マスターカード、中銀デジタル通貨(CBDC)の実証プラットフォームを提供へ
マスターカードがCBDC研究プラットフォームを提供
クレジットカード大手マスターカードが、中央銀行発行デジタル通貨(CBDC)をテスト出来るプラットフォームを発表した。
同社は現在中央銀行、民間の商業銀行、技術・アドバイザリー会社などに提携を呼び掛けている。
同プラットフォームは独自の仮想テスト環境を用い、各国の中央銀行がCBDCのエコシステムをシミュレートして、そのユースケースや展開戦略を確かめることができるものだ。
銀行、金融サービスプロバイダー、消費者などの間でCBDCの発行、流通、取引がどのように行われるかシミュレーションし、既存の決済システムとの相互運用性も査定することが出来るようになる。
マスターカードの決済ネットワークでの使用をテスト
CBDCの発行形態としては様々なものがあるが、マスターカードのテスト環境は、各国の運営環境に合わせて個別にカスタマイズ可能で、次のようなことが行える。
- CBDCが既存の決済ネットワークやインフラ(カードやリアルタイム決済など)とどのように連携するかを含め、銀行や消費者などを前提としたCBDCの発行、流通、取引のエコシステムをシミュレートする
- マスターカード決済を受け付けている場所であればどこでも、消費者が商品やサービスの支払いにCBDCを使用できることを実証する
- 市場への導入価値や実現可能性を迅速に判断するために、様々なCBDC技術の設計やユースケースを検討する
- 技術面、セキュリティ、設計と運用の初期テストを含むCBDCの開発にかかる労力を評価する
マスターカードの既存決済ネットワークを、CBDCの流通経路としても採用することができる仕組みになっているようだ。
公式サイトでは以下のように抱負が語られている。
マスターカードは中央銀行が既存の決済手段とシームレスに統合するソリューションを探りつつ、決済システムを最新のものにすることを支援する。公共部門と民間部門の間でパートナーシップを構築し、人々や企業が取引する方法を共に変革していく。
サイトでは、世界経済フォーラムのブロックチェーン・デジタル資産等の責任者シーラ・ウォーレンが「CBDCを検討する際には官民の協力により、その可能性や適応範囲をよりよく把握することができる」という趣旨の発言をしたことにも触れている。マスターカードの今回の動きはこうした要望に応じたものになりそうだ。
Fortuneへのインタビューに答えた、マスターカードのデジタル資産等部門のRaj Dhamodharan副総裁は、同社がすでに幾つかの中央銀行と協働していることを明かし、銀行から技術系企業まで、さまざまな第三者組織にプラットフォームへの参加を呼びかけていると語った。
世界中にインフラを持つ巨大決済企業の参画で、CBDC研究開発がさらに後押しされそうだ。
日本銀行もCBDC検討へ
CBDCの研究や実証実験を行う政府は徐々に増加している。今年1月に国際決済銀行(BIS)が発表した報告によると、調査対象となった中央銀行の内、80%はCBDCのプロジェクトに取り組んでいることが確認された。
40%は実験や概念実証の段階に進んでおり、10%がパイロット的なプロジェクトが完成しているという。実際に開発やパイロット的なプロジェクトまで進んでいるのは新興市場の中央銀行が多かった。
また世界的なコロナ禍を受けて、BISはさらにCBDCのニーズが高まったと強調。銀行口座を持たない層にも金融アクセスを提供し、民間の仲介業者間の公平な競争を促して、セキュリティやリスク管理も高いレベルで行えるとして研究開発を推奨している。
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フェイスブック主導のステーブルコイン「リブラ」に各国公共部門から「国の金融主権を脅かす」の声が挙がったことからも分かるように、各国政府は民間のデジタル通貨がもたらす課題について懸念を抱いており、このことはCBDCの検討が加速している一因とも考えられる。
日本政府と日銀も、調査から検討へとステージを一段階引き上げており、7月には決済機構局に「デジタル通貨グループ」を新設した。
政府は「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」にもCBDCの検討を盛り込んでおり、米欧との協議も本格的に実施する意向を示している。民間企業にも技術面の情報提供依頼を行った。
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