オプション市場で5万ドルが意識されるビットコイン相場をプロが解説|寄稿:仮想NISHI
*本レポートは、暗号資産取引所SBI VCトレードのクリプトアナリストである仮想NISHI(@Nishi8maru)氏が、CoinPostに寄稿した記事です。
ビットコインマーケットレポート(12月6日~12月12日)
ビットコインは12月1日以降、価格上昇が加速している。
その要因として、①12月1日にFRB議長の発言により米金利が低下したこと、米金利低下により②CME、オプションともに資金が大量に流入したこと、③ヒズボラ・ハマスの資金凍結報道によりUSDTが売られ、クリプト市場内での安全資産であるビットコインが買われたことに加えて、④「ヘッジファンドの30日ルール<11月30日>」が過ぎて市場の売り圧が減ったことの4つが影響していると考えられる。
また、オプション市場のポジションの動きが激しくなっている(執筆時点でのビットコイン価格4万3千7百ドル付近)。
足もと
ビットコインの成行注文のアクティブOI(未決済建玉)は高水準となっており(下画像赤枠)、価格が乱高下しやすい状況にある。直近ファンディングレートの上昇も踏まえると、ロングポジションが増加していることが伺える。
現物市場
成行売買を見ると、現物はデリバディブとバランスよく売買されていることが分かる。
また、USDTを用いた中東でのマネーロンダリング疑惑以降、USDTの成行売が断続的に発生しており、それがビットコインの買いに繋がっていると考えられる。
デリバティブ市場
デリバティブ市場は現物市場と価格差がほとんどなく、ニュートラルな状態となっている。
オプション市場
現物渡しで取引されるオプション市場では、現在価格より高い価格帯である5万ドルに建玉が急激に増加(下画像赤枠)していることから、オプション市場の参加者は上昇を予想していると考えられる。
加えて、12月1日よりPCRレシオは急激に低下(下画像黄矢印)した後そのまま低い状態が続いているため、価格が急上昇しているにもかかわらず、市場参加者の強気な状態は変わっていないと捉えることができる。
先物市場
先物市場(CME)のOIは、価格が急騰した10月中旬以降増加しており(下画像赤矢印)、資金流入が続いていることが分かる。内訳を見てみると、価格差益を狙う「Leveraged Funds」はショートポジションの割合が増えている(下画像赤枠)
外部環境
11月以降、他アセットとの相関として、ゴールドとの相関が+0.8とかなり強くなっている(下画像青線)。米株式指数とも徐々に相関(S&P500 と+0.37<下画像黄線>)が高まっている。逆に原油とは強い逆相関の関係にあり、相関は▲0.87 となっている(下画像赤線)。
また米金利の上昇が一服し低下傾向となってから、ビットコインが上昇をはじめていることがこのデータからも分かる。
オンチェーン環境
ハッシュレートは低下しており、次回難易度予想は▲9.05%の易化予想。
直近のクリプト指標
◼️12月6日
Horizen:ZEN v4.1.1 アップグレード米ADP 雇用統計公表
◼️12月7日
BNB Smart Chain:v1.2.15 アップグレード
◼️12月8日
米雇用統計公表
◼️12月12日
Chainlink:ステーキングv0.2 リリースAptos(APT)トークンアンロック米消費者物価指数(CPI):23年11月結果
総括
ビットコイン市場は急騰を続けているが、デリバディブ市場などで買いの過熱感は見られない。デリバディブ市場への資金流入も好調であり、特にオプション市場では5万ドルの建玉が増加しており、市場参加者が上昇を予想していることが見受けられる。
ただしビットコインは今年1年を通して右肩上がりかつ後半に急激な価格上昇となったので、年末においては納税対策として現物が売られる可能性があると考えられる。
画像出典:Tainoko Lab
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します