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【BTC下落トレンド加速局面の特徴】なぜ下落加速のエネルギーは強くなりやすいのか?

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

※本記事は、株式会社ICHIZEN HOLDINGSのオプショントレーダーによる寄稿です。 執筆者:木田 陽介
【BTC下落トレンド加速局面の特徴】なぜ下落加速のエネルギーは強くなりやすいのか?

前回のオプション分析記事①では、なぜオプション分析で相場の天井・底値が予測できるのか?そして私たちが実際に使っている5つの主要ツールの読み方について解説しました。

オプション分析ツールの振り返り

  • GEXには、価格帯ごとの抑制と増幅の強さを色で示すエリアが存在する
  • 実現ボラティリティとDVOLの組み合わせで、相場の荒れ具合と値動きの見込みが把握できる
  • ファンディングレートとOIを組み合わせることで、積み上がっているポジションの向きと量が予測できる

ここまでの内容で、オプション分析ツールで見るべきポイントや活用方法は理解できたと思います。

そこで今回のオプション分析記事②では、この5つのツールが「実際のビットコイン下落局面でどんな動き・パターンを形成していたのか?」について、過去の事例とともに解説していきます。

本稿を通してBTC下落トレンド時のツールの特徴を押さえておくと、今後のトレードにおいて損失幅を抑えながら利益幅を伸ばす精度をさらに高めることができるので、一緒に見ていきましょう。

【記事①「オプション分析とテクニカルの決定的な違い | なぜ天底が狙えるのか?」はこちら】

目次

BTC下落局面での主要ツールの特徴について

まず初めに、ガンマエクスポージャー(GEX)、つまりマーケットメイカーなどの機械的な発注によって生まれる、価格帯ごとの抑制・増幅のエネルギーから見ていきます。

ガンマエクスポージャー:抑制と増幅エネルギーが両方とも強い

ビットコインが下落トレンドを形成する局面のGEXには、共通する特徴があります。

それは、上値に広範囲のポジティブガンマ(緑)による抑制が広がっていることに加えて、下値にかけてネガティブガンマ(赤)のエリアが同時に広がっている、という組み合わせです。

下落局面においては緑のポジティブガンマ=抑制だけで十分なのでは?と感じる方もいるかもしれませんが、ポジティブガンマのエリアは、上がれば売られ、下がれば買われるという、値動きを吸収するレンジ的な性質を持っています。

つまり緑のエリアの中だけにいる限り、下落する力そのものはそこまで生まれにくいのです。

出典:ICHIZEN HOLDINGS作成

抑制と増幅、2つのエネルギーが噛み合うことで加速する

だからこそ重要なのが、下値のネガティブガンマの存在です。ここには「下がればさらに売られる」という、値動きを増幅させる性質があります。

上値のポジティブガンマが厚いほど、上に向かうにつれて強い抵抗がかかります。そして抵抗が機能して相場が下に向かえば向かうほど、今度は下値の赤いエリアによる増幅、つまり下落そのものを加速させるエネルギーが働き始めます。

抑制と増幅、この2つが上下でセットになって初めて、下落トレンドが加速しやすい環境が整うのです。

境界線(ガンマフリップ)を抜けた瞬間、主役が入れ替わる

前回記事でも触れた通り、緑と赤が入れ替わる境界線を「ガンマフリップ」と呼びます。

この境界線を実体ベースで下に抜けたとき、マーケットメイカーの機械的な発注そのものが、抑制する側から増幅する側へと主役を入れ替えます。

つまりビットコインの下落局面を見ていく上では、この下値のネガティブガンマがどれだけ厚く構築されているか、そして今の価格がその境界線にどれだけ近いかを、必ず確認しておく必要があります。

ガンマフリップの境界線を示すGEXグラフ

出典:ICHIZEN HOLDINGS作成

実現ボラティリティ:順イールドで方向性が出やすい状態

短期の実現ボラティリティが中長期を下回る「順イールド」の状態では、値動きが落ち着いている分、大口投資家がリスクを抑えたままポジションを積み増しやすくなります。

ここで押さえておきたいのは、この順イールドという条件そのものには、上昇・下落という方向性が含まれていないという点です。

逆イールドから順イールドへ切り替わったタイミングであれ、すでに順イールドが続いているタイミングであれ、大口が動きやすい環境が整っているというだけで、それがそのまま下落を意味するわけではありません。

「起点」であって「答え」ではない

順イールドはあくまでトレンドが発生するための土台であって、いつ・どちらに動くかというタイミングと方向は、別の指標で確認する必要があります。

ここで先ほどのGEXと組み合わせてみましょう。ガンマフリップを実体ベースで下に抜けた、そのタイミングで実現ボラティリティも順イールドを形成していたとしたら、どうなるでしょうか。

方向を決める材料(GEXの境界線突破)と、動きやすさの土台(順イールド)が同時に揃っていることになります。

つまり、この2つが重なったとき、下落トレンドが加速していきやすいメカニズムの要素が、かなりの部分で揃ってきたと判断できます。

実現ボラティリティの順イールド状態を示すグラフ

出典:ICHIZEN HOLDINGS作成

DVOL(IV指数) :安値圏からの反発+上昇転換に注目

ビットコインの下落局面が始まる前のDVOLは、多くの場合、安値圏で推移しています。安値圏にあるということは、市場の温度感や感情が比較的落ち着いている状態です。

では、なぜこの「落ち着いている状態」こそが重要なのでしょうか?

人間の感情がもっとも激しく振れるのは、市場が何のリスクも織り込まず、安心しきっているところへ、突然の急落が襲いかかる瞬間です。

この「何も準備できていなかった」という状態から生まれる恐怖こそが、DVOLを安値圏から一気に押し上げる、最大の加速度を生み出します。

恐怖が、恐怖を連鎖させる

実際に下落トレンドが加速し始めると、多くの投資家は恐怖から行動を変えます。

保有していたロングポジションをショートへ持ち直す動き、あるいは下落ヘッジとしてプットオプションを買う動き。こうした、テールリスク(想定外の暴落)に備えるヘッジ行動が一気に加速していきます。

つまり、ガンマエクスポージャーにおけるネガティブガンマが更に拡大するということです。

この過程そのものが、DVOLの反発上昇、つまり市場全体の変動見込みが急拡大していく動きとして現れます。

DVOLの反発上昇を示すTradingViewチャート

出典:TradingView(BINANCE:BTCUSDT)

DVOLが跳ねてからでは、もう遅い

ここで最も注意していただきたいのが、DVOLの使い方です。

DVOLがすでに反発上昇を形成しているのを見てから、そこで初めて下落トレンドを狙いにいく、という使い方はおすすめできません。それでは、すでに動き出した後を追いかけることになってしまいます。

本当に狙うべきなのは、「DVOLが安値圏から反発上昇を形成し始める、その一歩手前」です。

ここに、先ほど解説した実現ボラティリティの順イールドや、GEXのガンマフリップといった構造を重ねて確認しておくことで、下落トレンドが本格的に加速していく前の段階から、その予兆を捉えにいくことができます。

ファンディングレート・OI・清算マップ:燃料がどれだけ、どこに蓄積されているかを読む

ここまでGEX・実現ボラティリティ・DVOLと見てきましたが、これらはいずれも「下落しやすい構造」を教えてくれるものでした。

ここからは視点を変えて「その下落を実際に押し進める燃料が、どれだけ、どこに用意されているのか」を見ていきます。

レンジ相場の”中”にこそ、下落の種は蒔かれている

下落トレンドが加速する前のビットコイン相場では、価格そのものはまだ方向感の出ないレンジ相場が続いているにもかかわらず、ファンディングレートだけが高いプラス圏を維持し続けている、という状態が多く確認できます。

これは、先物価格が現物価格を上回ったまま張り付いている、つまり先物ロングを持ち続けているだけで、含み益がほとんどないまま手数料負担だけが積み重なっていく状態です。

上昇すると信じて持ち続けているのに、値上がりという見返りがないままコストだけが膨らんでいく。こうしたロングは、実際に価格が下へ動き始めた瞬間、真っ先に投げ出される「疲弊したロング」になりやすい特徴があります。

そして、このタイミングにかけてOI(未決済建玉)も増加していれば、その疲弊したロングそのものが積み上がっていると考えられるので、下落トレンドが開始する際の加速に期待できます。

燃料は「今作られている」とは限らない

なお、この燃料は必ずしもBTC下落トレンド開始の手前で作られているとは限りません。

OIがすでに数週間前の上昇局面でピークをつけたまま、直近は高水準を維持しつつ横ばいや微減の状態で中期にわたって推移している、というケースも実はあります。

この場合、燃料は「現在、新しく積み増されている」のではなく「以前からその場所に眠ったまま」と認識できます。こうした古い燃料の所在を教えてくれるのが清算マップです。

OIの増減という動きだけでなく、清算マップに刻まれた蓄積そのものも、独立した燃料のサインとして下落トレンド開始前に確認しておく必要があります。

清算ゾーンは「厚み」だけでなく「距離」も見る

下値のロング清算マップを見るときは、厚みの大きさだけでなく、現在価格からの距離にも注目してください。

現在値のすぐ下は、高レバレッジのポジションによる薄いゾーンにとどまり、そのさらに下に、低レバレッジ・あるいは高値からのロングが積み重なった厚いゾーンが控えている、という階層構造になっていることがあります。

この場合、最初の下抜けでは薄いゾーンをあっさり通過するだけで、値動きは加速しにくいですが、価格がさらに下の厚いゾーンへ到達したとき、そこで初めて多くの下落加速燃料が使われる、つまり本格的な連鎖清算が始まりやすくなります。

厚いか薄いかだけでなく「今の価格から、どれくらいの距離にその厚みがあるのか」まで地図として読んでおくことで、どの水準まで下げれば本番が始まるのかを事前に見積もることができます。

下落局面では各ツールがどんな動きを見せるのか?

  1. GEX:上値に抑制、下値に増幅というエネルギーが同時に構築される
  2. ガンマフリップの実体割れをきっかけに、抑制から増幅へメカニズムが切り替わり、下落トレンドが加速する構造
  3. 実現ボラティリティ:順イールド化が、大口が動きやすい環境を整えている
  4. DVOL安値圏推移は、後の反発上昇=恐怖の爆発の伸びしろが蓄積されているサイン
  5. ファンディングレートの高止まりとOIの蓄積によってトレンド加速燃料が用意される

2026年1月下旬から2月上旬の下落局面をオプション分析

それでは実際に、2026年1月下旬から2月上旬にかけてのビットコインの値動きにおいて、ここまで解説した各ツールの特徴が、その通りに現れていたのかを検証してみましょう。

1月26日時点のビットコインは$88,300付近を推移していました。

テクニカル上は方向感の出にくいレンジ相場が続いていましたが、実はこの裏側でオプションデータには、すでに下落トレンド加速の条件がいくつも点灯していたことが確認できています。

2026年1月26日時点のBTC価格を示すTradingViewチャート

出典:TradingView(BINANCE:BTCUSDT)

GEX(ガンマエクスポージャー)の答え合わせ:抑制と増幅、両方が揃っていた

1月26日時点のIBIT(ビットコインETF)のガンマエクスポージャーを見ると、IBIT $50〜60にかけてポジティブガンマが形成されていました。ビットコイン価格に換算すると$88,260〜$105,900にあたる範囲です。

中でも最も強い抑制圧が形成されていたのがIBIT $55=BTC $97,100付近です。

これに加えて、IBIT $50〜45=BTC $88,260〜$79,400と下値にかけては、広範囲のネガティブガンマが形成されていたことも確認できます。

1月26日時点のGEXグラフ

出典:ICHIZEN HOLDINGS作成

つまり1/26時点で、上値には強力な抑制圧、そしてIBIT $50=$88,260付近からは下落を増幅させていくという先ほど解説した「抑制と増幅、両方が揃って初めて下落が加速する」という型が、すでに実際のデータとして現れていたことになります。

実現ボラティリティ(HV)の答え合わせ:静かな相場が、大口の参入余地を生んでいた

このときの実現ボラティリティを見ると、短期のボラティリティが中期・超長期を下回る、いわゆる順イールドの状態です。

相場全体が荒れることなく落ち着いていたことで、大口投資家としてもポジションを構築しやすく、資金を流入させやすい環境が整っていたことになります。

順イールドはそれ自体が方向を示すものではなく、あくまで「トレンドが加速するための土台」です。この局面でも、まさにその土台がすでに整った状態でレンジ相場が続いていたことになります。

1月26日時点の実現ボラティリティグラフ

出典:ICHIZEN HOLDINGS作成

DVOLの答え合わせ:安値圏での、楽観ムード

DVOLに関しては、1月26日時点で37.5ポイント付近と、かなりの安値圏で推移していました。テクニカル面でも高値を切り下げていく動きが出ており、市場全体としても楽観的なムードが漂っていた局面だったことがわかります。

この「まだ何も織り込まれていない安値圏=投資家の感情」こそが、その後の急落局面で恐怖が一気に爆発し、DVOLが大きく跳ね上がる要因になります。

1月26日時点のDVOLを示すTradingViewチャート

出典:TradingView(BINANCE:BTCUSDT)

ファンディングレート・OI・清算マップの答え合わせ:燃料は十分すぎるほど整っていた

OIは1月26日にかけて緩やかな上昇トレンドを形成していました。

この間、ビットコイン価格は$88,000〜$89,000付近のレンジで推移しており、価格自体はほとんど動いていません。それにもかかわらず、ファンディングレートは高いプラス圏を記録し続けていました。

つまり、先物ロングを保有している勢力からすると、このレンジの中で含み益がほとんど発生していないにもかかわらず、手数料の支払いだけが積み重なっていく状態が続いていたことになります。先ほど解説した「疲弊したロング」が、この時点ですでに形成されつつあったということです。

OIの規模自体も59.8Bと、ポジション総量としては十分な水準に達しており、トレンドを加速させるための燃料が十分に整っていたことがわかります。これに加えて、下値にかけては低レバレッジのロング清算も蓄積されていました。

下落トレンドが加速していく過程:ガンマフリップの連続突破

ここまで確認してきた条件が揃った状態から、実際に1月26日を境に下落トレンドが加速していきます。

1月30日時点のガンマエクスポージャーを見ると、ガンマフリップポイント(抑制から増幅へ切り替わる境界線)は、IBIT $47.07=BTC $83,100に位置していました。

1月30日時点のガンマフリップポイントを示すGEXグラフ

出典:ICHIZEN HOLDINGS作成

そして1月31日、この境界線を実体ベースで下抜けたことがテクニカル上確認できています。これにより、ガンマエクスポージャーのメカニズムが、抑制から増幅へと切り替わりました。

その後も下落は続き、2月3日時点のガンマフリップポイントであった$79,800(IBIT $45.18)も完全に下抜けています。

境界線を一つ抜けるごとに次の境界線が現れ、そこも下抜けていくという形で、下落トレンドの増幅メカニズムが継続的に働き続けていたことになります。

2月3日時点のガンマフリップポイントを示すGEXグラフ

出典:ICHIZEN HOLDINGS作成

下落トレンドの終着点:5つのサインが、反転を告げていた

最終的に、先物OIは安値圏である46.71Bまで縮小しました。この局面では、実現ボラティリティは逆イールドを形成し、DVOLは高値圏である82.5ポイントからの強力な抵抗圧のサインを見せています。

さらにガンマエクスポージャーとテクニカルを照らし合わせると、2月5日以降は下値のネガティブガンマがそれ以上拡大しない状態、つまり相場がこれ以上の下落を新たに織り込まなくなったことが確認できます。

そして、ネガティブガンマの下限であったIBIT $35=BTC $61,800から、実際に反発上昇が始まりました。ガンマスクイーズによる、一連の下落トレンドの終着点です。

反発上昇の起点を示すTradingViewチャート

出典:TradingView(BINANCE:BTCUSDT)

この一連の値動きを振り返ると、天井圏でショートポジションを構築する場合、IBIT $55=BTC(ポジティブガンマが最も強かった抑制帯)を損切りポイントに設定できたことになります。

そして利益確定のタイミングは

  1. 実現ボラティリティが逆イールドへ転換したこと
  2. 先物OIが安値圏まで縮小したこと
  3. ネガティブガンマの拡大が止まったこと

この3つが重なったIBIT $35付近=$61,800からの反発上昇と判断することができます。

GEX・実現ボラティリティ・DVOL・ファンディングレート/OI/清算マップという5つのツールが、下落開始前から終着点まで一貫して同じストーリーを語っていたことで、非常に良いペイオフレシオを伴ったショートポジションを構築できていたことが、今回のケーススタディから確認できます。

下落トレンド終着点の値動きを示すTradingViewチャート

出典:TradingView(BINANCE:BTCUSDT)

2026年5月中旬から6月上旬の下落局面をオプション分析

5月15日時点のビットコインは$79,100付近を推移していました。

テクニカル目線では押し目買い意識がついており、チャートだけを見ていれば、ここから反発を狙いたくなる局面だったと言えます。

しかし、オプション市場のデータには、これとは異なるストーリーがすでに書き込まれていました。

2026年5月15日時点のBTC価格を示すTradingViewチャート

出典:TradingView(BINANCE:BTCUSDT)

GEX(ガンマエクスポージャー)の答え合わせ:押し目買いの裏で構築されていた抑制圧

この時点のガンマエクスポージャーを見ると、IBIT $45〜50=BTC $79,400〜$88,260にかけて強力なポジティブガンマが形成されていました。中でもIBIT $47=BTC $83,000付近では、ポジティブガンマがさらに拡大する動きも確認できています。

これに加えて、IBIT $45〜40=BTC $79,400〜$70,600にかけては、ネガティブガンマによる増幅意識も同時に構築されていました。

5月15日時点のGEXグラフ

出典:ICHIZEN HOLDINGS作成

つまりこの時点で、上値には引き続き重い抑制圧がかかっている一方、ビットコイン$70,600付近にかけては下落トレンドが加速しやすい構造が、すでにガンマエクスポージャーの中に現れていたことになります。

テクニカル上の押し目買い意識とは裏腹に、オプション市場はすでに下方向のシナリオを織り込み始めていました。

実現ボラティリティ(HV)の答え合わせ:今回も、静かな相場の中で燃料が整っていた

5月中旬から下旬にかけての実現ボラティリティは、順イールドの状態を記録していました。短期的なボラティリティが穏やかだったことで、大口投資家としてもポジションを多く積みやすい環境が整っていたことになります。

つまり、今回の局面でも「トレンドが加速するための土台」がすでに用意されていたことがわかります。

5月中旬の実現ボラティリティグラフ

出典:ICHIZEN HOLDINGS作成

DVOLの答え合わせ:楽観ムードの中で、恐怖の伸びしろが蓄積されていた

このときのDVOLも、ビットコインが緩やかな上昇を形成する裏側で34ポイント付近と、非常に低い水準を記録していました。

高値の切り下げも順調に進んでおり、市場全体・投資家心理としても、かなり楽観的で落ち着いたムードが漂っていた局面です。

裏を返せば、この落ち着きこそが、DVOLが反発上昇する際の伸びしろ、つまり恐怖が一気に噴き出す余地を蓄積していたことになります。

5月時点のDVOLを示すTradingViewチャート

出典:TradingView(BINANCE:BTCUSDT)

ファンディングレート・OI・清算マップの答え合わせ:押し目買いが、機能しないまま燃料になっていく

ビットコイン価格が$78,000付近で推移する中、ファンディングレートは高いプラスの数値を記録したまま横ばいが続いていました。

先物ロングを保有している勢力からすると、トレンドがうまく発生しない状況が続き、しかも今回は押し目買いの意識があっただけに、その期待通りには機能しないまま、高い手数料の支払いだけが積み重なっていったことになります。

OIの水準も、5月15日時点で61.4Bと非常に高い記録を残しており、トレンドを形成するための燃料が十分に溜まっていたことが確認できます。

下落トレンドが加速していく過程:押し目買いの崩壊とガンマフリップの連続突破

ここまで確認してきた条件が揃っていたことで、5月22日、押し目買いの意識が徐々に崩れ始めるとともに、IBIT $45〜40のネガティブガンマがさらに拡大していきました。

5月22日時点のネガティブガンマ拡大を示すGEXグラフ

出典:ICHIZEN HOLDINGS作成

6月1日には、ネガティブガンマの拡大が続く中、ガンマフリップポイントであるIBIT $41.44=BTC $73,150を実体ベースで割り込みました。これにより、ガンマエクスポージャーのメカニズムが、価格を抑制する側から増幅させる側へと切り替わっています。

6月2日には、次のガンマフリップポイントであるIBIT $41.07も引き続き実体ベースで割り込み、下落トレンドはオプション分析の視点からも一段と加速しやすい状態を形成していきました。

6月2日時点のガンマフリップ連続突破を示すGEXグラフ

出典:ICHIZEN HOLDINGS作成

下落トレンドの終着点:複数のサインが、同時に反転を告げていた

最終的に、先物OIは安値圏である47.46Bまで縮小しました。6月5日時点では、期間別ボラティリティも短期が超長期すら上回る完全な逆イールドを形成し、このタイミングで大規模なロング清算も発生しています。

同じく6月5日時点のガンマエクスポージャーでは、IBIT $35(ビットコイン価格$61,800)を軸に、ネガティブガンマがIBIT $30(ビットコイン価格$53,000)まで広範囲に拡大していました。

  1. OIがすでに安値圏に達していたこと
  2. 期間別ボラティリティがすでに逆イールドを形成していたこと
  3. 大規模なロング清算がすでに発生していたこと
  4. DVOLが53.5ポイントという強い抵抗帯から上ヒゲの反落足を形成し、市場の恐怖心が衰退し始めていたこと

しかし、上記4つの条件が同時に揃ったことで、6月5日時点でガンマフリップを含めた一連の下落トレンドが終了していきました。

下落トレンド終了時点のGEXグラフ

出典:ICHIZEN HOLDINGS作成

今回のケーススタディで特に注目したいのは、5月15日から5月22日にかけて、テクニカル上はまだ押し目買い意識が残っていた段階で、オプションデータの側にはすでにガンマフリップを示唆するサインが構築されていた、という点です。

この段階で、IBIT $45=BTC $79,400付近を最初のストップロスに設定してショートポジションを構築していれば、ケーススタディ(1月下旬〜2月上旬の下落局面)と同様、非常に良好なペイオフレシオで、ガンマフリップを含めた下落トレンドの大幅な加速を狙えていたことになります。

チャートだけを見ていれば反発を期待したくなる局面でも、オプション市場のデータは異なる答えをすでに示していた。これが、2つ目の過去事例から確認できることです。

2つ目の過去事例の値動きを示すTradingViewチャート

出典:TradingView(BINANCE:BTCUSDT)

BTC下落局面を、資本効率に変える2つの立ち回り

ここまで2つのケーススタディを通して、下落トレンドが本格的に加速する前から、オプション市場のデータが一貫して天井サインを示していたことが確認できました。

この下落局面が発生する前の天井を見分けるスキルは、実はトレードの勝ち負けを分けるだけでなく、すでに現物のビットコインを保有している方の資本効率そのものを底上げする力でもあります。

使い方①:現物の一時退避+ショートによる二重の収益機会

1つ目は、現物を保有したまま様子見をするのではなく、天井圏で一度、現物を安全資産(USDT)に戻すという選択です。

ガンマフリップが近づき、5つのツールが同時に下落加速を示唆し始めたタイミングで、保有している現物を一時的にUSDTへ交換すると、その資金の一部を原資として、ショートポジションの構築に充てることができます。

このとき重要なのは、あくまで安全性を優先した運用だという点です。現物を売却して得た資金の範囲内でショートを組むことで、レバレッジをかけすぎることなく、下落トレンドが実際に加速していく局面の利益を、ショートポジションの含み益という形で獲得しにいくことができます。

使い方②:安値で買い直すことで、上昇局面の含み益ごと底上げする

2つ目が、より本質的な資本効率の向上につながる考え方です。

天井圏で現物を一時的にUSDTへ変えておくと、その後さらに下落トレンドが加速し、価格が大きく下がった局面で、同じ資金を使ってビットコインを買い戻すことができます。

この時、同じ金額であっても、価格が下がった分だけ、以前保有していたよりも多い枚数のビットコインを取得できることになります。

もし使い方①を基に、パーペチュアルショートを構築しており、下落局面における含み益が拡大していれば、安値圏で取得できる仮想通貨枚数は更に拡大します。

つまりこの立ち回りは、下落を避けるためだけのものではなく「同じ資金で、より多くの枚数を仕込み直す」ための積極的な選択肢ということです。

そして仮に、そこから相場が上昇トレンドへと回復していった場合、保有している枚数そのものが以前より増えているため、同じ値上がり幅であっても、得られる含み益は以前より大きくなります。

BTC下落局面における「一時退避+買い直し」の資本効率比較
天井$80,000で保有し続けた場合 底値$60,000で買い直した場合
購入枚数 約1.25 BTC 約1.67 BTC
$80,000まで回復時の評価額 $100,000 $133,333
含み益 ±$0(+0.00%) +$33,333(+33.33%)

BTC下落局面における「一時退避+買い直し」の資本効率比較
※原資$100,000/天井$80,000 → 底値$60,000で買い直し→$80,000まで回復した場合

次回記事:BTC上昇トレンド加速局面の特徴を知っておくべき理由

現物を保有しているだけでは、下落局面はただ耐えるべき時間になりがちです。しかし、オプション分析によって天井とその後の下落加速をあらかじめ織り込めるのであれば、下落局面そのものを

  1. ショートによる収益機会
  2. 保有枚数を増やすための仕込みのタイミング

という2つの意味を持つ戦略に変えることができます。

ここで重要なのは、この2つの効果は一度きりで終わるものではないという点です。下落のたびに枚数を積み増し、そこから上昇トレンドが回復するたびに含み益が拡大していく。この立ち回りを繰り返すことができれば、資本効率の向上は一度の下落局面だけでなく、相場のサイクルを重ねるごとに積み上がっていく効果になります。

そして、次回のオプション分析記事③「ビットコイン上昇トレンド加速局面の特徴 ― なぜボラティリティの正常化が大きなカギになるのか?」を通してBTC上昇局面までも予測できるようになれば、この下落→仕込み→回復というサイクルを捉えられるようになります。

【まとめ】下落の型を知ることは、上昇の型を知る準備になる

今回の記事では、ビットコインの下落トレンドがなぜ加速しやすいのか?そのメカニズムを5つのツールから解説し、実際の直近2つの下落局面(2026年1月下旬〜2月上旬と2026年5月中旬〜6月上旬)で答え合わせしてきました。

2つの局面は、値動きの背景も、テクニカル上の印象も異なっていましたが、ファンディングレートの高止まり、OIの蓄積、GEXにおける抑制と増幅の重なり、順イールドという土台、そして安値圏のDVOLという5つの要素は、どちらの局面でも同じ順序で現れていたことが確認できたと思います。

BTC下落局面のツール特徴まとめ

  1. 値動きの中で、ファンディングレートの高止まりとOIの蓄積によって燃料が用意される
  2. GEXの上値に抑制、下値に増幅というエネルギーが同時に構築される
  3. 実現ボラティリティの順イールドが、大口が動きやすい環境を整える
  4. DVOLが安値圏で落ち着いている間に、後の反発上昇(恐怖の爆発)の伸びしろが蓄積される
  5. ガンマフリップの実体割れをきっかけに、抑制から増幅へメカニズムが切り替わり、下落が加速する

この下落パターンをあらかじめ知っておくことは、下落を言い当てるためだけの知識ではありません。天井圏での一時退避とショート、安値での買い直しによる保有枚数の底上げという形で、すでに現物を保有している方の資本効率そのものを高める要因にもなります。

次回のオプション分析記事③「ビットコイン上昇トレンド加速局面の特徴 ― なぜボラティリティの正常化が大きなカギになるのか?」では、今回登場した5つのツールが、下落から上昇へと転じていく局面ではどのような動きを見せることが多いのか?について詳しく解説したいと思います。

木田 陽介

木田 陽介

株式会社ICHIZEN HOLDINGS|代表取締役

2016年より暗号資産市場へ参入。2019年に暗号資産メディアCoinOtaku(現CoinPartner)の代表に就任。2020年に同社の株式譲渡を行い、上場企業傘下で暗号資産事業を経験。2025年より株式会社ICHIZEN HOLDINGS代表に就任。現在は暗号資産レンディングサービス「HyperLending」の運営および自己勘定でのトレーディングを統括し、オプション市場を含めた相場分析を日次で配信している。

運営企業

株式会社ICHIZEN HOLDINGS

金融領域に強みを持つWeb3コンサルティング企業として創業。国内上場企業から地方自治体、海外トークンプロジェクトまで幅広い支援を経験。現在は自己勘定での暗号資産トレーディングを中心とした、暗号資産運用企業として事業展開し、暗号資産トレジャリー事業の財務コンサルティングおよび監査実務/システム支援を提供する。暗号資産レンディングサービス「HyperLending」を運営し、テクニカル・マクロ・オプション市場を含む相場分析を平日毎日配信している。

公式サイト:ichizenholdings.co.jp

X(旧Twitter):@ichizenholdings

参考・出典

本記事内の図表の一部は、CoinGlassのデータを基に作成しています。

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。

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