Weiss Ratings仮想通貨格付け|XRPが高評価に上方修正され、ビットコインが低評価に留まる理由
- Weiss Ratingsの評価基準
- 今月2日にも新たな仮想通貨格付けを公表したWeiss Ratingsは、独自のランキングを、独自のテクノロジーモデル、普及モデル、投資リスクモデル、投資報酬モデルという4つの側面から算出していることを明らかにした。
- 払拭されない仮想通貨に対する疑問点
- ビットコインがなぜC+評価なのか、3000以上の仮想通貨、トークンのデータへのアクセスがあるにも関わらず、その一部しか評価しない理由、A評価が未だ無い理由の詳細をまとめた。
仮想通貨格付け公表のWeiss Rating
今年1月から毎月初旬に仮想通貨格付けを公表しているWeiss Ratingは 1971年に創業された独立格付け会社で、アメリカにおける保険会社、金融機関、株式、上場投資信託、ミューチュアルファンドを始めとする53,000以上の企業、投資対象に格付けを行ってきた。
また2018年からは仮想通貨の格付けも開始し、その格付けが発表されるたびに仮想通貨コミュニティを賑わせている。今月11月に公開された格付けでも仮想通貨XRPが「B」評価を得て単独首位に躍り出るなど、注目された。
最新のWeiss Ratingの結果はこちらから
3000以上あると言われる仮想通貨の中からWeiss Rating社は111の通貨のみを取り上げ評価、最新の格付けではリップル(XRP)が最高評価のB評価を獲得、その他ではステラ、カルダノとイオスの主要3銘柄がWeiss社の「買い」を推奨する「B-」評価を受けた。
また、今回のXRPのB評価が最高評価だった事からも伺える通り、Weiss社は仮想通貨に対して厳しいとも捉えられる評価を下しており、満点のA評価を授かっている仮想通貨銘柄はまだ現れていない。
このような「辛口」評価に対し、仮想通貨カルダノの開発者の一人であるチャールズ・ホスキンソン氏は最初の格付けが発表された1月時点でビットコインに対してA評価を下していない点でWeiss Ratingを非難していた。
ビットコインにA評価を下さない格付けは少し「ネジがゆるい」だろう。
10年近い価値の創造、膨大な成長、市場暴落への耐性や何億ものインフラが全てリーダー無しで維持されている。
ビットコインこそ、スタンダードだ。
このような声に対してWeiss Rating社は、自社公式サイトで格付けの判断基準や何故、仮想通貨の格付けで以下の4つの側面を考慮していると明かした。
仮想通貨の技術
テクノロジーモデルは、そのブロックチェーン自体のパフォーマンスの可能性を評価している。
例えば、どれほどのスピードで処理を行えるのか、どのような規模を有しているか、その管理基準、エネルギー消費にどのように向き合っているか、その台帳上でスマートコントラクトを使えるか、そのアップグレードにおける柔軟性、その他の特別な特徴があるかなどといった点が重要となる。
公式サイトでは、このテクノロジーモデルの例として、携帯電話が挙げられた。
携帯電話も、その処理速度、画質、充電の持ち具合といった技術面での評価を行うことができるとWeiss社は言及している。
仮想通貨の普及度
独自普及モデルは、実生活におけるパフォーマンスに焦点を当てている。
例えば、その取引速度や、手数料、そのネットワークの分散率、開発者コミュニティの規模、そのプロジェクトの人気、人々が実際に使用しているか否かなどがカギとなる。
仮想通貨の投資リスク
文字通り、リスクを測る基準であり、その仮想通貨のボラティリティや下落リスクに焦点が当てられる。
仮想通貨への投資に対する報酬
上昇可能性を分析し、移動平均と比較した利益率などから、”どれほどの利益を出せるか”も重要である。
上記の4点で仮想通貨をそれぞれ吟味した上で、AからEまでの評価が下されている。
今回Weiss社が明らかにした判断基準によるとレーティングの意味は以下の通りだ。
格付け評価
B-以上= Buy(買い)
C = Hold・Avoid(保有/避ける)
D+以下 = Sell(売り)
B-以上の評価がある場合は「買い」、C評価の場合、既に保有している場合「ホールド」、保有していない場合は「避ける」べきだとしている。
D+以下は「売り」を意味するとWeiss社はそれぞれの評価を明確化した。
また10ヶ月近くこのような格付けをWeiss社は発表されているが、今までA評価は出されておらず、最高評価は今月2日に公表された仮想通貨時価総額2位のリップル(XRP)のB評価だ。
仮想通貨に対する疑問点
このように仮想通貨格付けを出しながらも中立的な立場を保つ理由をWeiss社は説明した。
全ての仮想通貨を評価しない理由
Weiss Rating社は3000以上ある仮想通貨の全てを評価しない理由として以下の理由を挙げた。
- 「仮想通貨」と称されるプロジェクトの大半はユティリティトークンである
- プロジェクトの成功から配当を得ることができない
- プロジェクトが成功するに連れ、ユティリティトークンは投機的な側面が薄まる
- 投資家に不利な状況で評価すること自体が過剰評価につながる恐れがある
- (多くの通貨は)普及率が低すぎて分析用データが無い
ユティリティトークンとは
ユティリティトークンは、ユーティリティ(実用性や有用性)があるトークンを指す。サービスやシステムを利用するために使われるトークンを指す。業績などによって配当などが支払われる投資目的のセキュリティトークンとの比較対象として使われる。
ビットコインがC評価である理由
前述した通り仮想通貨で最も人気があり、仮想通貨相場のドミナンスにおいて過半数以上(CoinMarketCapによると本稿執筆時点で52.1%)を誇るビットコインはC評価を受けており、保有している場合はホールド、持っていない場合は避けるべきだと評価されている。
ホスキンソン氏がA評価であるべきだとするビットコインは、広い普及率を誇っていると主張する一方で、その処理速度が低く、スケーラビリティ問題も未だ解決には至っておらず、技術的な側面で問題視する点もあるとWeiss社は指摘している。
またWeiss社はビットコインがC評価である理由に関して、前述の4つの評価基準を構成する項目に関して詳しく説明を行なった。
リスク・報酬:D+(売り)
ビットコインが約10年前の誕生から比較すれば爆発的な成長を記録しているが、その反面高い変動率も伴い、実際ビットコインは昨年末のピーク時に比べると最大70%近く価格が下落している。
報酬:弱い
時価総額1位で市場におけるドミナンスも過半数を占めるビットコインだが、Weiss社は「アルトコインに地位を奪われている。」とし、投資から得られる報酬は弱いという評価を下した。
リスク:高い
この評価の要因としてはやはり、歴史的に見てビットコインの高いボラティリティが大きな要因だ。
技術・普及:B(良い)
普及:高評価
辛口と思われがちなWeiss社の格付けだが、「この面においてビットコインは一番優れている」と高評価し、以下の項目ではビットコインは優れていると述べた。
- ネットワークのセキュリティ
- 使用率
- 開発者の参加率
- ユーザーからの人気
さすが仮想通貨の元祖だけあって、使用率や人気に関してビットコインは良いとしている。
技術:Fair(普通)
前述した通りWeiss社はセキュリティでは高く評価しているが、以下のような課題もあると指摘した。
- スケーラビリティ(拡張性)問題
- 持続性
- ガバナンスの不足
- アップグレードの難易度
- 古くなっている技術をまだ利用している
ビットコインに対する評価が誤解されやすいが、Weissが評価する点が見えにくいからかもしれない。
しかしWeiss Ratingは確立された基準を持って、正当に仮想通貨を評価している。
その為、ビットコインには確かに良い点はあるものの、同時に一般的に仮想通貨業界が目をつぶりがちな問題点を躊躇せずに指摘していくとWeiss Rating社は公平な立場を保つことを表明している。
仮想通貨がA評価を獲得するのに必要な項目
仮想通貨格付けで「A」評価がつけられないことの理由として、普及率と技術的な観点の双方で突出した仮想通貨がまだ存在していないことを挙げた。
XRP、XLM、ADAとEOSが高評価である要因
XRP、XLM、ADAとEOSの4銘柄がまだ完全とは言えないものの、技術と普及の面で両立されつつあり、正しい方向に向かっていることが伺えるため、今月の格付けで買いを指す「B-」評価以上を得られたとしている。
しかしながら、高い普及率を誇るビットコインとは対照的に、EOSなどの仮想通貨は技術的に優れていると評価する一方、その普及率はビットコインにはまだ及ばないと課題を指摘した。
目的が明確化している各プロジェクト
XRPとXLMは送金に特化して企業や団体層から支持を集めている。
対照的にEOSやADAはバーチャルなコミュニティ形成に注力しており、様々なプロジェクトの方向性を決められるとWeissは言及し、これらの4通貨の様に、目的達成の為に着実と進歩が見られることが高評価に繋がっている様だ。
まとめ
この「普及」と「技術的な」側面を考慮すると、11月に公開された最新の格付けで、多くの提携先を持ち、手数料が安く、処理速度も速いプロダクトの提供やテストにまで至っているリップル(XRP)が一番高いBの評価を経たということになる様だ。
しかし、今後ビットコインがライトニングネットワークなどを実装、また普及後に向けて課題となるスケーリングの技術改善が進むにつれ、さらなる順位変動も予想あるだろう。
仮想通貨市場が停滞し、仮想通貨市場のボラティリティが一般の株式市場にもなってきている今こそ、仮想通貨プロジェクトは本質的な技術面と実際的な仮想通貨の使用事例に着目、技術ベースに関心を持ついい機会になるかもしれない。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します