ドバイの規制当局、仮想通貨の規制方針発表 匿名性の高い通貨禁止に
UAEドバイの仮想通貨規制方針
アラブ首長国連邦(UAE)ドバイの暗号資産(仮想通貨)規制局(VARA)は7日、仮想通貨関連の規制ガイドラインを発表した。匿名性の高い通貨を禁止することも盛り込んでいる。
ガイドラインは、仮想通貨の発行、ライセンス制度、マネーロンダリング・テロ資金調達防止や、マーケティングとプロモーションなどに関する基本原則と目標を説明するものだ。
VARAは、UAEでは、「匿名性が強化された仮想通貨の発行と、それに関連するすべての事業活動が禁止されている」としている。
なお、銘柄は特定していないものの、該当するトークンは「分散型台帳を介した取引の追跡や、所有権の記録を防ぐもの」で、仮想通貨企業も、その匿名性を軽減できるような技術を持っていないトークンだと定義した。
匿名通貨の代表的な銘柄は、Monero(XMR)、Zcash(ZEC)が挙げられる。匿名性が高く、マネーロンダリングなどに悪用される懸念があることから、規制当局から問題視されているものだ。日本の仮想通貨取引所では取り扱いが廃止されている。
違反行為やライセンス制度を規定
ガイドラインは、市場における違反行為として、インサイダー取引や市場操作などを挙げた。こうした行為を行った場合、個人には最高約7億円(2,000万ディルハム)、仮想通貨サービス事業者には最高約18億円(5,000万ディルハム)の罰金が科されることになる。
また、すべての事業体は、UAEで仮想通貨サービスプロバイダーとしての活動を行うために、VARA が発行するライセンスを申請、取得、維持しなければならないと規定した。規則違反があった場合や、事業体が債務超過に陥った場合には、ライセンスを取り消される可能性があるとしている。
仮想通貨規制の基本原則
ドバイの仮想通貨規制局(VARA)は、2022年に設立された。ドバイ首長国全域における仮想通貨と、仮想通貨サービスプロバイダーの規制、監督を役目とする規制機関だ。なお、ドバイ国際金融センターについては、独自の規制当局を持っているため、VARAの規制や監督の対象としては除外されている。
VARAは、ガイドラインの指針として、以下の基本原則を挙げた。
- 市場の健全性と安定性
- 消費者保護
- 技術の中立性とイノベーションの支援
- 規制の柔軟性
- 規制の効率性とバランス
「技術の中立性」については、VARAは、どの技術革新が価値があるか否かを判断しないと述べている。特定の技術に対して、制限を設けるなど差別するのではなく、違法または有害な活動を防止していくという方針だ。
「規制の柔軟性」については、業界の進化のスピードを考えて、柔軟に規則を対応させていくと述べている。また「規制の効率性とバランス」については、VARAと仮想通貨サービスプロバイダーの両方にとって、できる限り負担の少ない方法で規制を施行すると説明した。
UAEのWeb3戦略
アラブ首長国連邦(UAE)は仮想通貨やWeb3の育成に積極的な国の一つだ。バイナンスやBybit、Crypto.comもすでにドバイでライセンスを取得している。
UAEのThani Al Zeyoudi外国貿易兼人材誘致担当大臣は、昨年Bybitがライセンスを取得した際、「私たちは明確な規制のもとで、仮想通貨事業を運営しやすい環境を構築している」と述べた。
また、ドバイのハムダン皇太子は2022年に「ドバイ・メタバース戦略」を発表。メタバースで40,000件の雇用を創出し、5,300億円(40億ドル)相当の経済規模に成長させる方針を打ち出している。
関連:ドバイのメタバース戦略「5年後には5,000億円以上の市場規模まで成長」
画像はShutterstockのライセンス許諾により使用
「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します