仮想通貨の脅威になるか
米Googleは12月9日、105個の量子ビットを搭載する新量子チップ「Willow」を発表した。この発表を受け、量子コンピューティングの進展が仮想通貨やブロックチェーンの堅牢な暗号技術に与える突破リスクが懸念されている。ビットコイン(BTC)はこの発表の影響も嫌気され、前日比2.6%下落した。
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量子コンピュータは、従来のコンピュータでは解けない複雑な問題を解決する可能性を秘めているが、その進化は暗号技術に対する潜在的な脅威として以前から注目されている。量子コンピューティングの性能向上により、暗号アルゴリズムの解読リスクが指摘される場面も増えている。
「Willow」は、「量子エラー訂正」と「量子コンピュータ性能の新たなベンチマーク」という2つの重要な成果を達成した。量子エラー訂正では、量子ビットの数を増やすほどエラー率が指数関数的に減少する「閾値以下」の状態を初めて実現。3×3、5×5、7×7と量子ビットの配列を拡大する実験では、エラー率を毎回半分に削減することに成功した。
さらに、「ランダム回路サンプリング(RCS)」と呼ばれる性能ベンチマークでは、Willowが5分未満で計算を完了。この計算は現行のスーパーコンピュータでは10セプティリオン年(10の25乗年)かかるとされており、量子計算の能力を劇的に向上させた。
一方で、アバランチ(AVAX)の開発を手がけるAva Labs創設者のEmin Gün Sirer氏は、「現時点では量子コンピュータがブロックチェーン技術を脅かす現実的なリスクはない」と強調している。特に、ビットコインやアバランチのX/Pチェーンでは、公開鍵を直接公開しない仕組みにより、量子攻撃に対する耐性が維持されている。
Sirer氏によると、アバランチのセキュリティは、取引時に一瞬公開される公開鍵の脆弱な時間帯を最小限に抑えることで確保されている。具体的には、アバランチのネットワーク速度では攻撃可能時間が1秒程度しかなく、量子コンピュータの現行技術ではこの短時間で暗号解読は不可能だという。
また、一部のブロックチェーン専門家は、将来的に量子コンピュータによる突破に耐性を持つ新たな暗号アルゴリズムが多くのブロックチェーンに導入される可能性があるとの見解を示している。
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