米シグネチャー銀行、株主からの集団訴訟に直面
株主がシグネチャー銀行を提訴
米シグネチャー銀行の株主らは14日、同行とその元幹部3人に対する集団訴訟を起こした。当局によって事業停止となる数日前に、財務状況が健全だとする虚偽あるいは誤解を招くような声明を出していたと申し立てている。ロイター通信が報じた。
連邦預金保険公社(FDIC)がシリコンバレー銀行を差し押さえた後、米ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)は12日に預金者保護のためシグネチャー銀行を閉鎖したと発表している。集団訴訟は、3月2日から12日までの間に同行の株主だった者を対象として、損害賠償を求めている。
Matthew Schaeffer氏が率いる株主は、シグネチャー銀行が、シリコンバレー銀行のトラブルによって引き起こされた懸念を鎮めるため、不適切に財務の健全性を強調していたとする形だ。
一例として、シグネチャー銀行は「高水準の資本、強力・堅実な収益を維持しており、これによって困難な時代にも、競合他社との差別化を図っている」としていた。
シリコンバレー銀行の親会社の株主も13日、シリコンバレー銀行とその幹部に対する集団訴訟を提訴したところだ。担当している法律事務所は、シグネチャー銀行の訴訟と同一であると伝えられる。
シグネチャー銀行は、仮想通貨業界向けにサービスを提供する主要銀行の1つでもあり、同行の取締役の一人Barney Frank氏は、規制当局は仮想通貨に反対していることを示すためにシグネチャー銀行を閉鎖した側面があると主張していた。
SVBの破綻を受けて預金者から約1.3兆円の引き出しはあったが、同行の2022年12月31日現在の総資産は約14.6兆円で、事業停止は不要だったとも話している。
一方でニューヨーク州規制当局NYDFSの担当者は、シグネチャー銀行は幅広い顧客を抱えているため、仮想通貨含め特定の業界が閉鎖の理由ではないと否定した。
関連:シグネチャー銀行の取締役「米規制機関は仮想通貨に反対している」
シグネチャー銀行が発表していた内容
シグネチャー銀行は、シリコンバレー銀行が経営破綻する直前の9日、財務状況と仮想通貨関連業務の状況について発表していた。
まず、全米で9つのビジネス分野に分散された約13兆円(1,000億ドル)を超える資産を有しており、法律事務所、会計事務所、ヘルスケア企業、製造業、不動産管理会社などの中堅企業からの預金が80%以上を占める、多様な預金構成を持つと説明している。
さらに、3月8日時点で、バランスシート上の現金保有額は約6,100億円(約45億4,000万ドル)、借入残高は約8,900億円(65.8億ドル)、流動性のある有価証券は約3.6兆円(約264億1,000万ドル)、預金残高は約12兆円(891.7億ドル)あるなどと述べた。
仮想通貨分野との関連
また、シグネチャー銀行のJoseph J. DePaolo CEOは、仮想通貨関連の預金取り扱いは限定的だとして、次のように話している。
シグネチャー銀行は仮想通貨への投資、取引、保有、カストディ、デジタル資産を担保とした融資は行っていない。
私たちと、仮想通貨分野との関係は、米ドル預金のみに限定されている。また、これらの預金を削減していく計画もある。
特にFTX破綻後、様々な政府関係組織が、銀行と仮想通貨のつながりに対する注意を促している。一例としてIMF(国際通貨基金)は13日、仮想通貨のマクロ金融に対する影響を論じ、銀行へ及ぼし得る影響について注意喚起したところだ。
関連:IMF、銀行に対する仮想通貨の影響を警告=G20報告書
カストディとは
仮想通貨以外の資産にも広く使われる用語。資産の保管や売買に係る決済、また元利金・配当金の受領や議決権行使など、幅広い業務を代行するサービスを指す。カストディを行う企業を「カストディアン」と呼ぶ。
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