現実資産(RWA)トークン化が暗号資産市場に及ぼすインパクトとは|WebXレポート
モノのトークン化:RWAトークン
7月25日、WebXカンファレンス(WebX実行委員会主催、Coinpost協力)にて、「モノのトークン化:RWAトークンが暗号資産市場の次のステップか?」というテーマでのパネルディスカッションが開催された。
このセッションには、Hyperledger Foundationのバルボサ・ダニエラ エグゼクティブディレクターや、DigiFTのジャン・ヘンリー CEO、Supraのトブキン・ジョシュア共同創設者でCEO、Klaytn Foundationの戦略・運用部門のバイスプレジデント EZ氏が参加。モデレーターをWu Blockchainの創設者、ウー・コリン氏が務めた。
アセット・トークナイゼーションの課題
近年、現実世界資産(RWA)のトークン化が加速する中、ブロックチェーン技術のグローバル金融インフラとしての立ち位置が強化されている。ボストン・コンサルティング・グループによれば、2030年までに現実資産のトークン化市場は数兆ドルの市場規模に達する可能性がある。
バルボサ ダニエラ氏は、未公開株式市場が公開株式市場の4倍の規模に成長するとのシティバンクの分析を根拠に、企業や政府機関はトークン化された資産の統合に前向きになっており、効率性とアクセス性の向上がその主な利点だと指摘している。
ジャン・ヘンリー氏によれば、 アセット・トークナイゼーションやセキュリティ・トークンとしても知られるRWAは、新しい概念ではない。RWAが表す莫大な基礎資産に多くの人がその可能性を期待してきたが、完全な実装には至っていない。
その主な理由は、トークン化の総コストが高いことにある。ZE氏によれば、実際の資産をパブリック・ブロックチェーンにオンボードする場合、適切な会計処理や税務対応など、多くの要因を考慮しなければならない。これらの課題を解決することは、多くの専門家にとって頭痛の種、あるいは「頭を悩ます事態」と評されている。
ウー・コリン氏は、現実資産トークナイゼーションコストについて、MakerDAOのプロセスを分析したDigiFTのリサーチを紹介した。
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トークン化現実資産のポテンシャル
しかしながら、最近では、国庫短期証券(T-Bills)やプライベートクレジットといった特定の分野でトークン化の取り組みが注目されている。
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トブキン・ジョシュア氏は、国庫証券のトークン化などがDeFiエコシステムに流動性をもたらす可能性があると話す。例えば、利回り5%の国庫証券をトークン化して、ステーブルコインを発行するための裏付けとして活用する。これは、安全で安定した原資産を維持しながら、より良い金利獲得機会を分散環境で創出する。
最大のステーブルコイン発行事業者であるテザー社のビジネスモデルがまさにそれであり、トークン化された資産を担保にステーブルコインを発行し、KYC(本人確認)やAML(マネロン対策)規制を遵守しながら、機関投資家に貸し出すという戦略は、テザーを支えるビジネスモデルの1つ。このモデルは大きな収益性を秘めているとジョシュア氏は語った。
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RWA普及の触媒
RWA(現実世界資産)のトークン化が進行する中、さらなる普及の拡大には3つの主要な媒介が必要になると議論された。
1. デジタルマネーの進化: CBDCやステーブルコインといったデジタル通貨の普及が現実資産のトークン化を自然な流れとして促進する。
2. ブロックチェーン技術の発展: 基盤技術の進化により、取引の効率、安全性、そして費用対効果が大幅に向上し、さらなる普及のきっかけとなる。
3. 規制の役割: 規制は、イノベーションの進展に遅れがちだが、その明確な方針はトークン資産の信頼性と成長を促進する上で極めて重要である。
Hyperledger Foundationのバルボサ ダニエラ氏によれば、オープンソースコミュニティはすでにスケーラブルな分散型台帳技術を持っており、この技術に精通したエンジニアも既に数多く存在している。同氏は企業が最も重視すべきはプライバシー保護であるとも強調している。
さらに、現実世界のトークン化された資産の信頼性を向上させるための戦略として、各地域で評判の高い引受業者を複数利用する重要性、および規制のアービトラージについての議論がなされた。
例えば、ブラックロックなどの大手金融機関が国庫短期証券をトークン化し、米国政府が禁止措置をとったとしても、様々な地域に資産の引受先が存在することで、グローバルな視点で資産の価値と信頼が維持される。
ジョシュア氏は、これは規制の迂回ではなく、国際的な信頼とアクセシビリティを最大化するための手法として強調した。
登壇者企業概要
Hyperledger Foundationは、企業がオープンソースのコードベースを使って、アセット・トークナイゼーションを含むビジネスを構築する基盤を提供している。
Kraytonは、そのブロックチェーン上で、電子商取引、不動産担保ローン、金担保トークンなど、現実世界の資産を中心に資産の種類を多様化している。EZ氏は、RWA(現実資産)のトークン化イニシアチブを主導している。
DigiFTはセキュリティ・トークンの規制取引所として位置づけられ、コンプライアンスを遵守することの重要性を強調している。
Supraは現実世界のデータとブロックチェーンを橋渡しするオラクルプロバイダー。信頼性の高いオンチェーン価格データを提供するサービスのほか、分散鍵生成スキームにも取り組んでいる。
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