米SECに書簡提出した議員ら、FTXから寄付金受け取り
書簡はSECによる調査を遅らせた?
3月に、米証券取引委員会(SEC)に対して暗号資産(仮想通貨)企業への過度な調査を批判する書簡を提出した議員らは、FTXから選挙のための寄付金を受けていた。Prospectが報じた。
書簡は超党派で提出されたもので、Tom Emmer議員が筆頭で提出。他に、Byron Donalds議員、Darren Soto議員やWarren Davidson議員、Ted Budd議員、Ritchie Torres議員、Josh Gottheimer議員、Jake Auchincloss議員の、合計8名が名前を連ねていた。
この8人のうち5人が、先日破綻申請したFTXより、約40万円(2,900ドル)から161万円(11,600ドル)の選挙のための寄付金を受け取っていた形だ。こうした背景の下で、書簡が、FTXへの調査を遅らせることになったのではないかと一部で問題視されている。
具体的には、Emmer議員とGottheimer議員は、それぞれ161万円(11,600ドル)、Auchincloss議員は約95万円(6,800ドル)、Budd議員とTorres議員はそれぞれ約40万円(2,900ドル)を受け取っていた。
また、エマー氏は今年、下院共和党の選挙部門「全米共和党議会委員会(NRCC)」の代表を務めていた。NRCC関連基金は、この期間にFTXから約3.8億円(275万ドル)を受け取っている。
議員らの見解
Auchincloss議員は広報担当者を通じて、書簡について次のようにコメントした。
私は、仮想通貨セクターについて、明確な法律が必要だと以前から明確に指摘していた。
SECは、「取引所を対象とする新しい法律は必要ない」と主張しておきながら、なぜ今回の破綻を予測できなかったかを議会に説明する必要がある。
明確な取引所規制が不在だったことも、FTXに関する問題の原因となっていると指摘する形だ。また、FTXに、この書簡に参加するよう直接働きかけられたことはないとも付け加えた。
Byron Donalds議員も、広報担当者を通じて「SECで進行中の調査に影響を与えようとはしてはおらず、FTXといかなる連絡も取り合っていない」と述べた。また、SECが仮想通貨企業に対して明確なガイドラインを示すことなく「法的措置による規制」を行っていることが指摘されており、そうした手続きに懸念を抱いていただけだとも続けている。
関係筋によると、書簡が提出された際に、SECが調査対象としていた企業の中には、FTXも含まれていたという。
政治と企業の癒着という観点
議員らが説明しているように、SECが「明確なガイドラインを示すことなく、法的措置で取り締まりを行っている」との批判は、一部のSEC職員からも上がっていたものだ。
このため、書簡の内容は筋が通っている部分もあるとみられる。また、米国で企業による政治家への献金は合法だ。
議員らは、SECが基準に沿わない過度な調査を行っている可能性があるとして、企業への調査状況や方法について質問を投げかけていた。
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一方で、FTXのサム・バンクマン=フリード前CEOが自身の血縁関係を活かして、「規制の独占」に取り組んできたとする疑惑も浮上しており、当局や政治家と企業の癒着という観点からも、今回の出来事に光が当てられている状況だ。
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SECとは
1934年設立。公正な取引の確保と投資家保護を目的としており、インサイダー取引や企業の不正会計、相場操縦などを防止する。仮想通貨が有価証券に該当するかという判断も行う。SECは「Securities and Exchange Commission」の略で、日本では「証券取引等監視委員会」が近い役割を担っている。
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