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ビットコインを売らずに最大10億円 担保ローン「CRYL」の設計思想を聞く

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

株式会社CRYL 段林由樹氏

ビットコイン(BTC)を担保に、売却せずに日本円を借りる。そんな暗号資産(仮想通貨)担保ローン「CRYL(クリル)」が7月9日、国内でサービスを開始した。融資額は100万円から最大10億円に及ぶ。

運営する株式会社CRYLは、仮想通貨レンディング「BitLending(ビットレンディング)」を手がける株式会社J-CAMのグループ会社だ。仮想通貨を貸して増やすサービスに、仮想通貨を担保に借りるサービスを重ねた形になる。

国内では、担保ローンはまだ一般化していない。「保有するか、売却するか」に偏りがちだった仮想通貨に、「売らずに活用する」という第三の選択肢をどう根付かせるのか。WebX2026にタイトルスポンサーとして参画した同社で、サービス開発を主導する段林由樹氏に話を聞いた。

「CRYL」サービス概要
担保資産
ビットコイン(BTC)のみ
融資額
100万円〜10億円
借入利率
年率3.5〜7.0%
担保掛目
40〜60%(5%刻みで選択)
返済方式
元利一括返済
返済期間
1年(ロールオーバー可)
提供開始
2026年7月9日

※記載内容は取材時点のもの。最新の条件は 公式サイトを参照。

段林由樹
段林 由樹(だんばやし ゆうき)
株式会社CRYL|Business Strategy & Development Director
大学卒業後、2011年にSMBC日興証券に入社し、主に富裕層の開拓や金融商品販売といった個人営業に従事。2017年にアクセンチュアへ入社し、証券会社を対象とした新規事業・企画のコンサルティング業務に携わる。2021年にファーストリテイリングへ入社、全社改革を担う部署でECやカスタマーセンターの業務改革プロジェクトを牽引し、日本以外で初となるヘッドクオーター組織・機能の立ち上げのためニューヨークに赴任。2024年に帰国して株式会社J-CAMに入社。2026年には株式会社CRYLにも参画し、サービス開発を主導する。
目次
  1. 事業拡大の狙い
  2. ユーザーが得る価値
  3. 強みと設計思想
  4. 独自性と将来像

01PART事業拡大の狙い

担保ローン参入の決め手

レンディングから「預けて借りる」担保ローンへと事業を広げた、最も決定的な要因は何でしたか。

根底にあるのは、サービスの多角化を通じて暗号資産業界の総合金融サービスを提供したいという思いです。同じ看板を掲げる企業は少なくありませんが、私たちは暗号資産レンディングで国内でも相応の規模を築いており、そこを足がかりにできる強みがあります。

銀行には定期預金や投資信託、ローン、保険といった商品が揃っています。このうち「利回りを出す」領域はビットレンディングですでに実現できていると考えます。一方、ローンをはじめ他の領域はまだ埋まっていません。

その中で提供開始までのハードルが低く、かつ私たちのノウハウを活かせるのが暗号資産担保ローンでした。

加えて海外では暗号資産担保ローンの需要が非常に大きく、マーケットとして狙う価値があります。暗号資産を貸し出して利回りを得るサービスに、暗号資産を担保に法定通貨を得るサービスを重ねることは、親和性の面でも理にかなっていると考えました。

税制も大きな要因です。少なくとも2028年には分離課税が適用されるとみられていますが、裏を返せば現時点では雑所得としての総合課税が適用される段階にあります。

「今は売りたくない」という方や、分離課税の適用後よりむしろ高い税率がかかりかねない方もいらっしゃる。分離課税の適用前にサービスを立ち上げ、「売りたくはないが手元資金は確保したい」という需要を取り込む。

今このタイミングで始める意義は大きいと考えています。

編集部注:仮想通貨の売却益は現行、雑所得として総合課税の対象となり、最大55%の税率が適用されうる。金融商品取引法への移行を経て、2028年からの申告分離課税(税率20%)適用を見込んでいる。

貸金業ライセンスという壁

貸金業の登録取得までに、難しかった点やハードルはありましたか。

まず、お客様に提示する貸付条件を含めたサービスの全体像とその裏側の仕組みを構築することが非常に大変でした。当社には金融機関出身者が多いのですが、今回担保として取り扱うのは暗号資産です。スキームの設計には細心の注意を払いながら組み立てていきました。

私たちは日本で初めて暗号資産担保ローンを手がけるわけではなく、競合が存在する中でのローンチでした。だからこそ他社に負けない条件を提示できるサービス設計が求められた。

社内のコスト構造などを踏まえ、可能な限り優位な条件まで詰めていく。その点には苦労がありました。

02PARTユーザーが得る価値

「売る」以外の選択肢

CRYLによって、ユーザーの資産活用の選択肢はどう広がりますか。

一番大きいのは、「売る」以外の選択肢を増やせたことです。

日本では暗号資産を購入した後の活用手段があまりありません。「暗号資産」や「仮想通貨」という名を冠しながら、日本円より使い勝手が良い場面を現在、国内で暮らす方はほとんど享受できていないと感じます。関連するルールも厳しい。

保有したうえで多少なりとも交換所でレンディングをする、人によってはステーキングをする。実際の選択肢はその程度にとどまっていました。

一方、海外ではファンドサービスやDeFiを含め、保有後に活用する選択肢が非常に豊富です。担保ローンもその一つ。それが日本にはほとんどなかった。

基本的には「買ったら売る」という売買しかなかったところに、売却以外の選択肢を提示できた。これは大きなユースケースの提示だと考えています。

シンプルで即時的な借入体験

一般層にも使ってもらうために、どんな工夫をしていますか。

貸金業という枠組みである以上、必ず守らなければならないルールはあります。そのうえで、借りたいと思ったそのタイミングですぐに借りられる。そうしたユーザー体験を大切にしたいと考えています。

ビットレンディングを一定の規模まで伸ばせた要因の一つは、アカウント登録から暗号資産を貸し出し、利回りを得るまでの流れが非常にシンプルだったことにあります。

手続きが煩わしくなれば、お客様は離れてしまう。基本はシンプルに、すぐ簡単に借りられる。その設計を貫いていきます。

先行するサービスがある中で、どの点で選ばれる存在を目指しますか。

国内で差別化していきたいのは、やはりシンプルさです。原則オンラインで完結し、簡単に借りられる。その体験を確立したい。

担保ローンは住宅にせよ株式にせよ、最初の設定に時間がかかります。それをゼロにはできませんが、極力小さくして借りたいと思ったときに借りられるサービスへと特化させたい。

特に国内では完全にオンラインで完結できている事業者はまだ多くないとみています。オンライン化とシンプル化で手間を極力そぎ落とし、「借りたいときに借りられる」という立ち位置を目指します。

想定ユーザーと融資レンジ

100万円から最大10億円まで対応する中で、どの層が最も使うと想定していますか。

ローンチしたばかりで見極めきれていない部分もありますが、まずは個人の方の100万円単位の資金ニーズに応えたいと考えています。

10万円、20万円であればカードローンをはじめ手軽に借りられる手段が世の中に数多くあります。しかし100万円、200万円、300万円という単位を私たちが提示する金利水準で借りられる先はなかなかありません。

車の購入やリフォーム、あるいは「少し手元資金が足りない」といったニーズにお応えできるよう設計しており、そうした層にこそ使っていただきたいと思っています。

トレジャリー企業など、大口の資金ニーズにも応えられていますか。

応えられていると考えています。法人アカウントも受け入れており、最大10億円という枠は法人の事業資金ニーズにも耐えられるよう設定したものです。

トレジャリー企業についても、活用の仕方次第でたとえば1年程度の一時的・短期的な借り入れとして十分にご利用いただける形になっているかと思います。

03PART強みと設計思想

銀行にはない強みと2サービスの連携

銀行融資と比べたとき、CRYLの強みは何でしょうか。

一つは、貸金業という枠組みのもと個人の方であれば比較的シンプルな体験で日本円を借りられる点です。総量規制などさまざまな規制はありますが、暗号資産を保有していて他に活用手段がないという方に対して、現在の銀行では対応が難しい。

その点、私たちはビットレンディングで培った暗号資産の取り扱いノウハウを持っています。安心して担保を預けていただける。ここは銀行にはない明確な強みになると考えています。

ビットレンディングとCRYL、2つのサービスをどう使い分け、連携させますか。

一方はライセンス事業である貸金業ですから、当然その規制がかかります。レンディング事業も今後は規制が進むとみており、「やりたいからできる」という単純な話ではありません。規制に十分配慮しながら、連携できる部分は連携していきたい。

お客様から見て距離の近い2つのサービスであれば使い分けがしやすく、親和性も高まります。一つの経済圏として使いやすい形をできる限り追求していきます。

掛け目と融資レンジの設計思想

掛け目・金利・清算水準について、CRYLの設計原則を教えてください。

担保の掛け目、いわゆるLTVはかなりコンペティティブな水準に仕上がったと思います。私が見る限り、海外でも高いところで60%、まれに70%というケースはあるものの、平均すれば50%前後。国内の暗号資産担保サービスも同水準です。

日本では株式担保ローンの需要が旺盛ですが、それにも引けを取らない掛け目を用意できました。ここは大きな強み、売りになる部分だと考えています。

金額面にも対応していきたい。「少し足りない」という小口のニーズに加え、最大10億円というレンジは審査さえ通れば大きな資金需要にも耐えられます。実際、XなどのSNSで当社サービスを取り上げていただく際も、この金額面に注目が集まることが多い印象です。

借りやすさと清算リスク、どちらに重きを置いた設計でしょうか。

現状は借りやすさに重きを置いています。当社では借り入れの申請時に担保掛け目を40%から60%まで5%刻みで選べる設計にしています。

リスクを取ってでも上限まで借りたい方は60%を、強制清算ラインを気にされる方は40%を選べる。この幅を持たせている点は、設計上の工夫だと思います。

強制清算は担保ローンにつきもので、多くの方が気にされる点です。このリスクをより緩和できるサービスをいま検討しており、年内にはそうしたプランも含めて展開できればと考えています。

04PART独自性と将来像

日本発サービスとしての独自性

海外モデルの輸入ではなく、日本発のサービスとして、どんな独自性を作っていきたいですか。

率直に言って難しいところです。担保ローンは独自性を出しにくく、勝負がどうしても金利・清算ライン・担保掛け目に集約されてしまう。そこを競い合うだけでは、いずれ事業者の体力が続かなくなります。

だからこそ、それ以外の部分でサービスを拡充し、独自性を打ち出したい。たとえば強制清算をある程度気にせずに済むようなサービス設計です。現状ではまだ実現できていませんが、お客様のニーズをくみ取りながら設計し、独自性につなげていきたい。

私たちには別に暗号資産レンディングのサービスもあります。これらと連携させ、さらに展開を広げて総合金融サービスとして提供できれば、それ自体が一つの独自の型になります。

そもそも暗号資産担保ローン単体で戦っている事業者は海外でも多くなく、マルチサービスの一角として担保ローンを位置づけているのが実情です。担保ローン単体ではなく、総合サービスとして独自性を出していく。そのラインナップで差別化を図っていきたいと考えています。

日本の制度に正面から乗る意味

日本の制度に正面から乗ることで生まれる強みはありますか。

一つは、ライセンスを保有していること自体が大きな強みになります。詳しい方の中には、日本のライセンスに準拠していない海外業者をリスクを承知のうえで利用される方もいらっしゃるでしょう。

私たちは国内で貸金業の登録を取得し、法令に準拠したサービス設計と体制を整えています。この点は明確な強みになると考えています。

総合金融サービスへのビジョン

「暗号資産の総合金融」に向けた、中長期的なビジョンを教えてください。

まず、ビットレンディングはある程度の規模までご支持をいただいています。CRYLも同じように多くの方に認知いただき、活用いただきたい。いただいたフィードバックをもとにより良いサービスへとブラッシュアップしていく前提で、大きなポジションを築きたいと考えています。

ベンチマークを銀行とすれば資産を預ける「貸して増やす」、そして融資となる「借りる」はすでに実現できていると考えます。

次は投資性商品、いわゆるファンドなどです。保険商品は設計が相当に難しいと思いますが、銀行が法定通貨で提供しているようなサービスを暗号資産の世界でも一つずつ実現していきたい。

ファンド事業についてはすでに別会社を設立して動き始めており、申請に必要なライセンスが整い次第、サービスを展開していきます。最終的には、お客様のニーズを暗号資産の中で包括的に満たせる形をつくり上げたいと考えています。

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