ビットコインに主役交代か──オプション市場データが示唆
ビットコインに主役交代か
ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)のインプライド・ボラティリティ(IV)の差が減少している。
直近2カ月間で最も低い水準となっており、最近はDeFi(分散型金融)の隆盛に合わせてETHの人気が高まっていたが、市場は再びBTCに注目している可能性がある。
IVは将来の価格変動率を予測した数値。「予想変動率」とも呼ばれ、現在のオプション取引を基に逆算する数値で、市場の人気や期待を反映するとされている。IVが高いとオプションの買い需要が多く、低いとオプションの売り需要が多いと判断できる。
以下は暗号資産(仮想通貨)市場のデータ分析を行うSkewのグラフ。BTCとETHの6カ月間のIVの差を表している。9月29日時点の差は4.9%となっており、今月1日の21%から大きく下がった。IVの差の減少はBTCかETHに偏ることなく、短期的には両銘柄が共に取引されると市場参加者が予想していることを示唆している。
DeFiの活況に合わせてIVの差は7月に0.1%から14%まで上昇し、8月18日には21%に到達。DeFi関連銘柄の価格にも急騰が見られ、ETHのオプション取引における需要がBTCを上回り、IVの差にも反映されていた。
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SkewのCEOは、「この変化は、数カ月続いたイーサリアム関連銘柄の人気から、市場のリーダーシップがBTCに戻ることを示唆しているかもしれない」との見解を示している。
新型コロナウイルス感染拡大に対する前例のない規模の経済対策によって米ドルの価値が希釈しているとの見立てから、BTCの資産価値が相対的に高まっているとされている。11月3日の米大統領選に向けて、ドルインデックスの動きも注目されている。
今回の大統領選では、世論調査の結果などからジョー・バイデン候補が有利とみられており、米国第一主義のトランプ現大統領からの政策転換の影響で、相場の不確実性が高まる可能性が指摘される。バイデン候補は今回の選挙で、富裕層を対象にした資産売却益の税率の引き上げを経済政策の1つに掲げた。
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BTCとETHの相関性
IVの差の低下を裏付けるように、現在はBTCとETHの価格の相関性も高まっている。その関係を表したのが以下のグラフだ。1カ月の相関性を表すライン(青)は7月21日の96%から一時51%まで下がったが、9月28日時点では82%まで上昇している。
100%が相関係数の1.0に当たり、現在は0.82で、強い相関がある水準まで上昇。相関性もETHへの偏りが減少していることを示唆している。
相関係数 | 相関の強さ |
---|---|
0.0~±0.2 | (ほとんど)相関がない |
±0.2~±0.4 | 弱い相関がある |
±0.4~±0.7 | 相関がある |
±0.7~±0.9 | 強い相関がある |
±0.9~±1.0 | (ほぼ)完全な相関がある |
一方最近では、BTCもDeFiでの需要が高まっている。トークン化されたBTCという新しい仮想通貨の形態が人気で、こうしたトークンの発行総額は約11億ドル(約1160億円)に達したことが分かった。
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