局は、没収した暗号資産(仮想通貨)マイニングマシンの一部を、裁判所命令を受けて所有者に返却すると述べた。現地メディアFinancial Tribuneが伝えた。
イランの経済財務省関連団体である、「国有財産収集・販売組織(OCSSOP)」のAbdolmajid Eshtehadi責任者は次のように説明している。
現在、約15万台の仮想通貨マイニングマシンがOCSSOPによって所持されており、その大部分は司法判断に従って解放される予定だ。マシンの返却はすでに開始されている。
Eshtehadi氏は、「イランの国営発電・送電・配電会社Tavanirは、全国の電力網に損害を与えることなく、マイニングマシンを活用するために、新しい計画を提案する必要がある」とも続けた。
今回、マイニングマシンの一部返却を開始した理由については現時点で伝えられていない。
イランの仮想通貨マイニング事情
イランは2019年にビットコインマイニングを合法化し、事業者のライセンス制度を導入している。しかし、登録されたマイニング企業は、電力を、通常よりも高い料金で買う必要があるため、ライセンス登録しない違法事業者も存在し続けた。
ライセンス登録した事業者は、マイニングマシン輸入にあたっては、産業・鉱業・貿易省から許可も得なければならない。また、使用前に、当局からマイニングマシンの認可を受ける必要がある。
仮想通貨マイニング以外の目的で契約した電力を使って仮想通貨マイニングを行うことも違法だ。
Tavanirは2022年9月時点までに5,300以上の違法マイニングファームを閉鎖。21万台を超えるマイニングマシンを押収してきたとされる。Tavanirは以前、違法マイナーが、全国送電網に約12億円(3,800億イラン・リヤル)の損害を与えたと主張していた。
イラン当局は、季節性の電力ひっ迫に伴って、ライセンスを取得したマイニング企業への電力供給停止措置も実施している。夏季と冬季の気温上下にともない電力需要が国内で高まる時期に、登録事業者への電力を一時停止する形だ。
関連:イラン、仮想通貨マイニング事業者への電力供給を一時停止
こうした措置に伴い、イランのグローバルなビットコイン(BTC)ハッシュレートに占める割合も変化してきた。米国など他国がシェアを伸ばしていることもあるが、例えば、ケンブリッジ大学オルタナティブ金融センター(CCAF)によると、2021年3月時点では7.5%だったが、2022年1月時点では0.2%まで下落している。
ハッシュレートとは
マイニングの採掘速度のこと。日本語では「採掘速度」と表現される。単位は「hash/s」。「s」は「second=秒」で、「1秒間に何回計算ができるか」を表す。マイニング機器の処理能力を表す際や仮想通貨のマイニングがどれくらいのスピードで行われるかを示す指標として用いる。
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輸入代金の決済に利用
イラン政府は、米国の制裁措置に対抗するためにも仮想通貨に注目しており、2022年8月には、仮想通貨を輸入取引の支払いに利用するための規制を制定した。同月、仮想通貨により初の輸入注文を、14億円相当行ったことも明かしている。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します