仮想通貨で政治家個人への献金、総務省の「合法判断」はなぜ?

仮想通貨で政治献金、総務省の「合法判断」はなぜ?
総務省が、政治家個人への献金で仮想通貨を通じた献金は違法にならないとの見解を示した内容について、暗号資産取扱古物商協会設立を目指す岡部典孝氏が、合法になった経緯とその理由を解説した。

記事修正:記事内容で、財務省との表記された箇所がございましたが、正しくは「総務省」となります。 表記に誤りがあり、誠に申し訳ございませんでした。

仮想通貨で政治献金、総務省の「合法判断」はなぜ?

総務省が、政治家個人への献金で「仮想通貨を通じた献金は違法にならない」との見解を示した内容について、暗号資産取扱古物商を営む岡部典孝氏が、合法になった経緯とその理由を解説した。

岡部 典孝氏は、暗号資産取扱古物商協会設立を目指すなど、国内における仮想通貨の法的な解釈にも精通する人物だ。仮想通貨を通じた政治資金の献金についても、岡部氏が総務省の政治資金課へ情報公開請求を行い、全面開示されたものが報道の発端となっている。

岡部氏自身も、代表がいない政治団体「トークントークン」を設立しており、非中央集権の理念から、仮想通貨の献金が送られてきたことが問い合わせの背景にあるという。

現在の日本では政治家個人への献金は原則禁止されているが、仮想通貨は政治資金規制法上の「金銭」や「有価証券」には該当しないため、違法にはならないとの見解が総務省の政治資金課が、公表した文書で明らかになった。

政治家に献金する場合は政治団体を通じて献金することになるが、個人への仮想通貨を通じた献金が可能になることで国民へ公開されていた資金の流れが不透明になる可能性があるほか、日本の政治に影響を及ぼしたい人物が政治家に寄付を行うなどの問題が生じる、と解説する岡部氏。早急に法改正を行う必要があると論じた。

本記事は、岡部氏が解説する「仮想通貨で政治家に献金して合法な訳」と、CoinPost編集部が取材した内容を併せて掲載。日本の政治や仮想通貨の業界でどのような問題点が生じるのかを解説する。

仮想通貨献金の焦点は

仮想通貨を通じた献金で焦点となったのは、仮想通貨の法律上の規定が、現在の政治資金規制法で禁じられている「金銭」や「有価証券」への該当するかだ。

総務省への問い合わせは、仮想通貨の取り扱いに関する政治資金決済法上の規定はないことや、一般的な仮想通貨の取り扱い(種類は数百以上、態様も様々なため)との前提を踏まえて行われたもので、政治資金規制法上での「金銭」または「金銭等(金銭その他政令で定める財産上の利益:有価証券)」に該当するか、また「財産上の利益」としてどのように区分されるかが焦点とされた。

現在の政治資金規制法では、政治家に対して個人で献金する場合、金銭を通じた献金は違法。物品を通じた献金は合法という法律上の解釈にある。

総務省の政治資金課が公表した文書では、仮想通貨は政治資金規制法上で、法定通貨に区分される「金銭」や財産権を表彰する証券である「有価証券」には該当しないと回答。これらの結果から金銭その他法令で定める財産上の利益に該当する「金銭等」には区分されないとした。

総務省の結論としては、一般的に仮想通貨は政治資金決済法上の「金銭等」には該当せず、「物品その他の財産上の利益」には該当するとの見解だ。これは、外国通貨と同様の区分となるという。

今回の区分について、岡部氏は以下のように語った。

政治資金規正法は従来からザル法と言われており、外国通貨や金塊は従来から物品として政治家個人に献金可能である。

仮想通貨が外国通貨と同様に物品扱いという今回の見解も、現在の政令上では妥当な見解だと考える。

仮に仮想通貨が金銭等に該当すると政令改正した場合、匿名仮想通貨寄附が法律上自動的に国庫に帰属することになるが、各省庁に受け入れ態勢は全く整っていない。

総務省は法改正と体制が整うまで、仮想通貨による政治家個人への献金を外国通貨による個人献金と同様に認めるべきと整理したと考えられる。

仮想通貨の寄付における問題点

一方、仮想通貨の寄付が法的に禁止されないことに対して、法改正をすべきとの声は大きい。

岡部氏が解説した仮想通貨による寄付の問題点は、大きく分けて二点ある。

政治家個人への寄付問題

一つ目が、政治家個人に寄付できる問題だ。通常、政治団体の制度を通じて寄付を行うことで、政治資金の流れを国民に示すが、個人に直接寄付されることによって、流れが不透明になると問題視した。

特に、仮想通貨の場合は価値を定めにくい通貨であるうえ、その特性上、法定通貨と比較して匿名での献金となる問題が生じやすい。仮想通貨のアドレスを政治家が公表しない限り特定は難しく、政治献金か売買など個人利用に関するトランザクションか、判断できない問題に発展する可能性もある。

政治献金の場合、金銭等に該当する匿名元の寄付は、不正防止の観点から国庫に帰属することになっているが、この点で混乱が生じる可能性があると見ている。

国外勢力による悪用リスク

二つ目の問題点にあげたのは、国外から日本に影響を及ぼしたい人物が、悪用する可能性だ。例に挙がったのはリブラなどのトークンを意図的に流行らすことを目的に、政治献金を利用するケースが考えられるという。

この問題について岡部氏は、外国人や外国企業から政治家個人に寄付されても捕捉できない点は総務省も認識していると語り、「例えば、外国主導の仮想通貨の規制を決めることができる国会議員が、匿名の外国人からLibraで寄附を受けてしまっては、公正な審議は期待できない」とコメントした。

法改正にもハードル

また、仮想通貨における政治献金の問題を解決するための、法改正にもハードルはあると、岡部氏は話した。

多くの法律は内閣が提出するのに対して、三権分立の観点から政治資金規正法は原則として議員立法で改正される。

しかし、政治家は寄付をもらう側の立場でもあるため、仮想通貨を通じた献金が活動資金になることにメリットを感じる可能性もあり、法改正へのハードルになり得るのではないかと指摘した。

岡部氏は、これまで公表することを自主的に控えてたというが、読売新聞などで大きく報道されたのを機に、情報の公開と拡散に努めていくという。

悪徳政治家に悪用される前に法改正して穴を塞ぐことができるかはスピード勝負であるとして、「法改正施行までは事実上合法であるため、倫理的に間違ったことをしている政治家を当選させるかどうか、という有権者の判断に委ねることになる。有権者が判断するためには速やかに収支が公開されることは必須であるが、政治家個人の政治活動に仮想通貨が寄附された場合に、収支が公開されないというのがこの問題の本質だ。」と語った。

政治とブロックチェーン

なお、政治とブロックチェーンの世界で精力的な活動を行う岡部氏は、どのように利益調整して決定するかという意味で、政治は元々ブロックチェーンと相性が良い領域だと話した。

例えば、新しい政治団体が独自仮想通貨を発行した場合だ。支援する候補者の政治活動を手伝うインセンティブを与えやすくなるなど、政治が身近になるきっかけにもなると考えている。

また、今回の総務省の判断をうまく活用することで、仮想通貨で寄付を受けるブロックチェーン推進派の政治家が増える可能性もあるとした。

一方、個人に対するメリットにも触れた。

個人が仮想通貨を現金に換えてから政治団体に寄附したら雑所得として税金がかかるのに対して、仮想通貨をそのまま政治団体に寄附することで税金がかからない可能性があるほか、寄附された仮想通貨のまま物品を購入した場合、消費税課税の政治団体に仕入税額控除で消費税が現金で還付される可能性まであると指摘する。

法的解釈で揺れる今回の事例、今後の法改正が焦点となるも、政治の世界で一つ仮想通貨が注目される事例として、注目したい。

最後に岡部氏は、「国会議員が自ら改正を発議するか、引き続きみんなで見守りたいと思う。」と言葉を結んだ。

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