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ビットコインなどの仮想通貨マイニングが地球温暖化に与える影響を考察する論文が発表

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

仮想通貨は地球環境の敵なのか
仮想通貨のマイニングや取引には、大量の電力が使われている。 ハワイ大学の研究チームは、ビットコインの使用により今後30年で2℃以上の気温上昇が引き起こされると批判した。一方で、単純論理による批判を諫(いさ)める声もある。
論点は電力消費量でなく二酸化炭素の排出量
ピッツバーグ大学のKelly博士は、電力消費よりも由来を気にすべきだと主張。マイニングファームは、更に電気代の安い米国西海岸やアイスランドへ移り始めているが、同地では水力や地熱エネルギーが発電に使われている。
マイニングとは
仮想通貨の取引記録をブロックチェーンに追記する際、膨大な計算が必要となる。 世界中の有志からコンピューターリソースを募って「共有・追記」を行なっているが、この追記に成功した場合、マイナー(採掘者)に対して報酬が支払われる。

▶️CoinPost:仮想通貨用語集

仮想通貨マイニングは環境に悪いのか

ビットコインをはじめとした仮想通貨のマイニングには、大量の電力も高性能コンピューターも必要だ。

中国などの巨大マイニングファームを目にして、仮想通貨による環境破壊を懸念する人々は多い。

マイニングだけでなく、世界中で行われる仮想通貨取引にもたくさんの電力が消費されている。

しかし一方で、「エネルギーの消費=悪」と論理を単純化し、批判が加熱するのを諫める声も上がっている。

ビットコインが地球の気温を2℃も上げる?

気象変動の学際的な研究を掲載する「Nature Climate Change」誌でハワイ大学マノア校のCamilo Mora氏(以下Mora氏)らは仮想通貨による環境破壊を指摘した。

ビットコインの予測使用量を参考に予測すると、ビットコイン単体でも今後30年で2℃以上の気温上昇を引き起す量の二酸化炭素が排出されるという。

2020年以降の地球温暖化対策を定めたパリ協定では、産業革命前からの世界平均気温上昇を2℃未満に抑えるという目標が掲げられている。

今回の2℃上昇という数字は、2015年に採択されたパリ協定の目標を打ち壊す大きな数字だ。

共著者の一人である同大学のKatie Taladay氏は、こう述べている。

「現在、進行する気候変動の主因は輸送、住宅、食料であると考えられているが、この研究結果はビットコインをこのリストに加えるべきであることを示している」

またロイター通信の報じたところでは、筆頭著者のMora氏は

「どの観点から見ても、(仮想通貨のマイニングや利用は)大量の電力を消費する。環境に悪いビジネスだという意味だ」

とトムソン・ロイター財団に語っている。

「エネルギーの消費=悪」の単純論理ではない

一方で、無暗な批判の過熱を諫める声もある。

ピッツバーグ大学でクリーンエネルギー技術を研究するKatrina Kelly-Pitou博士(以下Kelly博士)は、これまでのビットコインと消費エネルギーをめぐる議論は、単純化され過ぎてきたと指摘した。

「エネルギーの消費=悪」といったシンプルな論理で済む話ではないのだ。

そもそもエネルギーの削減はコストの削減でもある。

かつて電車や車、飛行機が辿ったのと同じく、自然の流れでデータセンターやコンピューターといった技術も省エネ化が進むはずだとKelly博士は自身のコラムで語っている。

マイニングコストの90%は電気代だから、当然マイニングファームは消費電力を削減したい立場にある。

更にKelly博士は、再生可能エネルギーの恩恵を人々が考慮していないと述べた。

二酸化炭素の排出が少ない電気を使えば気温上昇に加担せずに済むから、本題は消費電力量ではなく二酸化炭素排出量なのだ。

と言及し、ビットコインの消費電力よりもその電力の由来の方が重要であると指摘した。

環境に優しいマイニングは進むか

またKelly博士はマイニングファームの移動について言及している。

これまでマイニングの主戦場であった中国では、いまだに60%もの電力が石炭によって発電されている。

石炭を使った発電が大量の二酸化炭素を放出することは、言うまでもないが、マイニングファームは電気代の安い新天地を求めて移動し始めている傾向が最近見られてきている。

ウォールストリートジャーナルによれば、アメリカのワシントン州やオレゴン州など西海岸北西部に集積が始まっているという。

同紙によれば、ワシントン州はコロンビア川の大規模水力発電による恩恵を受け、全米で最も電気代が安い州なのだという。水力発電は二酸化炭素の排出量が少ないことで知られる。

同様にガーディアン紙によれば、アイスランドもマイニングの聖地となりつつある模様。

地熱と水力エネルギーの豊富なアイスランドは、100%再生可能なエネルギーで電力が賄われている。

このように同じ電力を使ったとしても、どこでどのような電力を使用するかで全く別の話となる。

仮想通貨は確かに大量の電気を必要とするのは間違いないが、それだけで環境の敵としてみなすのは話が早すぎるのだ。

しかし無論、マイニング業界は仮想通貨が世界に歓迎されるよう、その影響を気に掛けていく必要があるだろう。

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