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「日本の壁は文化ではなく現地への投資量」Huobi共同創業者・杜均氏が語る規制、ステーブルコイン、アジア展開

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

この記事のポイント
  • 規制は必ず来る、杜均氏が語るRegTechの役割
  • 次の成長はステーブルコイン決済とRWA
  • 日本市場攻略の鍵は現地への本気の投資

暗号資産取引の規制を資金決済法から金融商品取引法へ移管する改正法が、2026年7月15日に可決・成立した。暗号資産が金融商品として位置付けられ、業界の金融システムへの統合が進むなか、事業者にはコンプライアンス体制の整備がこれまで以上に求められている。

Huobi(フォビ)の共同創業者である杜均(Du Jun)氏は現在、シンガポールのAIネイティブなコンプライアンスプラットフォーム「WIDTH」に軸足を置いている。規制はなぜ必ず来るのか。次の成長領域はどこにあるのか。日本市場はなぜ難しいのか。シンガポールで開催されたTOKEN2049(2026年10月7日から8日)に合わせて、CoinPostは10月9日に杜均氏に話を聞いた。

杜均(Du Jun)
WIDTH|創業者兼会長
Huobi(フォビ)共同創業者。取引所向けシステムを手がけるChainUPの共同創業者、ブロックチェーンメディア金色財経(Jinse Finance)の創業者、投資会社Vernal Capitalの創業者。2025年8月26日付で香港上場のBitfire Group Holdings(旧Sinohope Technology Holdings/新火科技、銘柄コード1611)のCEOを退任し、非執行取締役に就任した。
編集部注:WIDTHは、2014年設立のシンガポールのRegTech(レグテック、規制対応を支援するテクノロジー)企業Cynopsis Solutionsを、杜均氏が創業したVernal Capitalが買収し、それを基盤に設立された。本社はシンガポールにあり、共同創業者兼CEOはChye Kit Chionh氏、杜均氏は創業者兼会長を務める。APAC全域の金融機関、フィンテック企業、デジタル資産事業者、決済企業などの規制対象事業者を支援している。

規制が必ず来る理由

HuobiやChainUPなど取引所関連の事業から出発し、現在はRegTech企業のWIDTHに軸足を置いています。なぜこのタイミングでコンプライアンスの領域に身を投じたのでしょうか。

WIDTHは流行りの事業ではありません。無期限先物DEX(Perp DEX)や予測市場と比べれば、非常に骨の折れる仕事です。12年の歴史がある会社を買収して一から作り直しており、顧客一社との契約に3〜6カ月、長ければ1〜2年かかります。BtoBの企業は、本質的に最も旬な会社ではありません。

これまで業界で最も稼いだものには、初期の取引所であれ今日の一部のプラットフォームであれ、本質的に規制裁定(レギュラトリー・アービトラージ)の要素がありました。プロダクトのイノベーションも確かにありましたが、規制裁定の余地があったことは否定できません。

さらに重要なのは、今日では新しい暗号資産取引所も、無期限先物DEXのような分散型取引所も、規制にどう向き合うかという大きな問題に直面していることです。規模が十分に大きくなれば、必ず規制当局が対話を求めてきますし、規制の対象に組み込まれます。

2017年から2022年にかけて、業界ではいつライセンスが発行されるかが議論の中心でした。多くの地域では発行されず、絶対に出ないと言う地域もありました。一方で、日本は最も早くライセンスを発行した国の一つです。私の見方は当時から、必ず規制され、必ずライセンスが発行される、というものでした。

なぜ私は規制が来るとずっと考えてきたのか。市場規模は規制当局の関心の度合いや投入するリソースに影響しますが、それが唯一の要因ではありません。マネーロンダリング対策、投資家保護、金融安定といったリスクは常に存在します。ユーザーが増え、事業規模が拡大するにつれ、規制当局には明確で執行可能なルールを整える必要性が一層高まります。

今日の暗号資産市場は、すでに相当な規模に達しています。RWA、ステーブルコイン、伝統的な金融資産のトークン化まで考えれば、潜在的な市場はさらに大きくなります。株式市場を例にとれば、ナスダック上場企業の時価総額合計はすでに数十兆ドルに達しています。

これは伝統的な資産にオンチェーン化の大きな余地があることを示していますが、潜在的な余地を、すでに実現したトークン化市場の規模とそのまま見なすことはできません。ナスダックや香港などの市場では、株式のトークン化や取引時間の延長を模索する動きも出ています。

市場が拡大し続ければ、規制の動機も強まります。経済活動、税収、金融安定が政策上の考慮に入り、消費者保護、マネーロンダリング対策、市場の公正性も同様に重要になります。特にリテール顧客を対象とする事業では、規制当局はライセンス要件やリスク管理をより重視する傾向があります。

私たちがこの会社を立ち上げた第一の目的は、分散型であれ中央集権型であれ、取引所が規制当局と良好な対話の方法と体制を築く手助けをすることです。

オンボーディング、KYC、KYB(法人確認)、KYT(取引モニタリング)から、マネーロンダリング対策、不正対策まで、私たちの製品はすべて規制当局の言葉で当局と対話するためのものです。KYCのAPIを売るだけのRegTech企業とは大きく異なります。一式のソリューションを用意してどうすべきかを示し、場合によっては当局との対話も手伝います。

編集部注:ナスダック上場企業の時価総額合計は、2026年4月下旬時点で約45.7兆ドル。

コンプライアンスという補習

2026年6月、より成熟した資本市場では、取引所はリテール中心の証券会社のような存在になり、ライセンス、コンプライアンス、機関投資家といった資源で補習が必要になると述べていました。WIDTHは、まさにその補習を手助けしているのでしょうか。

そうありたいと思っていますが、事業者の立場からすれば、必ずしもそれを望んでいるとは限りません。無期限先物DEXのような分散型取引所は、強い規制を望むでしょうか。当局の本格的な取り締まりを受けていない段階では、制裁や法的措置の対象にもならず、うまくやっています。最優先は新規ユーザー、新たなトラフィック、新しい市場の獲得です。ですから、この段階では規制を望まず、私たちの関与も必要としていません。

私たちにできるのは、事業の初期段階からリスク識別とコンプライアンス記録の仕組みを築く手助けをし、導入コストやユーザー体験への影響をできる限り抑えることです。将来、規制当局が検査を行う際、プラットフォームはリスクを継続的に識別・評価・対処してきたことを示す証拠を出す必要があります。

たとえば、入金アドレスが制裁対象者やその他の高リスク資金に関わる場合、プラットフォームは適用法令、リスクポリシー、調査結果に基づき、制限や報告などの措置を講じるべきです。今支援している案件の多くがまさにこれで、こうした高リスクアドレスの識別を手伝っています。

たとえば数年後、ある高リスクアドレスとの間でなぜ多額の取引があったのかと当局に問われたとき、当時のスクリーニング結果、調査記録、対応の根拠を示せるでしょうか。当局が注目するのは、事業者がリスクを識別したか、合理的な措置を講じたか、そして意思決定の過程を説明できるかです。

検査で問題が指摘されれば、事業者は速やかに改善計画を立て、実効性のある措置を講じる必要があります。規制対応ソフトの導入や監査法人への依頼は改善策の一部になり得ますが、最終的に問われるのは、体制が実際に運用されているか、問題が是正されたか、記録が十分に残っているかです。システムを導入するだけで当局の寛容な対応が保証されるわけではなく、法令上のコンプライアンス義務に代わるものでもありません。

次の成長領域

暗号資産の次の段階の成長は、取引、決済、コンプライアンス・カストディのどこから来ると見ていますか。

現段階では、個人的に取引所への投資を優先することはありません。取引所は成熟しつつある金融仲介業であり、競争もますます激しくなっていると見ています。取引所ごとにビジネスモデルや収益力は大きく異なりますが、私の投資判断では、資産の発行とその関連インフラのほうが注目に値します。

今むしろ重要なのは、資産の発行です。最も重要なのは二つだと思います。

一つはステーブルコイン決済です。ステーブルコインを軸にした決済は、インフラ整備であれ、発行から流通、そして将来のアプリケーションまで、非常に重大なテーマです。ですから私たちは、ずっとステーブルコイン関連の産業を軸に投資してきました。

二つ目はRWAです。私は標準化資産と非標準化資産を区別しています。今後3年は標準化資産、つまり債券や株式のようなものです。標準化資産は非常に速く進み、チャンスも非常に大きい。これこそが1兆ドル、あるいは10兆ドル、100兆ドルの市場です。ネイティブな暗号資産プロジェクトより一般の人々に受け入れられやすく、大きな市場を獲得しやすいのです。

それ以外にも、今からプロジェクトを立ち上げたり、ミームを発行したりして小銭を稼ぐことはできるでしょう。ただ率直に言って、価値は生みません。

ブロックチェーン技術は、より多くの業界に溶け込んでいく

AIとの融合など、クリプト(暗号資産)を一つの業界として語る議論が多くあります。クリプトの今後をどう見ていますか。

今のところ、ユーザー向けのプロダクトとして、クリプトネイティブとAIネイティブが十分に成熟した代表的な形で結びついた例を、私はまだ見ていません。コンセプトは多くありますが、持続可能な応用になるかどうかは時間をかけて検証する必要があります。一方で、オンチェーンのリスク識別、コンプライアンス分析、審査の補助といった具体的な場面では、AIはすでに実用されています。これはWIDTHが取り組んでいることでもあります。長期的には、クリプトを独立した業界として括る意味は薄れ、ブロックチェーンの機能は金融やその他の業界に溶け込んでいくと考えています。

バイナンスはクリプト業界の会社か。もちろんそうとも言えます。今ステーブルコイン決済を使っているVisaはクリプト業界か。10年前、20年前なら、うちはインターネット企業ですと言えば、かなりクールで格好よかった。今はそういう紹介はほとんどしません。

クリプトはインターネットと同じで、一つの技術にすぎません。ブロックチェーンは台帳技術で、検閲耐性、公開性と透明性、改ざん不能性といった特性によって、金融分野の多くの問題を解決してきました。

今、ブロックチェーンの最良の応用シーンは決済で、最大の決済は間違いなくステーブルコイン決済です。最大のシーンは決済、資産の移転、金融、そして金融資産の権利確定です。今最も重要なのは、ステーブルコインを大きく強くし、その延長で資産の権利確定や譲渡に取り組むことです。

数十年前、銀行がそろばんを使っていたからといって「そろばん銀行」とは呼びませんでしたし、コンピューターが登場したからといって、すべての銀行を「コンピューター銀行」と呼ぶこともありません。それは一つの技術であり、融合なのです。

ブロックチェーンの最良の状態は、雨が音もなく万物を潤すように、あらゆる業界に少しずつその要素が混ざり、遺伝子の中に入り込むことです。独立した一つのカテゴリーになるのではなく、水のような存在です。

アジア展開と来日計画

法令や報告基準は地域ごとに異なります。現在、WIDTHの顧客の6割以上がシンガポール拠点とのことですが、今後、香港や日本など海外市場をどう展開していきますか。

まず、自分がどの市場をやらないかを知る必要があります。3年以内に欧米市場をやることはないでしょう。

2026年6月、初めての海外市場向けオフィスを香港に設けました。中東のオフィスはドバイに設ける予定で、当初は2026年第4四半期を計画していましたが、今はペースを少し落としており、2027年第1四半期になる見込みです。日本、台湾、マレーシアでも、兼任の営業や事業開発の担当者が市場を見てくれています。

最近は、日本、フィリピン、マレーシア、インドネシア、ベトナムの業界団体や業界サミットにも参加しています。現時点の重点は、香港が北アジア、ドバイが中東、シンガポールが東南アジアを担う体制です。

2026年12月初めに日本へ行く予定です。日本にはもともとグループのオフィスがあるので、そのときに様子を見てきます。

日本市場の難しさ

私たちが接する多くのプロジェクトが、日本市場は非常に攻略しにくいと言います。どう見ていますか。

日本市場がほかの市場に比べて少し難しいという点には、私も同意します。理由は二つあります。

一つはチームそのものです。海外展開でも何でも、経営者が身をもってその地にいなければ、なかなか事業は立ち上がりません。日本はなおさら難しい。日本の文化は相対的にローカライズを重視し、より保守的で、外から来た製品の受け入れが課題になることもあります。

しかし、これが核心だとは思いません。核心は、真剣に経営しているか、真剣に現地と結びついているかです。ヤフージャパンもうまくいっているでしょう。日本で非常に成功している国際企業はたくさんあります。

核心は、本当にその地に投資する意思があるかどうかです。投資とは金銭だけではなく、本当に現地市場と結びつくことです。現地の株主との関係があるか。現地の金融コンプライアンス方針や市場方針を現地で策定しているか。

それとも、グループのグローバルな戦い方、成熟市場での戦い方をそのまま持ち込んでいるのか。本当に100%、あるいは200%の労力、時間、コスト、注意力を注いで経営しているかどうかです。もしそうなら、世の中に特別攻略しにくい市場はないと思います。

日本は非常に成熟した資本市場です。英語圏の国や、より包容力のある国と比べれば多少の難しさはありますが、それは核心的な問題ではありません。核心的な問題は自分自身にあります。

政策や法規制であれ、ユーザーであれ、現地市場を本当に十分理解できているか。そして、自分がどんな価値を生み出したのか。ちょっと試してみるだけなら、高い確率で成功しないでしょう。

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