日本のブロックチェーン技術発展をリードするのは『金融業界』ではなく『エネルギー業界』なのか?
- 2018年初めに福島で大規模なブロックチェーンを使用した実験が行われる
- エネルギー分野で、ブロックチェーン技術及び、仮想通貨の使用が検討されておりブロックチェーン技術を使用しP2Pのブロックチェーンベースの電力取引プラットホーム上で電力の売買ができるようになる
- 電力をビットコインで決済するサービスが広がりを見せている
- coincheckが電気代をビットコインで決済できるサービスをすでに提供しており、bitFlyer・Bitpointもそのサービス提供することを発表している
2011年の福島の原子力発電所のメルトダウン以降、柏崎の原子力発電所が再稼働に向け審査基準を合格するというビッグニュースが報じられたため、東北地方で興味深いブロックチェーンを使用した装置の実験が始動したというエネルギーに関するニュースを見逃していてしまっても無理はありません。もしこの実験が成功すれば、福島だけでなく日本全体の電気の消費、生成、商売の在り方を一新させるかもしれません。
ビットコイン関連の発明が、この日出づる国、日本でようやく見受けられるようになりました。そして、2017年は、中国で取引所が10月初頭に完全な監視下に置かれたことや、仮想通貨の取り締まりなど、波乱の年ではありましたが、日本の政策立案者、業界リーダー、そして、技術者たちは仮想通貨に対して比較的前向きに捉えているようです。彼らは、中国で仮想通貨が規制された今をチャンスと見て、日本がビットコイン関連で一歩抜きん出ることができるのではないかと考えています。
多くの人がビットコインの進歩に比べると、ブロックチェーン関連の発明はまだ出遅れているのではないかと指摘していますが、日本のエネルギー業界がこのブロックチェーンの分野に刺激を与えることができるのではないでしょうか。
初期に起こりうる問題
2014年のマウントゴックスの破産は未だ日本に影響を与え、一部の人は、これがブロックチェーン分野の発展をも遅らせていると主張しています。これによってビットコインに関連するブロックチェーン技術は、日本の保守派の人たちの信頼を取り戻せていないのです。
実際、東京で行われたテックインアジアの会議で、仮想通貨取引所を運営する bitFlyerのCEOである加納裕三氏(以下、加納氏)は、主題の不確定要素に関しては触れませんでした。加納氏は、日本国民が引っ越しをする際、地方自治体で行う住所変更は痛ましいほどアナログなプロセスだと語りました。テクノロジーが発展した日本で、多くの基本的な手続きがまだアナログのまま残っているのです。
加納氏は、「上記にも挙げた日本の中央システムでの手続きは、もっと簡潔に済ませることができます。この分野では、日本は比較的後進的ですが、ブロックチェーン技術を使うことで簡潔にすることができるのです。」と語りました。ドバイでは土地管理をブロックチェーンで行うことが進められているなど、日本は出遅れているように思えます。
ちなみに、加納氏及び、彼の同僚たちはテックインアジアに参加できることに対して、数ヶ月前から非常に喜ばしく思っていました。今年の8月にbitFlyerは、取引所をアメリカにも開設することを発表しましたし、9月の下旬には、日本の金融庁から11社がライセンスを取得しその中にはbitFlyerも含まれています。
金融庁が発表した仮想通貨業者登録一覧の詳細です。
他の日本のテクノロジー分野で活躍する人々もbitFlyerのCEOである加納氏に賛同しています。三菱UFJファイナンシャルグループで第一アナリストを務める藤井達人氏は、日本人の金融取引における紙面ベースの好みは、フィンテックの先駆者にとって、ユニークな挑戦となるが、解決できないほどのものではないと語っています。彼は「ブロックチェーン上でどのようにして紙面で支払いをするのですか」という問いに対し「私たちはそれをデジタル化して保管することによって、チェックで払うという文化を損なわずに済むと思っています」と答えました。
そして、もしブロックチェーン技術がこの分野にとっての刺激となるのであれば、もしかしたら、この技術をリードするのは金融業界ではなく、エネルギー業界になるかもしれません。
ブロックチェーンのエネルギー業界への活用
福島でのブロックチェーン技術を使用したエネルギー実験は幅広く、再生可能エネルギーの有効活用への期待から”スマート”なエネルギー供給網と呼ばれています。初期実験として、ブロックチェーン技術によりエネルギーデータが運営されるプラットフォームにその地域の1000世帯を移行します。
この実験の支持者は、家庭内でのソーラー発電や再生可能エネルギーを使用する発電により、過量の電力を生み出し、それを他の家庭に分配することで、エネルギー分野で”シェア”文化を普及させることができるのではないかと語っています。
そして、世帯間のやり取りは、全てブロックチェーン上に記録され、この改ざん不可能なデータブロックは誰からでもアクセス可能にすることができるのです。
この計画は、2018年の1月1日に開始される予定で、地域のテックスタートアップである会津ラボの発案のもと、東京基盤の電力供給社であるエナリスと共同でプロジェクトを進めています。後者は、実験が成功すると、日本にとって”新しい電力サービス”を創出することと同意義であるとしています。
さらなる活用
日本のエネルギー業界は、目まぐるしく変化しています。2017年の初めには、日本の超大手である東京電力株式会社(以下、TEPCO)は、約4億円をドイツのConjouleという企業が開発するブロックチェーン技術を使用したP2Pエネルギー取引プラットフォームfに投資しました。TEPCOは、「ブロックチェーン技術は、エネルギーエコシステムの中で、何が可能であるかを再定義してくれます」と主張しました。
さらに、子会社であるBitpointの仮想通貨取引プラットフォームが法的に認められたというニュースに続き、その親会社であるRemixpointは全国的なビットコインでエネルギー支払いシステムの発表を行いました。そのシステムは、ビットコインの使用を奨励し、仮想通貨で支払いを行うユーザーに対して、値引きも提供します。
またCoincheckでも丸紅グループの電力会社と提携し、ビットコイン決済プランという値引きがついているサービスを提供しています。このサービスは全国に広がりを見せています。
bitFlyerは複数の大手LPガス販売事業者と共同してガス料金をビットコインで決済するプロジェクトを発足させ、ブロックチェーン技術の活用方法についても検討していくと発表しています。
アジア太平洋地域でも、根本的なエネルギーの在り方を変える可能性を秘める、ブロックチェーン技術のエネルギー分野での使用を推しています。オーストラリアのPower Ledger計画(P2Pのブロックチェーンベースのエネルギー取引プラットフォーム)も福島で実施される実験と現在では知っている人もいるBrooklyn microgrid(P2Pのブロックチェーンベースのエネルギー取引プラットフォーム)とも大差ありません。
積極的な政策
日本では、ブロックチェーン技術の発展に対して保守的な人々が多く存在し、官僚的であるがために、様々な分野での発展を妨げてしまっています。よって、中央政府の政策立案者や業界リーダーがブロックチェーンの発展を望んでいるのにも関わらず、この技術の実用化のスピードは、痛ましいほど遅くなってしまっています。
しかし、エネルギー分野では、ブロックチェーン技術及び、仮想通貨の実用、そして、適正化を真剣に捉えており、順調に進み始めています。もし官僚や大衆がこのエネルギー分野の発展に影響を受けることができたのなら、日本のブロックチェーンの発展スピードは劇的に上がることになるでしょう。
Japan’s energy sector to pioneer blockchain initiatives
Oct 10, 2017 by Tim Alper
参考記事はこちら
CoinPostの考察
技術先進国である日本でブロックチェーン技術がなかなか採用されない中、このようにエネルギー分野で採用されるニュースも出始めています。
結果的に、多くの人にこの技術が認知されるようになり、他の事業でも利用することが検討され、どのようにしてそれぞれの分野に取り入れ、最大限活用できるのかを考えることで技術や経済の発展に繋がるでしょう。
まずは実験が成功し、ブロックチェーン技術が普及することを期待しましょう。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します