ビットコイン価格急落の要因|米国初の未登録仮想通貨取引所への法執行事例による今後の影響は?

米SECが未登録証券取引所に対する法執行事例が与える影響
ビットコイン価格は9日未明、米ドル建ての取引が先行し急落、その要因に挙げられているのが、米国初の未登録仮想通貨取引所への法執行事例だ。今回はその問題の重要性と、法律家を含む専門家の意見を引用し、今後仮想通貨業界への影響を考察した。

米SECが未登録証券取引所の疑いで分散型取引所創設者を起訴

米証券取引委員会は、分散型取引所であるEtherDeltaの創設者であるZachary Coburn氏を未登録の証券取引所を運営した疑いで起訴、4400万円相当の罰金を課した。

一見ただの起訴された事件であると思われがちだが、ブロックチェーン管理の分散型取引所にまで規制の手が伸びた点や、初の未登録取引所の取り締まりに動いた点、また取り扱うERC20トークンを有価証券として問題視した点という、世界の規制を先導する米国SECの今後の動きを見る上で極めて重要な事件となる。

米証券取引委員会が日本時間9日未明、DEXであるEtherDeltaの創設者であるZachary Coburn氏を未登録の証券取引所を運営した疑いで起訴し、約4400万円の罰金を課した。このような事例は仮想通貨取引所では初めてとなった。

ビットコイン価格の下落要因に

このニュースを受け、今後のICOトークンの取扱や、規制網をくぐり抜けると考えられていた分散型取引所の今後の動きに懸念感が広がり、ビットコイン相場にも影響を及ぼした。

上に掲載したチャートでの青の縦線2本は、一本目が速報をツイッターで報じたCoinDeskの内容が公開された時点(SEC公式文書掲載)。

二本目がSECが公式ツイッターにて、声明を発表した時点。

チャートが示す様に、米国CoinbaseのBTC/USDはこのファンダメンタルを受け、急落した様子が見受けられている。

チャート内比較として掲載したbitFlyerのBTC/JPY(肌色)は、米国のチャートに遅れて反応しており、英語で報道されたこのニュースが相場に影響を与えたのは明白だ。

また、この当時右肩上がりに引かれた水色のサポートラインに沿った動きをしていたビットコイン価格は、悪材料によってトレンド割れを記録した事で、下落の勢いが強まったと考えられる。

今回の事件の専門家の見解を追った

SECのEtherDeltaに対する告訴および結果に関して、複数の専門家の見解を取り上げていく。

まず、仮想通貨界隈のコメンテーターとして業界からの信頼が置かれている米弁護士Jake Chervinsky氏の見解から見ていこうと思う。

米弁護士Jake Chervinsky氏の見解

Chervinsky氏はまず、対象となった分散型取引所EtherDeltaの「性質」を以下のように解説した。

EtherDeltaは、イーサリアムブロックチェーン上のスマートコントラクトではあるが、SECは、証券の売買を行うユーザーが集まったので、これを法律上では、(一般のものと同様に)『取引所』と見なしている。

つまり、SECの判断基準は、今後スマートコントラクトによるトークン売買にも及ぶ可能性を指摘した。

また、Chervinsky氏は、今年の3月にSECが複数のICOキャンペーンに対する調査を行なっていると発表したことを理由に、この様な調査して処分が下される流れは続く可能性も十分にあると見ている。

そして、SECは依然、どのERC20トークンが証券に当たるか明言しない姿勢踏まえると、DAOトークンが証券としてみなされた報告書を基準にした上で、ICOはすべて『証券』に該当しうるとChervinsky氏は考えている。

ウォレットBlockchain CEO 法律アドバイザーも務めるMarco Santori氏の見解

人気仮想通貨ウォレットBlockchainの社長兼「米国デラウェア州公認の国際通貨基金(IMF)のブロックチェーンアンバサダーおよび法律アドバイザーを務めるMarco Santori氏がツイッターに掲載した詳しい解説を推薦しているため、

Santori氏は、この告訴と罰金命令は取引所EtherDeltaに対してでなく、創立者兼オーナーのCoburn氏であったことを指摘。

すでにCoburn氏はすでに非米国下の法人へ取引所を売却しており、非米国下の法人化でEtherDeltaが現在も運営中しているようだ。

要するに、取り締まりの対象となったEtherDeltaは、現在米国管轄外で運営されていることになる。

そして、約4400万円という罰金に関しても、個人では相当な金額だったと指摘した。

この金額に至った理由として、SECは、同取引所のユーザーが過去18ヶ月計360万回の取引を行なったと指摘したものの、Santori氏が注目するところは、その取引数の中に、有価証券に該当する通貨は一体どれほどあったのかという点だ。

SECが見るERC20トークンの取引は証券取引なのか

SECは、その極めて多くの取引で、どのERC20トークンの取引が有価証券に該当するかは、具体的な例としてまったく取り上げておらず、単純に「ほとんど」という曖昧な言葉しか言及していなかったと指摘。

唯一の判断基準として、SECは2017年のDAO報告書を取り上げ、「有価証券と思われるいくつかのDAOトークン(ERC20トークン)が取引された」としており、Santori氏は、この案件が仮想通貨市場に与える影響とその意味に関して、以下の様に説明した。

分散型取引所(DEX)は、(米国で)証券法を回避する良い手段ではない ことがわかった。米国の金融サービス関連法のどれよりも、その定義が定めにくい。

なお、現在、証券法や仲介業者関連規制に該当しないDEXは、思いつかない。

ICOによるトークンが証券に該当するかどうかは明確にしていないが、今週SECの企業金融部長が今後発表すると明言した『仮想通貨ICOガイダンス』を待てば、いずれは明らかにするだろう。

要するに、証券法に違反することで、米国内の法律に則った取引所での取引が停止される可能性があったが、分散型取引所はこの回避手段としても注目されており、国の法律に左右されない存在としても注目を集めていた。

米NYU大学Drew Hinkes教授の見解

さらに、米NYU大学Drew Hinkes教授も、「びっくりするのは、2017のDAO報告書を公開してから、一年以上もかかって、取り締まりを行なったことだ。重要なのは、どのトークンが『有価証券』かどうかだという。

DEXは、通常の中央集権的取引所(CoinbaseやBinance)と違い、運営側がトークンを保管することが無く、より高いセキュリティ性とERC20の豊富な種類で人気を博しているものの、SECの今回の法的手段からすると、仮想通貨ICOガイダンスと持ち合わせて、今後もこの様な取り締まり、もしくはトークン発行側対して直接に法的手段を講じる事が考えられるだろう。

DEXも規制から逃れられないか

IDEXというDEX界隈では最も取引高の高い分散型取引所は、先日ニューヨークのユーザーからのアクセスを停止すると旨を自社の報告で明らかにした。

理由としては、ニューヨークのBitlicenseという仮想通貨業者の認可を持っていないとされ、DEXの「分散性」が問われることを挙げている。

要するに、「分散型」と称していても、地方法律や、国の規制に沿わなければならない状況となりつつあるのが今後の業界の懸念ではないと考えらており、ERC20トークンが有価証券に該当した場合、プロジェクト側、投資家、そして取引所にも大きな衝撃を与える事が懸念される状況にあるということだ。

仮想通貨取引所の規制を逃れると考えられていた分散型取引所が規制対象となりうる可能性が浮上したことで、仮想通貨市場の出来高や動きにも制限がかかる懸念があり、投資家の中では、悪材料として捉える動きが加速した。

この事例を受け、今後SECの動きや業界の対応がどの様に動くかは注目すべき内容であると言えるだろう。

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