国際マネロン対策機関が仮想通貨取引所の顧客情報提出の義務化を提案|有名ブロックチェーン企業が異議を唱える
- ブロックチェーン分析企業がFATFに異議
- ブロックチェーン分析企業ChainalysisはFATFの提案に、かえって不正を行われる環境が生まれる可能性を指摘。モニタリング・システムの利用を推薦。
ブロックチェーン分析企業がFATFに異議
ブロックチェーン分析企業Chainalysisは、マネーロンダリングを監視する金融活動作業部会(FATF)に対して、仮想通貨交換所のKYC(本人確認)に関する情報提供の義務化に反対する旨を綴った文書を公表した。
今年2月にFATAは、仮想通貨取引所のような暗号資産サービスプロバイダー(VASP)に対して、顧客の取引記録や利益に関する情報の規制当局への受け渡しの義務化を提案していた。それに対して、同社は反論したスタンスを示している。
その批判理由について、公表された文書内で以下のように述べている。
テロ資金などに対抗し、アンチマネーロンダリングが向上した結果、却って、もともとリスクの高かった機関やサービス、企業などがより大きなリスクにさらされることになる。
このリスク増大の影響は大きく、KYCを設けない取引所はコンプライアンス問題で既存の規制が整った金融サービス(銀行や保険)にアクセスする手段が絶たれ、アンダーグラウンドなバンキングシステムへと変貌してしまう。
またリスク増大の結果として、仮想通貨のエコシステムに悪影響を与えるだろう。
ここでいうアンダーグラウンドなバンキングシステムとは、P2P型の分散型取引所など現在主流のものとは異なるプラットフォームを指す。過度な規制により、かえって当局の追跡が困難な取引所での取引が活発化、結果として不正をしやすい環境が生まれてしまうというのが同社の主張だ。
同社は、その代替案としてモニタリング・システムを利用し、不正行為や顧客管理を行うことを提案している。また、(仮想通貨サービスを利用するために)FATFは全ての個人が登録を行い、許可を得る義務を課すべきとしているが、それに対しても、既存のビジネスのみ絞られるべきだとしている。
規制されているVASP(仮想通貨サービスプロバイダー)に対して、さらに複雑な要求や摩擦を強制することで、法順守しない一部の企業は、非中央集権化されたP2Pの取引所での運営に走り、世界の金融機関がさらなるリスクに陥る可能性がある。
必要以上の規制はかえって”毒”となり得るといった側面にも目を向けるべきなのは確かであるといえるだろう。
国内のマネロン対策
今秋には、2008年以来となるFATFの第4次対日審査を控えている。各国で対応が急務とされる。日本の金融業界が、2008年同様の低評価を受けると、国際取引にも影響を及ぼすリスクもあることから、関係者は戦々恐々としているとされるもようだ。(前回は49項目中25項目で要改善、27ヵ国中18位)
外務省が先日公開した対策成果の文書によると、FATF基準に沿ったマネーロンダリング対策に関する規制案は以下のように記載されている。
金融システムにおいて生じつつあるリスク及び脆弱性を引き続き監視し,必要に応じ対処するとともに,継続的な規制・監督上の協力を通じて分断に対処する。
我々は,強じんなノンバンク金融仲介の実現に関する継続した進捗に期待する。我々は,リスクが軽減されつつ,金融セクターにおける技術の潜在的な利益が実現されることを確保するための取り組みを強化する。
我々は,金融活動作業部会(FATF)基準に沿ったマネーロンダリング及びテロ資金供与への対策のため,暗号資産を規制し,必要に応じて他の対応を検討する。
一部抜粋:G20 ブエノスアイレス首脳宣言
特に今回の審査では銀行や証券業界のほか仮想通貨業者も重点候補として挙がっており、FATFによる主な審査対象として新たに仮想通貨交換業者が入る。
国際会議をはじめ、FATFの審査基準に沿った仮想通貨への取り組み、またマネーロンダリング(資金洗浄)対策に躍起になっている事例と言えよう。
同審査に関する一般ユーザーへの影響があり得る範囲では、マネロン対策に係る内部管理体制不十分との指摘による、改善措置で一時的に営業が停止する事のほか、現段階では憶測の範疇にあるものの、今回の審査へ向けて、規制の矛先が向く可能性も無視できないだろう。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します