仮想通貨VC大手パラダイム、対SEC裁判でバイナンスを援護

バイナンスを支持する法廷助言書を提出

暗号資産(仮想通貨)ベンチャーキャピタル大手Paradigm(パラダイム)は29日、バイナンスに対して米証券取引委員会(SEC)が起こした訴訟で、バイナンスを支持する法廷助言書を提出した。

「SECは越権行為に該当する可能性がある(通常権限の範囲を超えて行動している)」などと申し立てている。

パラダイムはバイナンスへ直接投資はしておらず、訴訟の結果に直接的な金銭的利害関係はないと強調した。その上で、被告が誰であるかに関係なく、政府の行き過ぎに対して立ち向かうことが重要だとする形だ。

パラダイムは、SECは、バイナンスやコインベースなどに対する裁判を利用することで、規則制定プロセスを行わずに法律を変更しようとしていると意見している。

法廷助言書(Amicus Brief)とは

米国の法廷における制度。裁判当事者以外の第三者が、公式に意見書を提出することを可能にするもの。その内容は裁判で考慮される。

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パラダイムの指摘

今回の法廷助言書では、特にSECによる「投資契約」をめぐる議論が不適切なものであると論じられている。パラダイムは、主に次の3つを論点とした。

  • SECは「投資契約」には「契約」は必要ないというような主張を行っている
  • SECの理論は、あらゆる種類の資産売却を証券法の適用範囲内に置くことになる
  • 仮想通貨規制の制定には議会による判断が必要である

まず1点目について、SECの主張に反して、法文とそれを解釈する判例からは、「投資契約」を構成するためには、将来の価値の提供を約束する契約が必要であることが明らかだと説明している。

これに対して、仮想通貨の販売、特に流通市場での販売の際には、トークンの引き渡し以外は何も約束されることはないと指摘する形だ。

次に2点目に関しては、過去の判例を見ると、裁判所は長年の間、市場原理により資産の価値が上昇する可能性があるということだけでは、その資産の売却を投資契約とするような「利益の合理的な期待」があることを意味しないとの判断をくだしてきたと述べた。

さらに、資産の価値が上がるという共通の希望は共通の利害感心を生む可能性もあるものの、そうした希望だけでは投資契約に伴う「共通の事業」を構成することはないとも続けている。

最後に3点目について、SECは「投資契約」の解釈を不適切に広げて仮想通貨を規制しようとしているが、これは議会を無視しているとの趣旨で論じた。

仮想通貨規制は、経済的・政治的に非常に重要なことであり、SECがその規制を制定する上では「議会の明確な承認」が必要だと述べる格好だ。 90年前に制定された証券法について、77年前に行われた解釈(ハウイーテストのこと)を参照することだけでは不十分だとしている。

ハウィーテストとは

ハウィーテストとは、米国で特定の取引が「投資契約」という証券取引の定義の一つに該当するかどうかを判定するテスト。1946年のHowey社訴訟事件の際に裁判所が「投資契約」の判断基準として定めた。

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背景

パラダイムは、2021年に総額2,800億円規模の仮想通貨投資ファンドを立ち上げるなど業界最大手のベンチャーキャピタルであり、そうしたエクスポージャーの観点からステークホルダーとの見方もできる。

SEC対コインベースの裁判でも、コインベースを支持する法廷助言書を提出しており、「SECによる規制整備が遅れていることで、仮想通貨市場に不確実性が発生している」とSECを批判していた。

SECは、未登録証券を販売していたなどとして、バイナンスを訴えているところだ。その中で価値の上昇が期待されないステーブルコインであるBUSDについても、「BUSDのエコシステム全体の魅力を投資家にアピールし、そこから利益が生み出される可能性を宣伝していた」として有価証券とみなしている。

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