大手コンサルEY、AI技術に2000億円投資
新たなAI搭載プラットフォーム
世界四大会計事務所の1つであるアーンスト・アンド・ヤング(以下、EY)は13日、人工知能(AI)に約2,000億円(14億ドル)を投資し、顧客のAI導入を支援する統合プラットフォーム「EY.ai」の立ち上げを発表した。
1年半かけて開発されたEY.aiは、「人間の能力とAIを統合する」プラットフォームで、EYの「豊富なビジネス経験」と、AI機能の搭載されたEYテクノロジープラットフォームを融合するものだ。
14億ドルの投資によって、EY独自のテクノロジープラットフォームである「EY Fabric」へのAI導入や、クラウド及び自動化技術をサポートする一連の買収が実現し、EY.aiの基盤が形成されたという。EYによると、EY Fabricは既に6万社の企業で利用されている。
EYグローバル会長兼CEOのカーマイン・ディ・シビオ氏は、「今がAIの重要な節目だ。どの企業もAIをどのように業務に組み込むのか、将来への影響を検討している」と述べた。
AIエコシステムの構築
EY.aiは、「AIのビジネス、技術、学術的能力を網羅するAIエコシステムを結集する」ものであり、このエコシステムには以下のような先端企業との戦略的な提携が含まれているという。
- マイクロソフト:GPT-3やGPT-4など、Azure OpenAI機能への早期アクセスを提供
- デル・テクノロジー:大規模言語モデル(LLM)によって生成AIの導入を簡素化する「Dell Generative AI Solutions」に共同投資
- トムソン・ロイター:税務、法律、国際貿易、ESGサービスにわたるコンテンツと見識を組み合わせることで、AIを活用した新たなソリューションとサービスを共同開発
EYのグローバル常務パートナーのアンディ・ボルドウィン氏は、EY.aiはデータおよびAI専門家による協業的な取り組みであることを強調。「EYアライアンス・エコシステムは、今日利用可能な最先端のテクノロジーとインフラそして技能を結びつける極めて重要な役割を果たすものだ」と述べた。
3月にマイクロソフトと共同で試験運用された「EYインテリジェント給与チャットボット」は、EY.aiのAIソリューションの一例で、雇用主の負担を50%以上軽減することが見込まれているという。このボットは、従業員の給与計算に関する複雑な質問に答えるなど、個々の従業員の設定に合わせることが可能だ。
人材の育成
EYは、同社内でAIの知識とスキルを備えた人材育成にも熱心なようだ。
EYは2018年に、「広範なAI、データ、分析論」に関する包括的な学習プログラムを導入し、これまでに10万以上の資格が授与されたという。
同社は、4,200名の技術チームメンバーによる初期パイロットプログラムを経て「EY.ai EYQ」というLLMをリリースする予定だ。
また、社員向けに独自のAI学習と開発プログラムを展開しており、ビジネスメディア「Insider」によると、先週の時点で既に5,000人の従業員が研修を開始。最終的に全従業員40万人を対象に研修を実施する予定だという。
相次ぐAIへの投資
他の世界四大会計事務所によるAI投資も盛んだ。
PwC US(プライス・ウォーターハウス・クーパース)は4月、AI製品の規模拡大と、顧客による生成AIを活用したビジネス構築支援のため、今後3年間で1,470億円相当(10億ドル)を投資する計画を発表した。
KPMGは7月、マイクロソフトとの提携拡大を通じて、世界の事業分野にわたるAIとクラウドサービスに今後5年間で、2,950億円相当(20億ドル)の投資を行うと発表した。デロイト・トウシュ・トーマツは昨年12月、AIを含む従業員の技術訓練に約2,000億円(14億ドル)を拠出すると述べた。
四大会計事務所以外では、大手コンサル企業アクセンチュアが6月に、今後3年間でAIおよびデータに約4,420億円(30億ドル)を投資すると発表している。
8月には、米ニューヨークを拠点とするAI企業Hugging Face(ハギングフェイス)が、グーグル、アマゾン、エヌビディア、インテル、IBM、クアルコムなど、名だたるテクノロジー企業が参加したシリーズD投資ラウンドで、約346億円(2億3,500万ドル)を調達した。ハギングフェイスは、AI開発者がコード、モデル、データセットを共有できるプラットフォームで、評価額は約6,630億円(45億ドル)とされている。
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