パラグアイ議会、仮想通貨マイニング関連の法案を否決
仮想通貨マイニングの規制法案を否決
南米パラグアイ共和国の下院議会は5日、暗号資産(仮想通貨)マイニングの税制と規制の枠組みを作るための法案を否決した。
この2021年に起草された法案は、仮想通貨マイニングを産業活動として認め、事業者が使用する電気料金に上限を設けるという優遇措置を盛り込んでいる。また、業界に課税することも求めていた。
他に、マイニング事業者のライセンス申請や、仮想通貨取引所のマネーロンダリング防止機関への登録などを規定。仮想通貨マイニング産業の誘致を目指す内容も含む。
元々、この法案は5月に下院で、7月に上院でも可決されていた。しかし8月に、Mario Abdo Benítez大統領が、拒否権を発動して非承認としている。大統領は、「ビットコイン(BTC)の採掘はエネルギーを過度に消費し、国にもたらす雇用効果が小さい」と主張していた形だ。
その後、今度は議員たちが、大統領の拒否権を拒否し、再度議会で審議が行われていた。
議論の内容
5日の審議では、法案を支持する立場と反対する立場の両方から意見が投げかけられたが、最終的には否決された格好だ。
例えば法案を支持するCarlos Sebastian Garcia議員は、「仮想通貨マイニングは、雇用、資本投資、税金、地域経済などに多くの資源を提供するだろう」「成長の余地がある産業を後押しすることが望ましい」と意見している。
一方で、José Reynaldo Rodríguez議員は、優遇措置を与えれば、国民がそのエネルギーコストを補填することになり、「国にとって年間約41億円(3,000万ドル)の損失をもたらすだろう」と異議を唱えた。
パラグアイのブロックチェーン協会は、法案否決を受けて、議員と仮想通貨についての知識を共有し、さらに良い規制法案が起草されるように努力しているとコメントしている。
外国企業がパラグアイに進出中
パラグアイは、水力発電で国内の電力需要ほぼ全てを賄っているとされる一方、その電力は国内で三分の一程度しか消費されておらず、電気代も安い。
このため、パラグアイの安価な水力発電エネルギーには仮想通貨マイニング業界も注目している。EL PAISによると、2022年8月時点で、マイニングが盛んなパラグアイの街ビジャリカは人口約6万人だが、少なくとも3万台のビットコインマイニングマシンがあった。
ケンブリッジ大学オルタナティブ金融センターのデータによると、パラグアイは2022年1月時点で、グローバルハッシュレートの0.15%を占めている。
Benítez大統領は8月、法案に拒否権を発動すべき理由の一つとして、外国企業による地域への悪影響が懸念されることを挙げていた。
大統領は、現在は「カナダ、アメリカ、ロシア、中国」など様々な国の企業がパラグアイで仮想通貨マイニングを行っていると指摘。もしマイニングに関する法案を承認すれば、「外国人投資家が税金を払うことなく安いエネルギーを手に入れ、高い購買力を持つ個人しか、ビットコイン採掘を行えないようになる」と続けていた。
ハッシュレートとは
マイニングの採掘速度のこと。日本語では「採掘速度」と表現される。単位は「hash/s」。「s」は「second=秒」で、「1秒間に何回計算ができるか」を表す。マイニング機器の処理能力を表す際や仮想通貨のマイニングがどれくらいのスピードで行われるかを示す指標として用いる。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します