ビットコインNFT管理ウォレット「Xverse」開発会社インタビュー|WebXカンファレンス 

オーディナルによるビットコイン開発の活性化

2023年以降、ビットコイン・ブロックチェーンの新たなユースケース「Ordinals Protocol(オーディナル)」がビットコイン支持者だけでなく、他のチェーンのNFTコレクターの注目を集めている。

今回、オーディナルの関連インフラとして主要な役割を担うビットコインウォレット「Xverse」開発会社のスメイカル ヤン CSO(Jan Smejkal 最高戦略責任者)が、WebXでCoinpostのインタビューに応じた。

Xverseなどのウォレットは、オーディナルで発行されたトークンやNFTを「インデクシング(Indexing)」する役割を担う。これは、新しいトークンが作られたときにそれを認識し、トークンの情報を把握する。また取引の追跡より、どのトークンがどれだけ存在し、それが誰のものであるかを把握する。

Xverseはビットコイン・オーディナル用の最も人気なウォレットとして存在感を高めており、5月にBRC-721Eを立ち上げたOrdinals Marketをサポート。BRC-721Eでは、イーサリアム上で流通するNFT(非代替性トークン)を、ビットコイン・ブロックチェーン上に移行可能になった。

Ordinals・BRC-20とは

Ordinals Protocol(オーディナル)は1月に公開された、ビットコインの最小単位であるsatoshi(1BTCの1億分の1)に通し番号をつけ、一つのsatoshiに動画や画像などのデータをビットコインのブロックチェーンに直接保存する技術だ。

オーディナルでは、個々のsatoshiにテキストや画像などのコンテンツを追加することをインスクリプション(碑文)と呼び、厳密にはNFTではなく「デジタル・アーティファクト(加工品)」と表現される。

新規インスクリプション活動は、4-5月のブームから一時沈静化したが、7月から再び新規ミントの数が増えており、7月10日には35万件まで急増していた。

最近では、オーディナルの最新アップデートである「Recursive Inscriptions(再帰的碑文)」は、4MBのブロックスペース制限を間接的に破れることで再び注目を集めている。

また、BRC-20は、偽名のオンチェーンデータ開発者Domo(@domodata)によって2023年3月8日に発表された、ビットコイン用の“実験的なトークン規格”。名前はイーサリアムのトークン規格「ERC-20」に由来しているが、現時点ではスマートコントラクト機能は実装されていない。

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2023年7月20日現在、brc-20.ioによると、38,365を超えるBRC-20トークンが生成されており、その合計時価総額は1兆ドルを超えている。

「Xverse」のヤン・スメイカル CSOインタビュー

「Ordinals Protocol(オーディナル)」の成長の軌跡を見守ってきたヤン氏は、Xverseの戦略と商業面のリーダーシップを担当している一方で、オーディナルとビットコインに焦点を当てた人気ポッドキャスト「The Ordinal Show(オーディナル・ショー)」のホストも務めている。そこでユーザーや開発者との議論を深めている。

ヤン氏は、過去半年間でオーディナルで見られた活動が投機的バブルだけではないと強調している。それは新たな技術を活用してムーブメントを生み出そうとする人々が集結し、それぞれが実験的な構築を進めていた結果だ。イーサリアムやソラナといった既存のブロックチェーンエコシステムからシフトした者もいる。

その過程で、ブガッティ(Bugatti)やAsprey Studio(アスプレイ・スタジオ)などの高級ブランドが関わる事例まで生まれ、それが新たな成果へとつながる。開発活動の連鎖と熱狂が生まれていたのだ。

ブガッティは、ロンドンに拠点を置くラグジュアリージュエリーメゾン「AspreyStudio」とコラボレーションして物理的なジュエリーを作成。それらに連動するNFTをOnChainMonkeyのクリエイターがオーディナル上で作り上げた。中には20万ドル以上で取引された事例もある。

「現時点では、流動性があまりないため、真剣に取り組む人たちだけが残り、プロトコル自体で多くの実験が行われている。オーディナルを観察すると、まさに実験的な文化に溢れている」とヤン氏は語る。

外部から見れば一見順調に見えるかもしれないが、ビットコインの支持者の中には、オーディナルに否定的な意見を持つ者も少なくない。ビットコインの改良技術「Taproot」で生じたスペース(容量)を活用する方法は、ビットコイン・コア開発コミュニティから見れば必ずしも好ましいものとは言えない。

それに対しヤン氏は、「ビットコインを取り巻く革新的な文化が出現し、Ordinalsムーブメントに後押しされている。」とコメント。最終的にはOrdinalsがBTCネットワークに貢献しており、より多くのビルダーがビットコインを再発見した結果、ビットコインでより多くのイノベーションが起こると信じている。

20万人もの人が参加し、ウォレットを作成し、ビットコインについて学び、ビットコインのフルノードを立ち上げ、ネットワークをより分散化させることにつながった。

Satoshiに付加価値を付ける

ヤン氏によると、オーディナルが提供する新たな価値は、ビットコインの最小単位、satoshi(1ビットコインの1億分の1)に希少価値を付加することである。ビットコインの初期の取引で有名なピザ決済に使用された「sat’s」を筆頭に、特定の歴史を持つsatoshiが価値を持ち、市場で取引されている。

satoshiに価値を見いだす人々を『satハンター』と呼ぶ。彼らは、たとえば300ドルを払ってでも、一つのsatoshiを手に入れようとする。その価値は、100倍、1000倍に上ることもある。

このsatハンターたちは仮想通貨取引所を、中古レコード店のレコードボックスを漁るように探し回っている。ビットコインをデポジットし、同等のビットコインを引き出すと、新たな履歴を持つビットコインが手に入る。彼らは一日に何度もビットコインを往復させる。このsatハンターたちの中には、マイニングで新鮮なビットコインを作り出し、それを取引所に預けて価値あるsatoshiを探し出し、市場で高値で売るビットコインのマイナーもいる。

ハンターたちは、ビットコインを受け取るたびにインデクサーのX-Verseを確認する。彼らが求めるのは、希少なsatoshiだ。価値のあるsatoshiであれば、その詳細をX-Verseが報せる。

オーディナルは「再帰的碑文」を利用し、クリエイティブな表現の幅を広げている。「チェーン上にコードを置けるから、今日私たちがデジタル化しているものは何でも再現することができる」とヤン氏。

以前は1ブロックあたり4メガバイトしかないという制限から、10メガバイトの高画質写真をビットコインに刻むことは不可能と考えられていた。だが、再帰的碑文を利用すれば、複数のsatoshiにそれぞれ独立した画像を刻み、それらをまとめることが可能になる。

少ないスペース(容量)とコストで、ビットコイン上でジェネレーティブ・アートを作成するためのライブラリを人々が作れるようになった。

開発フロンティアは、再帰的碑文を使った実験へとシフトしている。非中央集権的でパーミッションレスなメディア、出版の可能性を模索するものがいる。そして、より多くの人々を参加可能にするため、オーディナル上でアプリケーションを構築するためのスケーラビリティ・ソリューションの開発者も増えている。

秘密鍵の紛失や持ち主の死去などによるビットコインの消失を考慮に入れると、2100万ビットコインの発行上限に対して、実際には約1800万ビットコインしか存在しないとされている。そして各ビットコインには1億のsatoshiが存在する。

「有限なビットコインのブロックスペース(容量)に刻印されたコンテンツが、ビットコインのブロックチェーンによって守られている、それこそがオーディナルの価値提案だ」とヤン氏は語る。

「これから出てくるものは、驚くほど面白いものになるだろう。しかし、イノベーションが実現するまでには時間がかかることもある。だから、いつ本当のイノベーションが起こるかは予測しにくい。ただ、すでにそのために取り組んでいる人々がいるということだけは言える」とヤン氏は締めくくった。

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