1月26日より羽田空港で実証開始
日本空港ビルデングとネットスターズは1月26日、羽田空港第3ターミナル内の2店舗で米ドル建てステーブルコインUSDCによる決済の実証を開始した。
対象店舗は、東京ばな奈やヨックモックなど定番の和・洋菓子土産を取り揃える「Edo食賓館(時代館)」と、話題のスイーツブランドが入れ替わりで出店する「Edoイベント館」の2店舗で、いずれも第3ターミナル4F江戸小路(セキュリティチェック前)に位置し、免税対応も行っている。
本実証実験では、プライベートウォレットMetaMask上で生成する決済用QRコードを店舗で提示してUSDCで支払いを行う仕組みを開発する。決済基盤にはソラナ(Solana)ネットワークを採用している。
本稿では、決済ゲートウェイを構築しプロジェクトを推進するネットスターズと、決済用QRコード生成アプリケーションを共同開発したWEA JAPANへのテキストインタビューを通じて、技術選定の背景や決済フローの詳細、今後の展望を聞いた。
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ソラナを採用した理由
ステーブルコイン決済を実店舗で展開する上で、ブロックチェーンの選定は重要な課題となる。今回の実証でソラナを採用した理由について、ソラナのアドレスが比較的短く、店舗決済時の処理時間を短縮できる利点を挙げた。リテール決済においては決済時間が最重要であり、支払速度を最優先に考慮した結果、今回のPOC(実証)ではベースブロックチェーンとしてソラナを選択したという。
店舗でのリアルタイム決済では、数秒の遅延が顧客体験を大きく損なう可能性がある。ソラナは高速なトランザクション処理能力を持つことで知られており、空港という高トラフィック環境での実証に適したチェーンとして選ばれた形だ。
今後のマルチチェーン対応については、パフォーマンスとセキュリティの安定性のバランスを踏まえ、より多くのパブリックチェーンやウォレット、Web3サービスなどへの接続・検証を積極的に進めていく予定だとしている。
QRコードを活用した支払いフローと海外ユーザー向けの工夫
本実証の決済フローは、ユーザーがMetaMaskウォレットでQRコードを提示し、店舗側端末で読み取ると決済が完了する仕組みとなっている。加盟店にとっても通常のQRコード決済(CPM型)と同様の手順であり、既存のキャッシュレス決済に慣れたユーザーにとって違和感なく利用できる設計だ。

実際にQRコードでUSDC決済を行っている様子
QRコード決済を採用した背景について、消費者はQRコードでの決済に抵抗がなく、USDCの社会実装のインターフェースとして最適と判断したと説明する。
サービスは日本人とインバウンド客で区別しておらず、海外ユーザー向けにMetaMask内での英語対応や店舗での多言語アクセプタンス設置などの工夫を行っている。主な利用者をインバウンド客と見込んでいるものの、共通の仕組みで提供することで運用の簡素化を図っている。

アクセプタンス(案内表示)、多言語で利用方法を説明している
海外ユーザー向けの具体的な工夫としては、QRコードのフォーマットとデザインに海外で共通のものを採用したほか、海外ユーザーが関心を持つ円対ドルの為替レートを決済時に参考として確認できるよう自動表示する仕組みを導入した。為替レートの自動表示は、外貨建て資産で支払うインバウンド客にとって、実際の支払額を把握しやすくする重要な機能といえる。
エラー発生時の対応体制
空港のような高トラフィック環境では、エラー発生時の迅速な対応が不可欠となる。エラーや誤操作などの異常事態に対しては30秒の利用制限を設定しており、この時間内に正常に支払いが完了しない場合は取引を取消す仕組み。エラー表示のメッセージは海外ユーザー向けに英語でスマートフォンに通知される体制を整えている。
30秒という時間設定は、通常の決済完了には十分な時間を確保しつつ、問題発生時には速やかに取引を取り消して次の対応に移れるよう設計されているという。
現場の反応と今後の展開
実証開始から間もないため、主なターゲットであるインバウンド客からのフィードバックはまだ得られていない状況だ。ただ、日本人の顧客から使いたいという声が寄せられているといい、ステーブルコイン決済への関心は海外旅行者だけでなく国内ユーザーにも広がりつつあることがうかがえる。
今後の展開について、次のように語った。
「実証をもとによりユーザの利用し易いUIを目指すことで、より多くの場所・手段での利用を進めていくことを考えています。まずはリテールのリアル店舗に対し、他の決済手段よりも安価でキャッシュフローが短期で回るUSDC以外も含め、ステーブルコイン導入の仕組みを確実に実現したいと考えています」
クレジットカード決済では入金までに数週間かかることが一般的だが、ステーブルコイン決済ではブロックチェーン上で即時に資金移動が完了する。この特性は、特に資金繰りを重視する中小規模の店舗にとって大きなメリットとなる可能性がある。
2024年の実証実験からの継続的な協業
ネットスターズとWEA JAPANの協業は今回が初めてではない。両社は2024年にWeb3決済基盤「Tusima」での実証実験を共に実施しており、今回の羽田空港での実証はその延長線上に位置づけられる。
国内ではJPYCの発行・償還プラットフォームが昨年10月にサービスを開始し累計発行額は5億円を突破。SBIホールディングスとスターテイルによる信託型円建てステーブルコインの共同開発、3メガバンクによる円建てステーブルコイン共同発行など、ステーブルコイン決済インフラの整備が加速している。
羽田空港での実証結果を踏まえた他空港や商業施設への展開が実現すれば、日本におけるステーブルコイン決済の社会実装が大きく前進することになる。

店舗前のパネル



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