米下院 ステーブルコイン草案の公聴会開催

ゼロからのスタート

米国下院金融サービス委員会(FSC)は19日、ステーブルコインの法制化に関する公聴会を開催し、五人の証言者から専門的な意見を聞いた。この公聴会に先立ち、同委員会はステーブルコイン法案の草案を公開していた。

15日に公開された草案は、昨年、民主党のマキシン・ウォーターズ議員(当時のFSC委員長)と共和党のパトリック・マクヘンリー議員(現FSC委員長)によって超党派で執筆されたものと同じ内容だという。

昨年のFSCによるステーブルコイン法案作成の取り組みは、財務省も関与し、委員会のトップメンバー間でも重要なポイントで合意が得られていたため、法案提出に向けて、最も有望視されて動きだった。しかし、最終的に提出には至らず、その後、両党間で実質的な話し合いは持たれていなかった。

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ウォーターズ議員は、この草案は共同作業ではあったが、監督責任の所在問題(州vs連邦政府)をはじめ、草案における意見の相違をめぐって交渉は完了していないと指摘。起草後、 FTXの破綻など「多くのことが起こった」と述べ、草案は「完成品」を表すものではなく、「ステーブルコインに関してはゼロからスタート」との考えを示した。

民主党のスティーブン・リンチ議員は、「ステーブルコインが必要なのかどうか」を疑ってかかるべきであり、FTXの崩壊から学んだ教訓を反映していない共和党がリリースした草案は「時代遅れ」だと批判した。

一方、共和党のフレンチ・ヒル議員は、両陣営が、専門家の意見を聞き、議論することが公聴会の趣旨であると指摘。マクヘンリー委員長は、ステーブルコインに関する連邦レベルでの法案の必要性は明らかであると、以下のように述べた。

国際的にも国内的にも大切なことであり、法律制定の有用性と重要性について、超党派で理解を得ることが非常に重要だ

法制化の必要性

草案の内容について両党で意見の相違はあるが、暗号資産(仮想通貨)規制に関しては、連邦レベルで空白があることは明らかであり、ウォーターズ氏は、たとえ振り出しから始めることになろうとも、その空白を埋める必要性については認めている。

また、ステーブルコインが「証券か商品か」という定義をめぐる論争からは外れる可能性が高いこと、米国の決済システムを進化させる可能性があることについては、超党派で意見の一致を見た。

証言を行ったブロックチェーン協会の最高政策責任者であるJake Chervinsky氏は、現在の米国の金融システムには問題があると、次のように述べた。

(金融システムは)前世紀のアナログ時代から抜け出せず、デジタル時代に歩調を合わせることに失敗した時代遅れのインフラのゲートキーパーや仲介業者によって制約を受けている

同氏は、基軸通貨としての米ドルの地位の低下に関する懸念が高まる中、適切な政策下で「ステーブルコインが決済システムに革命をもたらす」可能性を指摘。「米ドルの優位性を強化することができる」と主張した。

草案について

草案には以下のような点が含まれている。

  • 「決済用ステーブルコインの発行者」の定義を設定
  • 発行者は、州もしくは連邦政府から認可を受けた事業者(銀行またはノンバンク)
  • ユーザーからの換金要請には1日以内に対応する
  • ステーブルコイン発行のライセンス申請は州レベルか連邦レベルの規制当局が対応
  • 規制当局は45日以内に申請者の必要な情報を確認し、90日以内に決定を下す
  • 規制当局が決定を下さない場合、申請は自動的に承認される
  • 規制当局は申請書を掲示し、パブリックコメントを求める

ステーブルコイン発行企業には、「少なくとも1:1で、決済用ステーブルコインの残高を裏付ける準備金を維持する」ことが求められる。準備金として有効とされるのは、米国の硬貨及び通貨、満期が90日以内の財務省証券、中央銀行の準備預金、満期が90日以内の財務省証券を裏付けとする満期が7日以内のレポ取引契約など。

発行企業がライセンスを取得しない場合は、1日あたり約1,340万円(10万ドル)の罰金を課される可能性があるという。

仮想通貨を裏付け資産とするステーブルコインに関しては、2年間のモラトリアムを設け、この期間中に財務長官、証券取引委員会、通貨監督庁、連邦預金保険公社、連邦準備制度理事会が、この種のステーブルコインを調査し、法案通過後1年以内に報告書を提出する。

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用
「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します

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