JPモルガンアナリスト「SECはビットコイン現物ETFを承認せざるを得ないだろう」 元SEC委員長も同様の見解
グレイスケール勝訴の影響
米金融大手JPモルガンは、米証券取引委員会(SEC)はビットコインの現物上場投資信託(ETF)を承認せざるを得なくなる可能性が高いとの見解を示した。
同行のアナリストらは、米デジタル資産運用会社グレースケールが、ビットコイン投資ファンド「GBTC」のETF転換を巡る訴訟で、SECに勝訴したことを受け、SECは複数の現物ビットコインETFの申請を承認する可能性が高まったと予測している。
この訴訟は、グレースケールがSECに対して起こしたもの。同社は、SECが2021年から複数のビットコイン先物ETFを承認する一方で、ビットコイン現物を直接保有するETFは却下し続けていることは、恣意的であり投資家に損害を与えていると批判した。対するSECはグレースケールの現物ETF申請を非承認としたのは、ビットコイン先物とは根本的に異なる商品であるためと主張していた。
米連邦高裁は8月29日、グレースケールを支持し、SECに申請却下の見直しを命じた。高裁はグレースケールが申請している商品は、SECがすでに承認しているビットコイン先物と同様の商品であるとの判断を示した上で、SECが説明なしにグレースケールの申請を却下したのは「恣意的で一貫性を欠いた決定だった」と指摘した。
このような背景から、1日に発表されたJPモルガンのメモでは、SECがグレースケールのETF転換申請を拒否するためには、SECには先物ベースのビットコインETFの承認を取り消す必要が生じると解説。このような動きは「SECにとって大変問題となる行動で、恥ずかしいこと」であり、実現する可能性は低いと述べた。
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SEC前委員長の見解
SECの前委員長であるジェイ・クレイトン氏も同様の見解を示した。今月1日、CNBCの「Squawk Box」に出演し、米SECによるビットコインの現物ETFの承認は避けられないとの見解を示した。
ビットコインが証券ではないことは明らかだ。個人投資家や機関投資家がビットコインへのアクセスを望んでいるのは明らかだ。そして重要なのは、受託者または最善の利益を追求する義務を負う、最も信頼のできるプロバイダーが個人投資家にこの商品を提供したいと望んでいることだ。
クレイトン氏は、SECによって先物ETFがすでに承認され、取引されている中、先物商品と現物商品を区別する状態が永遠に続くわけはないと語った。
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ビットコインETFの判断延期
SECは8月31日、ブラックロック、フィデリティ、VanEck、Bitwise、WisdomTree、Invesco、Valkyrieの現物型ビットコインETFの可否判断を少なくとも10月中旬まで延期すると発表した。
Bitwiseは2日、SECの発表を受け、現物ビットコインETFの申請を取り下げた。
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しかし、JPモルガンのアナリストは、SECの判断延期をポジティブに捉えているようだ。
この延期は、単独の申請者に先行者利益を与えるのではなく、複数の現物ビットコインETF申請を一度に承認する可能性を示唆していると思われる
複数のビットコインETFが承認された場合、異なる商品間で手数料の競争が激しくなるため、投資家にとっては大きなメリットがあるとアナリストは指摘。さらにグレースケールの投資ファンドのETF転換が承認された場合、世界最大の現物ビットコインETFとなるため、手数料引き下げの圧力はさらに高まるとアナリストは見ている。
ビットコインETF承認の影響
一方、JPモルガンは、現物型ビットコインETFは、カナダやヨーロッパなど米国以外の国々で、すでに運用されているが、大きく投資家の関心を集めるには至っていないと指摘。ブラックロックなどの金融大手によるETF提供が承認された場合でも、ビットコイン先物などの他の商品から、流動性が流出するだけで、ゼロサムゲームになると予測している。
そのため、ビットコインETFが暗号資産(仮想通貨)市場の転換点になる可能性は低いとの見方を示した。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します