
ビットコイン準備金とは?
「ビットコイン準備金」とは、国家や自治体がビットコイン(BTC)を戦略的資産として公的に保有し、インフレ対策や財政安定化、通貨分散などを目的に活用しようとする取り組みです。金(ゴールド)のように、価値の保存手段としてBTCを組み入れる構想が世界各地で進んでいます。
2025年現在、国や州が「デジタル金」を備蓄する動きが加速。ビットコイン準備金をめぐる政策は、主に以下の3つの軸で動いています。
本記事では、上記3つのセクターで進行中のビットコイン準備金政策の現状と最新動向を詳しく解説します。なお、企業が自社資産としてビットコインを保有する動きについては、下記の別記事をご参照ください。
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米国各州のビットコイン準備金に関する動向

2025年7月13日 *出典:Bitcoin laws
連邦政府とは別に、米国約20州で「戦略的ビットコイン準備金」法案が提出されている。これらの法案はビットコインを戦略的資産と位置づけ、州財政の安定化や経済競争力の向上を狙いとしている。
ニューハンプシャー州では2025年5月7日、全米で初めて関連法案が成立し、州レベルでビットコインを公的資産として扱う時代が幕を開けた。
テキサス州は米国で2番目に人口が多く、経済規模も大きい。暗号資産マイニング能力は他州の約3倍を誇り、リーダーシップを発揮している。そのため、同州の動向は大きな影響力を持つと見られている。
先行している州の法案内容

2025年7月13日 出典:Bitcoin laws
州名 | 進行中の法案 | 最終更新日 | 概要 |
---|---|---|---|
ニューハンプシャー州 | HB302 | 2025/5/7 | 可決。前年の平均時価総額が5,000億ドルを超えるデジタル資産に対して、州の公的資金の5%以内で購入・保有を認める。 |
アリゾナ州 | HB2749、SB1025、SB1373 | 2025/7/2 | HB2749が可決:州が管理する未請求資産やエアドロップ、ステーキング報酬を州管理の準備金口座(リザーブ)に移管する内容。HB2324はホブズ知事が拒否行使:犯罪捜査で押収した仮想通貨による準備基金創設を定める内容。 SB1025は否決(その後再提出へ)。SB 1373についても、ケイティ・ホブス知事は市場のボラティリティを理由に却下した。 |
オクラホマ州 | HB1203 | 2025/3/25 | 「Strategic Bitcoin Reserve Act」が下院通過、上院へ。時価総額5,000億ドル以上のデジタル資産への投資を認め、退職年金基金への適用も含まれる。 |
テキサス州 | SB21 | 2025/6/23 | 「テキサス戦略的ビットコイン準備金」設立を認めるSB21を可決。時価総額5,000億ドル以上の仮想通貨への州投資を認める内容、ビットコインのみ、初期投資額は千万ドル強となる見込み。加えて、「HB4488」も可決、将来設立されるビットコイン(BTC)準備金を恒久基金として保護する。 |
ニューハンプシャー州の法案成立は、暗号資産を「公的準備資産」として明確に位置づけた画期的な事例だ。これによりビットコインは金(ゴールド)と同様に州財政の安定資産として扱われ、市場参加者の構成にも質的な変化が見込まれる。今後、他州や連邦レベルで同様の制度が広がる可能性がある。
一方アリゾナ州では、ケイティ・ホブス知事が「障害者サービスへの資金提供問題が解決するまですべての法案に拒否権を行使する」と宣言しており、行方は依然として不透明だ。SB1373が成立すれば、州政府によるビットコイン保有という二例目となり、さらなる波及効果が期待される。
主な目的
- インフレヘッジ(「デジタルゴールド」としてのビットコインの特性)
- 公共資金の分散投資と財政リスクの軽減
- 州のデジタル資産関連ビジネス誘致による経済成長
一方で、ボラティリティ(価格変動の大きさ)や規制リスクを理由に法案を却下した州もあり、各州ごとの温度差が大きい点が特徴です。また、ユタ、モンタナ、ノースダコタ、ペンシルベニア、サウスダコタ、ワイオミングなどでは既に否決事例があり、2025年2月14日にペンシルベニア州で却下された法案(HB2664)は、高いボラティリティや公共資金への適合性が大きな懸念材料であることを改めて示しました。
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+解説記事
戦略的ビットコイン備蓄と米国の仮想通貨政策

2025年3月、米ホワイトハウスは「戦略的ビットコイン準備金(Strategic Bitcoin Reserve)」と「米国デジタル資産備蓄(U.S. Digital Asset Stockpile)」の設立を発表。刑事・民事で押収した暗号資産を国家備蓄として保持する新方針を打ち出しました。
戦略的ビットコイン準備金(SBR)
これまで売却されてきたビットコイン押収資産を、今後は備蓄として維持。約20万BTC *(3.3兆円相当、25年8月時点)が市場に放出されない方針は、需給面でも注目を集めています。これは予算への影響を最小限に抑えた「予算中立型」の備蓄政策と言えます。 *一部報道によると、反感対象分を除いた、米国政府のBTC保有量は2.9万BTC程度という見方もあります。
米国デジタル資産備蓄(UDAS)
イーサリアムなどその他の暗号資産については、別枠で「米国デジタル資産備蓄」として一括管理。市場からの買い増しはせず、必要に応じて財務長官が売却判断を行う体制です。
最新動向:ヴァンス副大統領が3段階政策を発表
2025年5月、ヴァンス副大統領は大型カンファレンス「Bitcoin 2025」にて、トランプ政権の仮想通貨政策を「3つのステップ」に分類して説明しました。
- ① 前政権の過剰規制を撤回: SEC主導の訴訟や「チョークポイント2.0」を明確に否定
- ② ステーブルコイン法整備: GENIUS法案による規制明確化を推進
- ③ 仮想通貨の主流経済統合: 技術革新と市場構造法案で、仮想通貨の存在を制度的に確立
ヴァンス氏は「ビットコインは今後10年、米国にとって戦略資産になる」と述べ、自身が50万ドル相当のBTCを保有していることも明かしました。
401k年金制度への投資制限も撤廃
2025年5月、米労働省は、仮想通貨を401k(確定拠出年金)の投資対象から事実上排除していた2022年の規制を正式撤廃。「投資判断は官僚ではなく受託者(雇用主)が行うべき」とし、中立的立場へ回帰しました。
今後は、ビットコインやイーサリアム、ミームコインを含む幅広い暗号資産が401k制度内でも選択肢となる可能性があります。
トランプ政権下の動きは、「米国政府の仮想通貨保有」が一時的な没収処分から「戦略的政策資産」への格上げに向かっている兆しといえます。ステーブルコインや年金制度など制度面の整備とあわせ、国としての本格的な位置づけが注目されます。
諸外国のビットコイン備蓄戦略
米国に限らず、国家レベルでビットコインを戦略資産として取り込む国々が増えています。ここでは、代表的な5カ国の取り組みを紹介します。
エルサルバドル:先駆者としての継続戦略
2021年に世界初の「ビットコイン法定通貨化」を実施。現在は 約6,190 BTC を国家備蓄として保有しています。IMFとの合意により、民間のBTC決済義務は撤廃されましたが、政府としての保有方針は継続中です。
パキスタン:規制整備と国家戦略の両立
パキスタン政府は2025年、仮想通貨評議会を設立し、バイナンス前CEOのCZ氏を顧問に任命。さらに7月には、独立規制機関「PVARA(仮想通貨規制庁)」を発足させました。
同国は「ビットコイン2025」カンファレンスで戦略的BTC準備金の創設計画を表明。電力2,000MWをマイニング・AI用途に割当て、6月にはMicroStrategyのセイラー会長とも面談し、戦略支援を受けています。
カザフスタン:押収資産と国営マイニングの活用
2025年6月、カザフスタン中央銀行は、押収仮想通貨+国営マイニング産出分を活用した「国家仮想通貨準備金」創設を発表。BTCハッシュレート世界シェア13%を誇る同国は、透明な帳簿管理と単一体制による備蓄運用を目指しています。
ブータン:GDPの4割に相当するBTCを保有
ブータン政府は、約13億ドル(約1,880億円)相当のビットコインを保有。これは同国GDPの約40%に相当します。2019年頃からBTCマイニングを開始し、国家ファンド「Druk Holding」が金に代わる保存資産として活用しています。
インド:政策提言段階にとどまる
インド与党BJPの報道官が「BTC準備金の試験導入」を提案したものの、現時点では個人見解レベルにとどまります。仮想通貨売却益には30%課税がある一方で、明確な規制枠組みは整備されていません。
米国のビットコイン準備金法案に関する質問
質問1. ビットコイン準備金法案の主な目的は?
回答1. ビットコイン準備金法案の主な目的は、ビットコインを「デジタルゴールド」として活用し、インフレヘッジ(物価上昇リスクへの対策)や公共資金の分散投資、財政リスクの軽減を図ることです。また、州のデジタル資産関連ビジネスを誘致し、経済成長を促進する狙いもあります。
質問2. テキサス州が注目を集める理由は?
回答2. テキサス州は全米で2番目に人口が多く、経済規模も大きい州です。さらに、暗号資産マイニング能力が他州の約3倍と圧倒的で、ビットコイン関連のイニシアチブでリーダーシップを発揮しています。そのため、ビットコイン準備金法案を進める上で、同州の動向は大きな影響力を持つと考えられています。
質問3. テキサス州の最新動向は?
回答3. 2025年6月3日、テキサス州議会は「テキサス戦略的ビットコイン準備金」設立を認めるSB21法案を可決しました。グレッグ・アボット州知事の署名待ちで、法案が成立すれば州の公的資金で時価総額5,000億ドル以上のビットコインへの投資が可能になります。初期投資額は千万ドル強と見込まれています。
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まとめ:今後の展望
「戦略的ビットコイン準備金」の創設を掲げるトランプ政権の構想は、インフレ対策や国債・ドル防衛といった国家財政上の戦略と深く結びついています。一方で、州レベルではテキサスやフロリダ、アリゾナなどが独自のビットコイン備蓄案を相次いで提出し、連邦政府を先行する形で暗号資産を公的資産とする流れを促進中です。
米国議会にはシンシア・ルミス上院議員(共和党)のように、5年間で100万BTCを備蓄する「ビットコイン法案」を提出する議員もいる。
関連:100万BTC取得目指す ルミス議員、トランプ大統領のビットコイン準備金計画を法制化するBITCOIN法案を再提出
2025年3月、ビットコイン推進派として知られるシンシア・ルミス上院議員(ワイオミング州・共和党)が、トランプ政権の構想を後押しするかたちで「5年間で100万BTCの備蓄を目指す法案」を再提出しました。25年7月末時点でこの法案は、上院では「S.954」として提出され、金融・住宅・都市問題委員会に付託されています。さらに下院でも関連法案(HB2032)が提出され、金融サービス委員会に付託中です。
いずれも審議はまだ初期段階の「導入(Introduced)」ステータスにあり、今後の委員会審査と本会議での進展が注目されます。
現段階では押収した仮想通貨を準備金に充てる動きや、「州単位の取り組み」の方が実際の可決に近いとの見方があります。実際、各州が仮想通貨を活用しようとする狙いはインフレヘッジや分散投資が中心で、法案を否決する州もあるなど、「ボラティリティの高さ」や「公的資金への適合性」が今なお大きな論点です。
しかしながら、州ごとのイニシアチブが徐々に広がれば、最終的にはトランプ政権の「戦略的ビットコイン準備金」構想とも合流し、連邦政府の政策に大きく影響する可能性が十分に考えられます。3月に開催予定のホワイトハウス「仮想通貨サミット」や議会審議の行方によっては、ビットコインを国家レベルで保有・活用するシナリオがさらに現実味を帯びるでしょう。
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