トランプ発言の余波、米財務長官がビットコインなどの仮想通貨に対して立場を表明
- 米財務官、ビットコインやリブラを懸念
- 米財務長官が15日に開かれた記者会見で、財務省としての立場を表明した。ビットコインなどの不正利用に「国家安全保障上の問題」としたものの、AMLなど規制遵守した運営・利用については一定の理解を示した。
米財務官、ビットコインやリブラを懸念
米財務長官のSteven Mnuchin氏は、トランプ大統領が先日フェイスブックの仮想通貨「リブラ」やビットコインなどの仮想通貨に懸念を示したことに続き、記者会見で、財務省としての立場を表明した。
Mnuchin氏はビットコインなどの仮想通貨を利用した不正行為が「国家安全保障上の問題」であると指摘し、それらが「サイバー犯罪、脱税や違法薬物、人身売買などで悪用されている」と懸念感を示している。
なお、フェイスブックの仮想通貨リブラも犯罪行為に当てはまるのではないかと危惧し、「最高水準」の規制を満たす必要性が必ずあると強調した。
一方、仮想通貨の投機性に対して取り上げたものの、それを直接問題視しないスタンスを見せている。
今回の会見で、「ビットコインなどの仮想通貨」に関する財務長官の発言要旨は以下の通りだ。
- ビットコイン等の仮想通貨を利用した、億ドル単位に及ぶ不正行為は「国家安全保障上の問題」だ
- 投機と不正利用が仮想通貨の主な利用範囲にあることは否めない
- 不正利用を防ぐことが財務省の優先事項
- 財務省は、規制外で運営される仮想通貨取引所を取り締まる
- クロスボーダーに及ぶ仮想通貨規制を検討する
- 財務省は米ドルによる準備通貨制度を重要視する
- 米政府は金融システムを効率化するイノベーションを歓迎する
- 仮想通貨の投機行為は特に問題視されてないが、違法行為での利用は断固認めない
リブラに関する要点は、以下の通り
- 長官は、フェイスブックが仮想通貨を発行することに対して強い懸念がある
- 規制当局がその発行を納得するには、フェイスブックは様々な工作をこなす必要がある
トランプ発言の余波
先日、トランプ大統領がビットコインやリブラプロジェクトに批判的なツイートを行なって以来、米国の仮想通貨業界では、大統領令によって大きな制約を受けるのではないかと危惧されていた。
しかし、Mnuchin氏のこれらの発言から、AMLなどの規制、もしくはFATFのガイダンスを包括的に遵守した場合、米国の仮想通貨取引所の運営、取引売買などの業務は禁止しない方針と考えられる。
実際、主な米国発の取引所、コインベースやポロ二エックス、ビットレックスなどはNYビットライセンスや州の送金業者ライセンスを取得した企業であり、有識者らは現時点では米国におけるライセンス付きの取引所は財務省の取り締まりターゲットではないと解釈している。
アナリストのトム・リー氏は、財務省の会見を受け、「Mnuchin氏の発言に対してビットコイン相場は心配していないようだ。KYC/AMLの遵守が守られていれば、排除されることがないのと同義だ。」と言い、「ホワイトハウスは、公平な市場を望んでいる」と見解を述べた。
さらに、リブラに関する発言も、大まかに仮想通貨のAMLなどに含まれている。各国政府も懸念するマネーロンダリングなどの防止がフェイスブックの急務だ。
財務長官は、下院のWaters理事長がリブラの完全停止を求めることとは異なり、あくまで規制遵守の優先を重要視している。つまり財務省はトランプ大統領の発言をより深く解釈したと捉えられる。
トランプ氏は、フェイスブックには銀行のライセンスを取得する必要があると言及したが、財務長官の発言を含め、リブラのローンチを否定する方針ではないことが読み取れる。
財務長官の発言は強気要素か
トランプ氏の発言がBTC市場急落の引き金となったとの見方もあるが、今朝の相場反発を誘発した要素として、売られすぎ水準にあったテクニカル的要素のほか、財務長官の包括的な発言も意識された可能性がある。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します