OpenAIを突如解任されたサム・アルトマン元CEO、復帰ならず後任決定か=報道

経営問題が各所に飛び火

対話型人工知能(AI)「ChatGPT」を開発した米OpenAIのサム・アルトマンCEOの解任劇から1日も経たないうちに、同氏の復帰が画策していることが明らかになった。

サム・アルトマンCEOの経営方針を巡り、「(技術的な側面から)安全性に十分な配慮しないまま事業を急拡大している」とする取締役会メンバーと深刻な対立を招いていたとされる。

またこの件に関連し、サム・アルトマン氏が携わる暗号資産のWorldcoin(WLD)価格が一時乱高下する場面もあった。

WLD/USD(Messari)

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ロイターは関係筋の話として、アルトマン氏はCEO復帰の可能性について18日に取締役会と協議の場を持ち、OpenAIのガバナンス構造の改善について協議したと伝えた。

また、テクノロジーメディアのThe Vergeによると同日、アルトマン氏解任直後に辞任したグレッグ・ブロックマン社長の復帰容認と現取締役の辞任で大筋合意がなされたものの、ガバナンス(企業統治)の変更など交渉がまとまらず、協議が難航しているなどと伝えた。

相次ぐ辞任と主要投資家の反応

先述の通り、アルトマン氏の解任を知り、OpenAIの社長で元取締役会の会長であったグレッグ・ブロックマン氏は辞任を表明。また、アルトマン氏への処遇に抗議して3人の上級AI研究員を含む多くの従業員がOpenAIを去る事態に発展した。

事前通告もなく、生成AIの顔とも言えるアルトマン氏を突如解任し混乱をもたらしたことについて、取締役会は投資家(ステークホルダー)からも大きな批判を浴びている。

OpenAIに複数年で100億ドル(1兆3000億円)以上を投資するとしていた筆頭株主のIT大手マイクロソフトは、OpenAIとの提携によりBing検索エンジンを再活性化させ、クラウドコンピューティングのいくつかの分野では競合他社のグーグルやアマゾンを追い抜く勢いを見せていた。

しかし、ブルームバーグの報道によれば、OpenAIの取締役会はマイクロソフトのサティア・ナデラCEOに相談することなく、重要なビジネスパートナーの解雇に及んでおり、サティア・ナデラCEOは「不意打ちを食らった」と激怒した。

また、従業員持株の一部買付を予定していたベンチャーキャピタルの米スライブ・キャピタルやOpenAIに出資するセコイアキャピタルは、アルトマン氏とブロックマン氏の復帰を促すようOpenAIの取締役会に圧力をかけ、ガバナンス体制の見直しを模索していると伝えられている。

しかしその後、The Wall Street Journalの報道によれば、取締役会は投資家の要求を呑まず、アルトマン氏のOpenAI復帰を拒否し、ゲーム配信プラットフォーム「Twitch」の共同創業者でTwitchの元CEOを務めたエメット・シア氏を新たな暫定CEOとして迎え入れるという。

Twitchは14年9月、米Amazonがコンテンツ配信の強化を図るため、9億7000万ドルで買収している。

新たなスタートアップ設立か

ステークホルダーが危機感を覚える背景には、OpenAIの創業者であるアルトマン氏退任の影響で内部分裂における会社の求心力低下は免れず、対抗組織設立となればシェアを失う可能性も高いからだ。

ロイターの報道によると、アルトマン氏らはすでに新たなAIベンチャーの設立を画策しており、ブルックマン氏とともに、OpenAIの主要研究者及びアルトマン氏を支持する研究者らと協議を進めている。

WuBlockchainによれば、アルトマン氏はOpenAI取締役会から解雇される数週間前に、Nvidiaと競合するAI(人工知能)特化型の開発会社設立のため、数十億ドルを調達していた。

OpenAIの初期支援者であるKhosla Venturesの創設者であるVinod Khosla氏は、アルトマン氏のOpenAIへの復帰を望む一方で、新たな動きがあれば支援すると表明したほか、マイクロソフトもアルトマン氏がOpenAI社に復帰できなかった場合、新設予定のベンチャー企業への投資検討を示唆している。

生成AI分野で大きな存在感と影響力を持つアルトマン氏の解任劇について、1995年のApple社によるスティーブ・ジョブズ氏の解任に準える向きもある。 その11年後、低迷するApple社に呼び戻されたジョブズ氏は、Appleを世界のトップ企業にまで押し上げることとなった。

イーロン・マスクは取締役を支持

一方、出資者の一人としてアルトマン氏とともに2015年のOpenAI共同創設に関与し、その後同社を離れたイーロン・マスク氏は、OpenAIの現取締役であり、アルトマン氏による性急なAI技術開発に異論を唱えるチーフ・サイエンティストのイリヤ・サツキバー氏の意思決定を支持しているようだ。

とても心配している。イリヤは優れた倫理感を持っており、権力を求めない。 相当な事情がない限り、思い切った行動に出ることはなかっただろう。

今回のアルトマン氏の突然の解任劇では、資金調達やビジネスの急拡大に重きを置く同氏と、AIが人類にもたらす長期的な影響を懸念するサツキバー氏らとの間で、会社の経営方針を巡る方向性の違いが決定的な決裂につながったとみる向きがある。

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