ZKプルーフの生成コストをAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)の約40分の1に抑え、「ZK経済圏のAWS」とも称される分散型ゼロ知識(ZK)コンピューティングプラットフォーム、Boundlessが新たなプロダクトを発表した。「Boundless Shield」は、オンチェーン金融における機密性と規制対応を両立させるプライベート動作環境だ。
BoundlessのCEOであるシヴ・シャンカール(Shiv Shankar)氏は、コインベース、東南アジアのライドシェア・決済アプリGrab、Lyftでエンジニアリング・オペレーションリーダーを歴任した。来日の機会にCoinPostのインタビューに応じ、ZKVMからShieldに至る経緯、オンチェーンで価値を動かす企業がプライベート実行レイヤーを必要とする理由、日本市場への見方などを話した。
コンプライアンスの現場が製品設計を変えた
コインベース、Grab、Lyftでの経験は、「正しいやり方でやること」の価値を骨身に染み込ませてくれました。チームに常に伝えている第一原則は「Be legit, stay legit(正当であれ、正当であり続けろ)」です。近道は必ず後で問題になる。
Lyftでコンプライアンス改革を任されたとき、CEOから与えられたのは完全な裁量でした。「6か月で直せ、方法は問わない」と。その自由があったからこそ、システムをゼロから設計し直せた。結果として、数兆円規模のコンプライアンスリスクを事実上ゼロにまで削減できました。
FinTech業界は、世間が思っているよりはるかに複雑です。決済アプリは単にユーザー同士をつなぐだけではない。コンプライアンス、監査、リスクモデリング、カスタマーサポート、紛争解決、これらすべてが必須の業務です。技術的な問題をすべて解決したとしても、法務部門がサインしなければ意味がない。その現実を生きてきた経験は、製品設計のすべてを変えます。
Boundless Shieldはその経験から生まれたものです。多くのクリプトプロダクトは、最高リスク責任者やステーブルコイン規制当局と向き合ったことのないエンジニアによって作られています。私たちはその対話を想定してShieldを設計しました。
ZKVMからBoundless Shieldへ
3つの層があり、それぞれが次の層を支える構造になっています。
基盤となるのがZKVMです。ゼロ知識仮想マシンと呼ばれるもので、端的に言えば計算を圧縮する技術です。複雑な計算をオンチェーンで繰り返す代わりに、オフチェーンで実行して「この計算は正しく行われた」という小さな証明だけをチェーンに送る。金融リスクモデルやステーブルコインの準備金証明をスマートコントラクト上でネイティブに実行すると膨大なガス代がかかりますが、証明だけを送ればコストはほぼゼロになります。
第2層はBoundless Networkです。ZK計算の分散型マーケットプレイスで、AWSのGPUやスポットインスタンスに相当しますが、EthereumやBitcoinのようにパーミッションレスで動きます。誰でも自分のマシンを接続して貢献できる。私たちが取り組んだのは、参加するすべてのノードを誠実に稼働させ、担った仕事に対して適切に報酬を与える仕組みの設計です。ZK自体の特性を活用して実現しました。このメカニズムを「Proof of Verifiable Work」と呼んでいます。コスト面では、10億コンピュータサイクルあたりAWSで約2ドルのところ、Boundlessでは5セントです。
第3層がBoundless Shieldです。オンチェーン金融向けのプライベート動作環境で、ステーブルコイン発行体、決済企業、RWAプラットフォーム、企業財務など、実際にオンチェーンで資金を動かす機関が利用する層として位置づけています。
機密性の高い金融情報を秘密に保ちながら、規制当局・監査人・内部リスクチームが職務を遂行するために必要な情報を提供する、この2つを同時に実現します。歴史的にこの2つは相反するものでしたが、Shieldはその緊張を解消します。
これを可能にするZKの特性はシンプルです。データそのものを開示せずに、何かが真実であることを証明できる。
たとえば、ステーブルコイン発行体は流通するトークンが完全に裏付けられていることを、償還や取引相手の台帳全体を公開せずに証明できます。
決済企業は国際送金が制裁に抵触しないことを、送金者・受取人・金額をネット上に晒さずに証明できる。不動産トークン化プラットフォームは、保有者全員がKYCを通過し現地の証券規則を満たしていることを、個々の投資家を特定せずに証明できる。
企業財務は給与や仕入れ代金の支払いにステーブルコインを使いながら、競合他社にキャッシュポジションを知られずに済む。
Shield内では残高・取引・取引相手・ビジネスロジックがデフォルトで機密扱いとなります。ただしすべてのアクションは暗号証明を生成し、必要なときに必要な相手(規制当局、監査人、取締役会のリスク委員会など)に対してのみ選択的に開示できます。見せたいものを見せ、隠したいものを隠し、証明すべきことを証明する。それがShieldの考え方です。
かつての「プライバシーコイン」とは根本的に異なります。彼らは規制当局を敵として扱いました。Shieldは利害関係者(Stakeholder)として扱われます。最高コンプライアンス責任者やステーブルコインの規制当局が実際に承認できるものを目指しています。
オンチェーンで価値を動かし、その可視性を気にするすべての企業が対象になります。
まずステーブルコイン発行体とユーザーです。ステーブルコイン市場は数千億ドル規模に達しています。円建てステーブルコインを発行する銀行やフィンテックには、プログラマビリティ・規制対応・機密性の3つが同時に求められます。海外サプライヤーにステーブルコインで支払う製造業者は、競合他社に「誰に、いつ、いくら払っているか」を知られたくない。Shieldはそうした機関ユーザーが実際に採用できる決済環境を発行体に提供します。
次に決済分野です。国際B2B決済、サプライヤー支払い、給与、加盟店への送金などが対象になります。パブリックブロックチェーンは構造上、すべての取引相手・金額・タイミングが誰にでも見えてしまいます。事業規模が大きくなるほどこれは問題になる。Shieldを使えば、決済企業はオンチェーンで全フローを実行しながら、顧客の取引データを開示せずに監査証跡を即座に生成できます。
3番目がRWA(トークン化実物資産)で、私個人が最も注力しているカテゴリーです。「株式をトークン化するとはどういう意味か」「トークン化された債券や不動産の所有権・移転制限を複数の法域にわたってどう管理するか」は、まだ誰も本当の意味で解決していません。証券法は保有者の把握と移転ルールの遵守を求め、プライバシー法は投資家の身元の非公開を求める。Shieldはその両方を同時に満たすための層として機能します。米国・欧州・英国・日本でこの問題に取り組むつもりです。
4番目が企業財務とオンチェーンオペレーションです。ステーブルコインで給与を払い、仕入れを決済し、キャッシュマネジメントをオンチェーンで行う企業はいずれも、機密性を保ちながら監査対応の証明を生成できる環境を必要とします。長期的にはほぼすべての大企業がこのカテゴリーに入ると考えています。
XRPL CommonsとともにXRPL向けのZKサポートを構築し、現在テストネット上で稼働しています。次のステップはスマートウォレットと完全なスマートコントラクト対応です。XRPLは設計上、決済に特化したチェーンであるため、ステーブルコインや国際決済のユースケースとの親和性は高い。同じく決済ネイティブのStellarとは、給与支払いのデモンストレーションで連携しています。OptimismベースのチェーンとゲーミングチェーンのRoninはバリディティロールアップに活用しています。
コインベースのBaseや複数の他チェーンとも協議が進んでいます。Shield固有の案件については、ステーブルコイン・決済・RWAの分野で規制対応の複数の関係者と話し合いを続けています。関係上、名前の公表は各社から行われることになります。
日本市場へのアプローチ
日本の規制は小口投資家の保護を重視し、機関に対してユーザーの安全を真剣に考えさせる設計になっています。それは本質的に良いことです。整備されたルールが健全な市場を作る。日本はステーブルコイン規制とトークン化証券について、世界で最も丁寧に制度を整えてきた法域の一つでもあります。法的枠組みはすでにある。
プロダクトマネジメントに「Crawl, Walk, Run」という考え方があります。まずハイハイし、歩けるようになり、そして走る。新しい技術を理解が追いつく前に無理に走らせることはできないし、機関も管理体制を整える前に採用はできない。
Shieldはその段階的な導入を前提に設計しています。円建てステーブルコインを検討する銀行は、Shieldを内部環境に展開し、発行・償還フローを試験的に動かし、機密トランザクションと監査証明のペアをコンプライアンス部門に確認させることができます。外部顧客に一切触れることなく、エンドツーエンドで検証できる。商社がオンチェーン仕入れ決済を検討するなら、全フローを非公開で試せる。不動産会社がトークン化を検討するなら、投資家受け入れと移転制限のプロトタイプを機密状態で作れる。
率直に申し上げると、日本の銀行・決済会社・資産運用会社・商社がShield上でPoC(概念実証)を構築したいなら、無料でお手伝いします。こちらにとっても、本格的なチームのエンジニアやリスク・コンプライアンス担当者が実際の業務フローで検証するプロセスは、単純な契約以上の意味があるからです。
私はニューヨークのDAS(デジタルアセットサミット)から飛んできました。主要な米国銀行の多くがデジタルアセット担当責任者を置き、特にステーブルコインとトークン化国債の領域で動きを加速させています。日本の機関も同じ方向に向かうと見ています。決断したとき、日本の機関は高い精度で動く傾向があります。問題はいつ動くかです。動き出しが遅れるほど、後から取り戻すべき差も大きくなるでしょう。
日本の読者へ
日本には才能・資本・教育・資金調達へのアクセスがある。条件は揃っています。必要なのは、動く準備ができている人たちを後押しすることだと思います。
Grabにいた頃、「小さな島国がUberに勝てるわけがない」とよく言われました。Uberはサンフランシスコを拠点に、世界トップクラスのエンジニアを採用し、資本力でも大きく上回っていた。それでも勝てました。必要だったのは追加の才能ではなく、勇気と最初の一手を踏み出す意志でした。
GrabがUberに挑むと決めた瞬間、それまで動けずにいたエンジニアたちが変わりました。「この会社では何もできない」と思っていた人が「ここなら本当に勝てる」と感じ、集まってきた。人には本来、勝とうとする意志があります。誰かがそれを解き放てばいい。
今回の訪問で契約を取りに来たわけではありません。まず関係を作り、信頼を積み上げ、一緒に前へ進みたい。日本はもっと大きなことができると思っています。その瞬間が来たとき、Boundlessが傍らにいられればと考えています。
CoinPostの特集記事New!
📊 Investment Guide 資産運用の始め方は?【2026年最新】 → 📈 Stock Guide 仮想通貨関連の株式投資ガイド【2026年最新】 → 🔰 Crypto Guide 仮想通貨の始め方|初心者向け完全ガイド【2026年最新】 → ₿ Bitcoin Guide ビットコイン(BTC)とは?完全ガイド【2026年最新】 → 📚 Ethereum Guide イーサリアム(ETH)とは?完全ガイド【2026年最新】 → 📝 XRP Guide リップル開発XRPとは?完全ガイド【2026年最新】 → 💰 Stablecoin Guide ステーブルコインとは?完全ガイド【2026年最新】 → 💊 Health & Performance 投資家注目の健康サプリ3選 疲労ストレス・睡眠不足・血糖値ケア → 💡 求人情報 国内最大手の仮想通貨メディアCoinPost、新たな人材を募集 →


はじめての仮想通貨
TOP
新着一覧
チャート
取引所
WebX












