- CEOが語る日本進出の理由と規制評価
- ステーブルコイン決済とRWAの展望
暗号資産(仮想通貨)交換業者ビットトレード(BitTrade)は2026年9月15日、SHx(ストロングホールド)の取扱いを翌16日から始めると発表した。SHxが国内の暗号資産交換業者に上場するのは初めて。
ストロングホールドは、銀行口座決済(Pay-by-bank)や組み込み型決済の開発者向けAPIを手がける決済企業だ。SHxは、その決済ネットワークを調整する役割を担う。
SHxは2025年10月22日に米クラーケン(Kraken)で米国初上場を果たし、同年11月27日にはUpholdにも上場した。今回のビットトレード上場は、ストロングホールドにとって日本・アジア市場への初進出となる。
なぜ次の市場に日本を選んだのか。ステーブルコインによる決済は、どこまで実用に近づいているのか。同社創業者兼CEOのタミー・キャンプ(Tammy Camp)氏が、CoinPostの単独取材に応じた。
タミー・キャンプ(Tammy Camp)氏は、より迅速な決済、より強固なセキュリティ、より広いアクセスを実現する金融インフラの近代化を目指し、ストロングホールド(Stronghold)を創業した。過去には、ステラ(Stellar)がローンチ後わずか2カ月でユーザー数400万人に到達する成長を支えたほか、ファイブハンドレッド・スタートアップス(500 Startups)にて高成長スタートアップへの投資を手がけた。
フォーチュン誌「ザ・レジャー・フォーティー・アンダー・フォーティー(The Ledger 40 Under 40)」に選出され、ウィメン・イン・ペイメンツUSA(Women in Payments USA)のイノベーション・アワードも受賞。
日本市場を選んだ理由
私たちが日本に惹かれたのは、ほかの地域にはまだない制度を、日本が築いてきたからです。トークンの取扱いが始まる前に、通過すべき明確な審査プロセスがあります。その背後にある基準は一貫していて、事前に知ることができます。
これは偶然ではありません。規制当局やJVCEA(日本暗号資産等取引業協会)、そして取引所自身が、何年もかけて意図的に取り組んできた結果です。
米国では、暗号資産の上場の判断は大部分が個々の取引所に委ねられ、規制上の問題はずっと後になってから解決されます。この違いは際立って見えます。
日本では、私たちは厳しい審査を覚悟のうえで、喜んで臨みました。「イエス」の前に厳しい問いを投げる市場こそ、参入する価値があります。
文化の違いも重要です。日本のデューデリジェンスは徹底していて急がず、信頼は築くものです。初参入の企業として、私たちはまだその途上にいます。早さより、きちんと進めることを選びます。
日本のステーブルコイン規制への評価
日本は市場が育つ前に、ステーブルコインを「決済手段」と定め、誰が発行でき、何を裏付けにすべきかを決めました。この順序が重要です。これが決まれば、ほかの問いにも答えられるからです。
対照的なのが欧州のMiCAです。真剣な取り組みですが、運用マニュアルというより幅広い告知で、各国が解釈しなければなりません。日本の制度は、事業を組み立てられるほど具体的です。
最も評価しているのはバランスです。何も作れないほど厳しいルールや、利用者を守れないほど緩いルールを作るのは簡単です。日本はその中間の、「厳しいが実行可能」な線を見つけました。この点は、海外で十分に評価されていないと思います。
決済会社としての実像
多くの人は価格チャートを通じてこの技術に出会いますが、私たちはその反対側で仕事をしている、と伝えています。ストロングホールドは決済会社です。銀行口座決済(Pay-by-bank)や組み込み型決済のための開発者向けAPIを作っていて、その下でブロックチェーン上の決済処理が動いています。
現在、数千の加盟店がこのインフラを利用しています。ただ、その恩恵を受けるほぼすべての人は、その存在を知ることはないでしょう。カードをタッチするとき、カードネットワークのことを考える人はいません。
SHxはネットワークを調整する役割を担うもので、ネットワークが売る商品ではありません。ですから、そもそもブロックチェーンの話から始めないようにしています。私たちは、企業とその顧客の間で、既存の決済網よりも効率的にお金が動くよう支援しています。ブロックチェーンは手段であって、目的ではありません。
SHxの役割
SHxには各チェーンでのガバナンスの役割もありますが、加盟店が普段触れるのは手数料の場面です。最も分かりやすいのは加盟店手数料でしょう。
加盟店は処理手数料を、標準料率のドルで払うことも、割引を受けてSHxで払うこともできます。それ以外は何も変わらず、顧客はSHxを持つ必要も、その存在を知る必要もありません。
役割をここまで絞っているのは意図的です。決済のあらゆる段階に関わるトークンは、決済にかかる税金になってしまいます。SHxは取引の端にあり、お金の流れを邪魔せずに、企業に使う理由を与えています。
銀行とブロックチェーンの関係
その前提には異論があります。この2つは対立しておらず、私たちの経験では、目的はかなり一致しています。
ブロックチェーンは、オープンである必要はありません。参加者を明確に管理する、閉じた許可型のシステムにもできます。IBM World Wireはブロックチェーンの決済ネットワークでしたが、定義上、閉じたものでした。
銀行のほうも、管理そのものが目的ではありません。望んでいるのは収益性のある事業を続けること、つまり最も効率的なルートでA地点からB地点へお金を動かすことです。私たちが扱うチェーンは、まさにそれを行っています。目的は同じで、言葉が違うだけです。
ですから、難しかったのは2つの思想の両立ではなく、誤解でした。ブロックチェーンと聞けば、多くの人はイーサリアムを思い浮かべ、オープンであることが本質だと考えます。初期の金融機関との対話は、その大半が、本題に入る前に誤解を解くことに費やされました。
サンフランシスコ、ストロングホールドのオフィスで、キャンプ氏(左)とショーン・ベネット(Sean Bennett)CTO(右)
ステーブルコインの強みと普及の条件
国際送金では明らかに勝っています。コルレス銀行網では、仲介機関ごとに手数料と1日がかかり、途中でお金の所在も見えません。ステーブルコインなら数分で決済でき、コストは距離に比例しません。銀行の営業時間に縛られない点でも勝っています。
及ばないのは流動性で、特に今の日本で顕著です。マーケットメイカーのアクセスがまだ限られ、市場の厚みは経済規模に比べて薄い。ルールを慎重に整えてから扉を開く市場では普通の段階で、参加者が増えれば解消すると見ています。
もう一つの課題はネットワークの規模です。決済はネットワークのビジネスで、1社なら実験ですが、同じサプライチェーンの数百社が使えば標準になります。どちらも技術の問題ではありません。だからこそ、私は楽観的なのです。
現実資産(RWA)の決済へ
私たちが今注力しているのは、現実資産(RWA)です。決済システムの外にある価値のことで、それに対してお金を動かすのは、いまだに時間がかかり、手作業です。
1年後には、日本の開発者が請求書や在庫に対する権利、野球カードのようなトレーディングカードといった実在する資産に対して、決済の仕組みを自前で作らずに、私たちの基盤の上でお金を動かせるようになってほしいと思います。
野球カードは、私がよく持ち出す例です。私はサンフランシスコ・ジャイアンツのファンで、東京にもジャイアンツ(読売ジャイアンツ)があると知り、良い兆しだと感じました。それに、カードは実際の価値を持ち、何度も持ち主が変わる実物です。その裏のお金も、カードと同じくらいシンプルに動くべきです。
こうした身近な課題にこそ役立ちたいのです。完成した製品を約束するより、そう語るほうを選びます。
創業当時から変わらない信念
信念は変わっていません。人々には、速く、安全で、本当に使える決済と金融へのつながりが必要です。それが始めた理由で、今も私たちの仕事です。
考えを改めたのは時期です。2013年にステーブルコインに取り組み始め、2017年には主流になると考えていましたが、そうはなりませんでした。今は主流だと言われますが、それにも同意できるか分かりません。まだ初期段階で、本当に当たり前になるまで、あと10年はかかると見ています。
それを落胆ではなく、励みに感じています。完成していたら、作るべきものは何も残っていません。道のりの大半はまだこれからで、それが何になるかは、まだ私たちの手で形作れるのです。



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