突破されるのは何十年も先か
米グーグルが9日に発表した新量子チップ「Willow」が、先週ビットコイン(BTC)の価格が10万ドルを突破した後の急落と重なり、暗号化されたプライベートキーが解読されるリスクへの懸念を再燃させた。
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Willowチップは量子コンピュータの重要な進展を示すものだが、その105キュービットという性能は、ビットコインの楕円曲線デジタル署名アルゴリズム(ECDSA)やセキュアハッシュアルゴリズム(SHA-256)を現実的に攻撃するには遠く及ばないと、投資銀行Bernsteinのアナリスト、ゴータム・チュガニ氏らが指摘した。
ECDSAはプライベートキーを保護し、ビットコイン取引のデジタル署名を可能にする暗号アルゴリズムであり、SHA-256はトランザクションデータをハッシュ化することで台帳の整合性を確保し、ビットコインのプルーフ・オブ・ワーク(PoW)メカニズムにおいて重要な役割を果たしている。
「ビットコイン開発者たちは量子コンピューティングに備えるべきか?それはその通りだが、実用的な脅威は数十年先の話だ」とアナリストや物理学者たちは述べた。一方で、ビットコインの開発者コミュニティでは量子耐性を持つ暗号方式への移行が議論されている。
量子コンピュータの脅威に対処するためには量子耐性を持つ署名を実装する必要があるが、これにはトレードオフが伴うと、Bitcoin STAMPSの開発者であるMike In Space氏は警告した。これらの署名はサイズが大きくなるため、ブロックサイズの増加を伴うハードフォークが必要となり、ノード運用者にストレージや帯域幅の負担を増加させる可能性があるという。
一方で、量子コンピューティングの脅威が現実化するタイムスケールに関しては意見が分かれている。仮想通貨ヘッジファンドCapriole Investmentsの創設者チャールズ・エドワーズ氏は、2,500個の論理量子ビットでSHA-256が破られる可能性があるとし、5~10年以内に量子脅威が現実化する可能性を50%と見積もった。
しかし、ビットコインの暗号技術には現時点では安全性が保たれているとビットコイン起業家のベン・シグマン氏は指摘した。ECDSAの破壊には数百万量子ビット、SHA-256の破壊にはさらに多くの量子ビットが必要だという。
さらに、ソラナ開発者のマート・ムムタズ氏はSNSで「もし近い将来に暗号技術が破られる可能性が少しでもあるなら、それは実際の核兵器以上に核的な脅威になる。政府がそんな事態を夢見ることすら許すわけがない」と話した。
実際、暗号技術の脅威は仮想通貨にとどまらず、オンラインバンキングやクレジットカード情報、政府の機密通信、医療システムなど、広範な分野に影響を及ぼす可能性がある。しかし、理論的に実現可能であっても、実用化される現実性は極めて低いと考えられている。
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一方、量子コンピューティングの進展により、暗号技術が完全に破られた場合でも、ビットコインの創設者サトシ・ナカモトは2010年のBitcoinTalkの投稿で指針を示していた。ハッシュアルゴリズムが破られた場合、特定のブロックナンバー以降で新しいハッシュ関数を採用し、順次移行することを提案していた。
それでも、早期にマイニングされた110万BTCに対する懸念が高まっている。アバランチの創設者エミン・ギュン・シラー氏は、これらのコインが古い形式のP2PK(Pay-To-Public-Key)で保管されているため、量子コンピューティングが脅威となった場合に攻撃のリスクが増すと警告している。
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