AI開発と著作権問題、基準を明示した文科大臣答弁が話題に

著作権問題に日本が先鞭をつける

生成AIと著作権について、日本の永岡桂子文部科学大臣の答弁が海外でも注目を集めている。生成AIの開発・学習段階で用いられるデータ利用については、著作権を問わず利用が可能だとの判断が行政トップから示されたことで、日本がAIの著作権問題で先鞭をつけたとして、話題になった。

日本は機械学習の楽園になった。

米メタ社の主任AI科学者である ヤーン・ルカン氏はこのようにツイート。著作権に関して「推進する原理は、公益の最大化であり、コンテンツ所有者の権力の最大化ではない」と述べた。

永岡文科大臣は4月24日、衆議院決算行政監視委員会第二分科会で、情報解析のためのさまざまなコンテンツの利用について、城井崇衆議院議員から提起された以下の質問に答えた。

非営利目的でのものも、営利目的のものも、複製以外の行為のものも、そして違法サイトなどから取得したコンテンツも、日本の法律の下では情報解析のための作品利用をしてよいと法律で認めているという、この理解でよろしいか

永岡氏は、「著作権法の第30条の4により、著作物に表現されている思想又は感情の享受を目的としない利用である場合においては利用することが可能」であると回答。非営利、営利を問わず利用は可能で、複製以外の利用についても、要件を満たす場合には利用も可能であるとしている。

違法サイトから取得したコンテンツについては、違法アップロードされた著作物が利用できる状況が問題であり、違法アップロード行為については、著作権侵害として損害賠償請求、差止め請求や、刑事罰を受けることになると注意を喚起した。

しかし、インターネット上の著作物を情報解析に用いる場合、その適法性を確認することは現実的には困難であり、要件とした場合はビッグデータを用いた情報解析が困難になると指摘。また、「情報解析のために著作物を利用する行為」は、「著作物に表現されている思想又は感情の享受を目的としない」ため、著作権法で保護された著作権者の利害を害することはないとの判断を示し、「著作物が適法なものであることは要件とされない」と述べた。

つまり、違法サイトなどから取得したコンテンツでも、情報解析のための作品利用は可能だとの判断が下されたわけだ。

ただし、永岡氏は著作権法の第30条の4では、著作物の利用を「必要と認められる限度に限る」とともに、「著作権者の利害を不当に害する場合」には適用されないと定められていることを強調した。

文化庁による指針

内閣府は5月30日、「AIと著作権の関係等について」と題した資料を公開した。この資料は文化庁が作成し、5月15日に開催された内閣府のAI戦略チーム会議で使用されたもので、政府の見解が示されている。

政府資料「AIと著作権」

資料では、「思想又は感情を創作的に表現した」著作物を保護するのが著作権であり、「単なるデータ(事実)やアイデア(作風・画風など)は含まれない」と指摘した。

そして、AIと著作権の関係については、「AI開発・学習段階」と「生成・利用段階」では、著作権法の適用条文が異なるため、二つの段階は分けて考えることが必要だとしている。

AIの開発および学習段階における著作物の利用については、上記の永岡大臣の答弁内容を踏襲したものとなっている。

一方、生成・利用段階では、AIを利用して生成した画像等の発表や複製物の販売についての著作権侵害の判断は、通常の著作権侵害と同様の扱いを受ける。

AIで生成された画像と既存の著作物との類似性や依拠性が認められた場合、著作権者は著作権侵害として損害賠償請求や差止請求が可能であり、刑事罰の対象にもなるという。

文化庁は、AIと著作権の関係を中心に解説する著作権セミナーを6月19日に開催すると告知した。YouTubeのライブ配信によるセミナーで、誰でも参加可能。6月16日まで文化庁ホームページで申し込みを受け付けている。

文科省セミナー

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