不祥事相次ぐDeFi市場、バブル崩壊を危ぶむ声=市場分析会社Messari CEO
バブル崩壊のサインか?
DeFiバブル崩壊へのカウントダウンは始まったのだろうか。 仮想通貨市場の調査分析を行うMessari の創設者でCEOのRyan Selkisはそう考えているようだ。
「DeFiバブルは多くの人の予想よりも早く弾けるだろう。 我々は、鼠講経済や”rug pull”(突然の背信行為)、イールド・ホッピングの絶頂期に近づいている。 そしてETHの手数料は、クジラ以外の利益に大きく食い込む事になる。」
DeFi市場で相次ぐ詐欺事件
今年に入り、急激に成長し活況を呈するDeFi市場だが、ここにきて出口詐欺が相次いで報道されている。
昨日、中国系ブロックチェーン・セキュリティ企業2社が、流動性マイニングが可能なDeFiプラットフォーム「Emerald Mine (EMD) 」には、出口詐欺の可能性があると警告した。
プロジェクト関係者により、スマートコントラクトに預け入れられた顧客資産が引き出され、仮想通貨の交換が可能なプラットフォームに移動していると、ブロックチェーン監査会社SlowMistが指摘。ユーザーに対しEMDへの預け入れを停止するよう注意を促した。なお関係者の身元は不明だという。
また、移動した資金の内訳が、78.7万USDTと49万EOSを主とする総額250万ドル相当(約2億6000万円)に上ることをセキュリティ企業PeckShieldが発表している。
さらに、流動性マイニングを行うDeFiプロジェクト「Yfdexf.Finance」が、プロトコルにロックされた資金2000万ドル(約21億円)を横領し、市場から姿を消したことがわかった。仮想通貨メディアのZyCryptoが報道した。
Yfdexf.Financeは、ツイッターやDiscordなどのプラットフォームを通じて、プロジェクトを宣伝するともに、リツイートやハッシュタグに対して景品のプレゼントなどを謳った大々的な広告キャンペーンを2日間にわたり行なっていたという。
しかし、現在、公式ウェブサイトをはじめ、Mediumの投稿、ツイッターならびにTelegramのアカウントは既に削除されている。
ツイッターで3万人以上のフォロワーを持つトレーダーの「CryptoWhale」は、「99.99%のDeFiトークンは詐欺だ」と主張している。
DeFiとの賢い付き合い方
「DeFiはインサイダーや雇われ人の周りで、水しぶきを上げながら流れている、一つの大きな資本プールに過ぎない。程なく、金を巻き上げる犠牲者を使い果たしてしまうだろう。」前出のSelkisは、このように述べ、あまりにもうまい話には気をつけるようにと忠告した。
その上で、DeFiと付き合う最も良い方法は、いくつかの優良プロジェクトに投資したあと、3〜5年は放置しておくことだろうとアドバイスした。
一方で「DeFiの実験」は大変気に入っており、 ICO同様、イールドファーミングやインセンティブ付きの流動性の提供方法は、資本形成における斬新なイノベーションだと、Selkisは述べている。ただし「賢い人々は大儲けしているが、ほとんどの人にはお勧めしない」と付け加えた。
DeFiバブルはいつまで続くのか
熱狂的なDeFi市場への資金流入は、ICOバブルと対比されることが多いが、仮想通貨の大手格付け企業Weiss Crypto Ratingは、未だバブルの頂点には達していないという考えのようだ。
米仮想通貨取引所最大手のコインベースProは、新たにDeFi関連銘柄YFIとLRCの上場を発表した。コインベースは、今年4月、DeFiプラットフォームUniswapとPoolTogetherに約1億2000万円を投資するなど、積極的にDeFi市場の成長をサポートするとともに、数々のDeFi銘柄の新規上場を実施してきた。
また、中華圏で人気の高い仮想通貨トロン(TRX)が、独自DEX「JustSwap」を8月中旬にローンチしたのをはじめ、世界最大手の取引所バイナンスでも、JustSwapの独自トークンJSTをはじめとする複数のDeFi関連銘柄を相次いで上場させている。そのため、中国・中華圏の仮想通貨コミュニティではDeFiブームが到来したばかりとの見解も見られる。
ドラマチックな展開を見せたDeFiプロジェクト、「SushiSwap」の創設者離脱事件も、ここにきて、Uniswapの流動性プールからの正式移転も完了し、再生事業が進展を見せるなど、DeFiの信頼回復につながると期待されている。
数々のDeFiプロジェクトの正当性が真に試される本番は、これからかもしれない。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します