“オプション取引”と聞くと「自分には理解できない分野だ」と感じ、距離を置いてしまう方は多いのではないでしょうか。
ですが、そのオプションを「取引」するのではなく「分析」することで、相場の天井・底値が狙いやすくなる、と聞いたら興味が湧きませんか?
本稿では、過去の上昇・下落事例を活用しながら、全3回のシリーズを通じて、オプション市場のデータから現物・先物の値動きを読み解く方法
オプション分析:3つのシリーズを紹介
- オプション分析とテクニカルの決定的な違い | なぜ天底が狙えるのか?
- BTC下落トレンド加速局面の特徴 ― なぜ下落加速のエネルギーは強くなりやすいのか?
- BTCが上昇トレンドに回復していく局面でのオプションツールの特徴
つまり、天井・底値を狙うためのオプション分析スキルを、わかりやすい画像とともに3つのシリーズに分けて解説していきます。
本シリーズを最後まで読んでいただき、オプション分析スキルを身につけることで、損失幅を抑えて利益幅を伸ばす「ペイオフレシオ」の改善や、トレードの勝率向上に、ぜひ役立ててみてください。
3つのシリーズで”触れない”オプション要素
- コール&プットオプションの利益モデル
- オプション理論価値の要素となるGreeks(デルタ・ベガなど)
- カバードコールやカレンダースプレッドなどのオプション戦略
- ブラックショールズの詳細や複雑な計算式
目次
オプション分析とテクニカル分析の決定的な違い
まず初めに、なぜ将来の価格帯・シナリオを織り込んでいるオプションデータを読み解き、そこにテクニカル分析を組み合わせることで、相場の天井・底値が見えてくるのか?
この決定的な違いを、2つのデータ取得元と構造の違いから解説していきます。
「これまで」の値動きを映すのがテクニカル分析
テクニカル分析は、移動平均線やチャートパターン、出来高など、すでに市場に刻まれた過去の値動きをもとに、その延長線上で今後の展開を推測する手法です。
出典:TradingView(BINANCE:BTCUSDT)
「過去にこう動いたから、今回も同じように動くのではないか」という、過去データの蓄積・再現性を根拠にしている点が最大の特徴と言えます。
そのためテクニカル分析は、市場参加者が現在どちらを向いているかを映す鏡としては非常に優れている一方で、その延長線がいつ、どの価格帯で崩れるのか、つまり天井や底といった転換点そのものを事前に示す情報があまり含まれていません。
転換点は、実際に価格がそこに到達し、反応が過去データとして出て初めて確認できるものだからです。
オプション分析が映すのは、市場が織り込む「これから」
一方でオプション分析は、根本的に構造が異なります。
オプションは「将来のある満期で、ある価格になったらどうするか?」という条件をあらかじめ売買する商品であるため、そこに集まる建玉やボラティリティのデータには、市場参加者が将来の価格やシナリオをどう見積もっているかが、そのまま反映されます。
出典:ICHIZEN HOLDINGS作成
この見積もりの中心にあるのが、オプションの価格を決めるブラックショールズモデルという計算式です。
少し難しそうに聞こえますが、考え方自体はシンプルで「このオプションの価格は、満期までにどれくらい価格が動きそうか、現在の価格と権利行使価格の差、満期までの残り時間」といった要素から逆算して決まる仕組みとなっています。
つまりテクニカル分析が「過去の結果」を見ているのに対し、オプション分析は「未来に対する市場参加者の予想そのもの」を、リアルタイムのデータとして直接読み取れるという違いがあります。
主要データから重要価格や方向性、加速力を事前把握できる
例えば、次のパートで解説するガンマエクスポージャー(GEX)の読み方が、テクニカル分析との違いを実感しやすい典型例です。
出典:ICHIZEN HOLDINGS作成
上値に緑色のポジティブガンマ(抑制圧力)が厚く積まれている局面では、そこが抑制帯=天井として意識されやすく逆張りの目安になります。
逆に、その抑制帯が崩れて赤色のネガティブガンマ(加速圧力)が優勢になっていく「ガンマフリップ」が発生した局面では、順張りで下落トレンドに乗る目安になります。
実際に、この読み方を使うことで、2025年10月や2026年2月、2026年5月からのビットコイン下落も、オプションデータという「先回りの情報」から事前に把握することができます。
出典:TradingView(BINANCE:BTCUSDT)
テクニカル上は上昇トレンドが継続しているように見えても、その先にポジティブガンマの抑制帯が控えていれば、そこが「勢いは強いが、これ以上は伸びにくい価格帯」であることが事前にわかります。
そして実際に価格がその抑制帯に到達し、上値が抑えられ始めるタイミングは、テクニカル的な過熱感(高値圏でのもみ合いや上ヒゲの形成など)と重なって現れることが多くあります。
この2つのシグナルが一致したタイミングこそが、下落へ転じる天井のサインとして機能しやすいのです。
このように、チャートの形だけを追っていては後追いになりがちな「天井からの下落」も、未来の見積もりであるオプションデータと、過去からの勢いであるテクニカル分析を重ねて見ることで、重要な価格帯・方向性・加速力の3つを、より高い精度で事前に絞り込めるようになります。
この3つの視点は、次のパートで扱うGEX・DVOL・ファンディングレート・OI・ボラティリティという5つの基礎知識にそれぞれ対応しているので、次のパートでは、この5つの主要ツールを実際にどう読んでいけばいいのか、わかりやすく解説します。
オプション分析で使う5つの主要ツールの読み方
ここからは、オプション分析で活用するGEX(ガンマエクスポージャー)、実現ボラティリティ(HV)、DVOL(BTCボラティリティ指数)、ファンディングレート、OI(未決済建玉)の主要ツールを5つ解説します。
計算式を覚える必要はなく、見るのは、色がどちらに厚く積まれているか?線がどちらの上にあるか?数値が過去のどのあたりにいるか?この程度の視覚的な特徴だけです。
オプション分析で使う5つの主要ツール
- GEX(ガンマエクスポージャー):価格帯ごとの「重さ」を色で示す指標
- 実現ボラティリティ(HV):実際にどれだけ動いたかの記録
- DVOL:これから30日の変動見込みに付いた値段
- ファンディングレート:ロングとショート、どちらが優勢かを示す指標
- OI(未決済建玉):相場に乗っているポジションの量
1. GEX(ガンマエクスポージャー)|価格帯ごとの「重さ」を色で見る
GEX(ガンマエクスポージャー)の特徴・活用方法に移る前に、あらかじめ把握しておくべき知識から解説します。
重さを作っているのは、方向を張っていない人たち
出典:ICHIZEN HOLDINGS作成
GEXグラフで価格帯ごとの重さを作っているのは、マーケットメイカーやディーラーと呼ばれる、売買の相手方に回る人たちです。
彼らは相場の方向に賭けていません。オプションを買いたい人がいれば売り手に回り、売りたい人がいれば買い手に回るのが仕事なので、手元に残るポジションは自分で選んだものではなく、注文の結果として持たされたものになります。
彼らの売買は、私たち一般投資家のような判断ではなく義務から成り立つため、相場をどう思っているかとは無関係に、価格が動けば機械的に発注(打ち消し)が出ます。
同じ「打ち消し」が、価格帯によって逆向きに働く
この機械的な打ち消しが価格帯によってどちら向きに出るのか、それを色で塗り分けたものがGEXグラフです。
緑の価格帯(ポジティブガンマ)では、値動きと逆方向に発注が出ます。上がれば売られ、下がれば買われるので、動きが抑制される。
上下どちらへ出ようとしても抑え込まれるため、その価格帯を抜けにくくなる「重い場所」としての役割を持ちます。値幅の出ない安定した推移として現れるため、落ち着いて見えるときほど、この緑がどこまで積まれているか確認しておきたいところです。
出典:ICHIZEN HOLDINGS作成
赤の価格帯(ネガティブガンマ)では、このメカニズムが反転します。
値動きと同じ方向に発注が出るため、上がればさらに買われ、下がればさらに売られる。動きが増幅される「滑りやすい坂」のような価格帯です。
テクニカル視点で下落トレンドの加速に期待できる局面でも、それがGEXにおける緑のエリアで起きるのか?もしくは赤のエリアで起きるか?によって、相場の伸び方は大きく変わります。
出典:ICHIZEN HOLDINGS作成
見るのは「境目」と「厚み」の2つだけ
実際のGEXデータで確認するのは2点だけです。
1つ目は、各エリアの色の厚みです。厚く積まれているほど抑制・増幅意識が強く、逆に薄い場所は素通りされやすくなります。
ほとんど何も積まれていない価格帯は「真空地帯」と呼ばれ、一度そこへ入ると止まる材料がないまま相場が走りやすい特徴を持ちます。
2つ目は、ポジティブガンマエリアとネガティブガンマエリアが入れ替わる境界線です。ここは、マーケットメイカーやディーラーの機械的アクションそのものが切り替わる場所で「ガンマフリップ」と呼ばれます。
ポジティブガンマによって吸収=抑制されていたとしても、この線を抜けた瞬間からネガティブガンマが相場の主軸になるため、相場は増幅しやすい、つまりは順張りに期待できる局面に切り替わります。
実際に、2026年5月以降のビットコイン相場と、GEXのグラフを照らし合わせていくと、このツールの機能性が確認しやすいので見てみましょう。
出典:ICHIZEN HOLDINGS作成
5/11時点のBTC価格は$81,745で、テクニカル目線では上昇トレンドの加速に期待できそうです。
しかし、GEXを見てみるとIBIT$45=$79,435以降には、既に厚いポジティブガンマが形成されています。
その後、ガンマフリップポイントであるIBIT$41.18=$72,692を割ったことで、GEXにおけるメカニズムが抑制から増幅に切り替わり$59,130まで大幅下落する結果となりました。
このようにGEX(ガンマエクスポージャー)は、誰かがそこで売買するかどうかという推測ではなく、機械的なアクションが構造として決まっている分、重要価格帯の抑制・増幅具合を事前に把握することができるのです。
出典:TradingView(BINANCE:BTCUSDT)
GEX(ガンマエクスポージャー)の読み取りパターン
- 上値に緑が厚い:その価格帯に近づくほど上値が重くなる=抑制帯として意識される
- 下値に赤が厚い:その価格帯に入ると下へ走りやすい=加速が大きくなる
- 下の赤が薄く、上の緑に真空がある:上へ通りやすい
- 価格が緑と赤の境界線に近づいている:構造が切り替わる可能性=ガンマフリップ
2. 実現ボラティリティ(HV)|4本の線の上下関係だけを見る
なぜこの数値を見る必要があるのか
実現ボラティリティは、実際に価格がどれだけ動いたかを、過去の値動きから逆算した記録です。予想ではなく、すでに確定した事実を期間別に数値化したものだと考えてください。
このツールが重要なのは、大口投資家がポジションサイズを決めるときの物差しとして、実際にこの数値が使われているからです。
同じ1枚のポジションでも、値動きが荒ければ抱えるリスク量は大きくなり、値動きが穏やかであればリスク量は小さくなります。
つまり実現ボラティリティが低いほど、大口は同じリスク量でもより大きなポジションを積み増せる、ということです。実現ボラティリティの読み方に移る前に、この「ポジションサイズを決める物差し」という役割を覚えておきましょう。
4つの期間を比べて、今がどちらの状態かを見る
下記の実現ボラティリティグラフでは、短期=青、中期=オレンジ、長期=赤、超長期=水色と、期間ごとに計算・色分けされています。
出典:ICHIZEN HOLDINGS作成
見るのは、それぞれの数値の大きさではなく、短期HV(青)が他の3本と比べて高いのか、低いのかという位置関係です。
短期が上に出ている状態(逆イールド)
短期HVが中期・長期・超長期のいずれかを上回っている状態を「逆イールド」と呼びます。直近の値動きが、普段よりも大きく荒れている状態です。
この動きは、既に相場において大きな値動きが起きた「後」に現れる記録である点に注意してください。
出典:ICHIZEN HOLDINGS作成
値動きが荒い逆イールド状態ほど、大口は同じ枚数を持っているだけでリスク量が膨らんでしまうため、彼らは新たに大きなポジションを積み増しにくくなります。
ただし、逆イールドは「これから何も起きない」という意味ではありません。すでに動き出している流れそのものは、この状態だけで止まると判断できないため、下落や上昇がそのまま続くケースも十分にあります。
あくまで「新規の大口資金が入りにくい環境である」ことを示している、と認識しましょう。
短期が下に出ている状態(順イールド)
反対に、短期HVが中期・長期・超長期を下回っている状態が「順イールド」です。
出典:ICHIZEN HOLDINGS作成
直近の値動きが落ち着き、リスク量に余裕が生まれている状態です。
そのため、大口にとってはポジションを積みやすい環境が整っており、トレンドが発生するための前提条件のひとつが揃ったことになります。
順イールドは、結果ではなく「起点」
誤解しやすいのが、順イールドになった時点で相場がすでに動き出しているわけではない、という点です。
順イールドは、あくまで「大口が動きやすい環境が整った」という土台にすぎません。静かになったから積める、積めるから動く、という順番であり、実際にトレンドとして現れるのはそのあとになります。
出典:TradingView(BINANCE:BTCUSDT)
ここまでの内容からわかるように、実現ボラティリティ(HV)は、大口が新規ポジションを積みやすい環境かどうかを、感覚ではなく数値として事前に把握するための物差しです。
なお、次に扱うDVOLとHVは、それぞれ役割が分かれています。DVOLがこれから30日間の予想であるのに対し、実現ボラティリティは実際に起きた記録、すなわち事実です。
実現ボラティリティ(HV)の読み取りパターン
- 青が他の線より上(逆イールド):相場が荒れている。すでに大きく動いた後で、ここから新しく大口が張りにくい
- 青が他の線より下(順イールド):相場が落ち着いている。ポジションが積み上がりトレンドが発生する前提条件が整う
- 逆イールドから順イールドへ切り替わった直後:環境が整った合図。どちらへ動くかは、その他ツールを見て判断する
3. DVOL|今後30日間のBTC予想変動率を示す指数
出典:TradingView(BINANCE:BTCUSDT)
記録ではなく、見込みに値段が付いたもの
DVOLは、ビットコインのオプション市場が今後30日でどれくらい動くと見込んでいるかを指数化したものです。
インプライド・ボラティリティ(IV)と呼ばれる予想変動率を、市場全体でまとめた指標にあたるので、ビットコインのVIXと考えるとイメージしやすいと思います。
DVOLは、実際に動いた記録ではなく、これから動くという予想に数値が付いたもの。ここが実現ボラティリティとの決定的な違いです。
反応しているのは方向ではなく、変動そのもの
DVOLの値動きには、ビットコイン投資家の感情・温度がそのまま映し出される特徴があります。
下落局面で投資家が感じるのは、含み益が消えていく、あるいは含み損が膨らんでいくという恐怖です。
そのため、多くの投資家がプット(価格が大きく下落したときに利益を最大化できるオプション)などの下落ヘッジポジションを慌てて買う動きが集中するため、DVOL値が跳ね上がります。
出典:TradingView(BINANCE:BTCUSDT)
一方、上昇・ヨコヨコ局面での感情は、恐怖ほど強く出ません。
含み益が増えていく心地よさはあっても「BTCは中長期的に右肩上がりの資産だから当然」と、多くの投資家は慌てて動く必要がなく、じりじりと上へ進む展開になりやすいのです。
慌てる人が少ない分、ヘッジポジションを買う動きも集中しないため、値動きが落ち着くのに合わせてDVOLの織り込みも自然と下落していきます。
BTC × DVOLの相関・逆相関関係について
- BTC下落 × DVOL上昇:恐怖からプット買いが集中し、下落幅以上にDVOLが跳ね上がる
- BTC上昇 × DVOL下落:じりじり上昇に慌てる投資家が少なく、織り込みも落ち着いていく
- BTC上昇 × DVOL上昇:稀に見るパターン。急騰による乗り遅れ焦りでコール買いが集中
ただし、ここで注意したいのは、DVOLが反応しているのは”恐怖”という方向そのものではなく、感情がどれだけ急激に振れたか、という変動の大きさそのものだという点です。
実際、BTCの急騰した局面に対して「こんなに上昇が加速していくのは驚きだ」という感情が発生すれば、BTCとDVOLに相関関係が生まれる稀なパターンもあります。
見るべきは絶対値ではなく水準
DVOLを判断材料にする際、確認すべきなのは数値そのものではなく、過去に相場が反応してきたサポート&レジスタンス帯にどれだけ近づいているか、です。
例えば安値圏に近づいているなら、相場の織り込みが縮み切っていて、そこから膨らむ余地が大きい。つまり下落による恐怖心(逆相関関係)もしくは急騰によるサプライズ(相関関係)に期待することができます。
出典:TradingView(BINANCE:BTCUSDT)
一方で高値圏にある場合は、変動の見込みがすでに数値として乗り切っていて、むしろ剥落に転じやすい。つまり緩やかな上昇や、レンジ相場を形成することが視野に入ります。
DVOL安値圏は拡大の起点、高値圏は吸収と剥落の起点。この2つの位置関係だけ覚えておけば問題ありません。
DVOLの読み取りパターン
- 安値圏に接近:織り込みが縮み切っているため、膨らむ余地が大きい
- 安値圏から反発を始めた:織り込みが再び膨らみ始めた。値動きに対する市場の感応度が上がり始めたタイミング
- 高値圏に位置している:変動の見込みがすでに値段に乗っているため、剥落に転じやすい
- イベント前に膨らみ、通過後に萎む:イベントの結果ではなく、織り込みの解消そのものが値動き
4. ファンディングレート|価格の向きと揃っているか、逆行しているか
プラスとマイナスが意味すること
無期限先物(パーペチュアル)には満期がありません。通常の先物であれば、満期時に必ず現物価格へ収束するという仕組みがあるため、それまでの間は価格が現物から離れていても問題になりません。
しかしパーペチュアルには満期という「強制的に価格を一致させるタイミング」自体が存在しないため、買いと売りの需給が偏ったまま放置されると、先物価格は現物価格からどこまでも乖離していってしまう可能性があります。
そこでロングとショートのあいだで一定時間ごとに手数料をやり取りし、需給の偏りを是正することで、先物価格を現物価格へ引き寄せる仕組みが組み込まれています。これがファンディングレートです。
レートがプラスなら、先物ロングが先物ショートに払っている。先物が現物より買われている状態です。
マイナスなら、ショートがロングに払っている。先物が現物より売られている状態になります。
ファンディングレートの読み方に移る前に、この「誰が誰に払っているか」という関係を覚えておきましょう。
数値の大きさではなく、価格との組み合わせで読む
このツールで見るのは、レートが何パーセントかではありません。価格の動きと向きが揃っているのか?それとも逆行しているのか?この一点だけです。
とくに重要なのが、価格が下落しているのにレートがプラスのまま、という組み合わせです。
価格は下がっているのに、ロングは手数料を払い続けている。つまり、下げているのにロングが解消されていない状態です。
粘っているロングがまだ残っているので、もう一段下押しすれば、そこが追加の清算につながります。
一方で価格が上昇しているのにレートがマイナスのまま、という組み合わせは、価格は上がっているのに、ショートは手数料を払い続けている。つまり、上げているのにショートが解消されていない状態です。
粘っているショートがまだ残っているので、もう一段上に押し上げれば、そこが追加の清算(踏み上げ)につながります。
ここまでの内容からわかるように、ファンディングレートは、レート単体では偏りの向きしかわかりません。その偏りにどれだけの量が乗っているかは、次のOIと組み合わせることで見えてきます。
ファンディングレートの読み取りパターン
- 価格が上昇 × プラス:素直な上昇。ただし過熱するとロングに偏りすぎ、上値での反落時に清算の燃料になる
- 価格が下落 × マイナス:素直な下落。投げが進んでおり、踏み上げが起きやすい局面
- 価格が下落 × プラスのまま:最重要。ロングが解消されておらず、追加清算のリスクが残る
- 価格が上昇 × マイナスからゼロ近辺:レバレッジの熱に頼らない上昇。現物やETFが主導しており、反発の質としては健全
5. OI(未決済建玉)|相場に乗っている「量」を測る
出来高とは別物
OIは、決済されずに残っているポジションの総量です。新しく建てられれば増え、決済されれば減ります。
出来高と混同されがちですが、別のものです。パーペチュアル取引における出来高が多くてもOIが増えていなければ、既存の保有者が入れ替わっているだけで、市場全体としてのポジション総量は変化していません。
取引そのものは行われていても、新たにレバレッジをかけたポジションが積み上がっているわけではないため、トレンドの大きな伸びに期待できないと判断できます。
一方、出来高が大きく、OIも増加傾向であれば「既存の保有者+新規保有者」と、ポジション総量が膨らむため、大きなポジション解消によるトレンドの伸びに期待できます。
OIは「量」しか教えてくれない
ここが最もつまずきやすい部分です。パーペチュアル取引におけるOIが増えていても、増えているのがロングなのかショートなのかはわかりません。
OIはポジション総量だけを示すため、向きを確認する際には、前項のファンディングレートと組み合わせて初めて判明します。
出典:TradingView(BINANCE:BTCUSDT)
例えば、OIが増加している局面でファンディングレートもプラス方向に上昇していれば、新規のロングが積極的に積み上がっていると判断できます。
反対に、OIが増加している局面でファンディングレートがマイナス方向に低下していれば、新規のショートが積み上がっていると判断できます。
同じ”OI増加”という現象でも、ファンディングレートがどちら向きに動いているかによって、積み上がっているのがロングなのかショートなのかがまったく変わってくる、ということです。
OI(未決済建玉)の読み取りパターン
- 価格が横ばい × OIも横ばい:様子見。大口が方向を取りに来ておらず、値動きも限定的
- 価格が上昇 × OI増加 × レートがプラス:レバレッジ主導。伸びやすいが、上値で清算される燃料も同時に積み上がっている
- 価格が上昇 × OI横ばい:レバレッジに頼らない上昇。急伸はしにくいが崩れにくい
- 価格が下落 × OI増加:新規のショートが入っている
- 価格が下落 × OI急減:強制的に解消された痕跡。燃料が抜けたので、同じ勢いでは下がりにくくなる
- OIが特定の水準で頭を打つ:その水準が、建玉の面から天井として意識されている
清算マップで「どこに燃料があるか?」まで見る
OIが示すのは総量だけで、その量がどの価格帯に分散して置かれているかまではわかりません。それを価格帯ごとに推定したものが「清算マップ」です。
清算マップでは、現在価格より下値にロング清算、上値にショート清算が、それぞれどの価格帯にどれだけ積まれているかを確認できます。下値のロング清算が厚ければ、そこを割ったときに連鎖して清算が進むため、次の値動きが加速する燃料になります。
上値のショート清算が厚ければ、そこを上抜けたときに連鎖してショートの踏み上げが発生し、反発上昇もしくは順張りが加速する燃料があるということになります。
反対に、清算が薄い価格帯であれば、テクニカル的に重要な水準を突破しても、自律的な加速は起きにくくなる、という仕組みです。
なお清算マップは、上値=ショート清算、下値=ロング清算と、清算が発生しやすい方向をあらかじめ確認できるため、ファンディングレートとOIを組み合わせて導いた方向性の「答え合わせ」として活用することをオススメします。
【まとめ】5つを重ねて、初めて環境認識になる
今回の記事では、なぜオプション分析から、未来に対する市場参加者の意識を読み取ることができるのか?その理由と、私たちが実際に活用している5つの主要ツールの見方について解説してきました。
ここまでの内容を通して「ツール単体を見るだけであれば、意外といけるかもしれない」と感じた方もいるかもしれません。
しかし、単独で正確に読める指標は一つもありません。実際に使うときの組み立ては、次の3段階です。
本稿で解説した主要ツールの役割
1. いつ動く可能性があるのか=加速力
実現ボラティリティで環境が整ったか(順イールド)/DVOLで織り込みが縮んでいるかを確認
2. どこで何が起きるのか=価格
GEXにおける抑制・増幅・境界線が実際のチャートで、どこに位置しているかを確認
3. どれだけの量が乗っているか=方向性
OIで総量、ファンディングレートで向き、清算マップで増幅の燃料を確認する
ツール単体を見るのではなく、GEXやDVOL、ファンディングレートなど、それぞれの役割を理解したうえで組み合わせ、実際の相場と照らし合わせて初めて、正確なオプション分析が完成します。
「一気に難しくなった」と不安に思う方もいるかもしれませんが、実際に過去のビットコインの値動きと主要ツールを重ねて見ていくと、思っているほど難しく感じません。
そのため次の記事では、この3段階のオプション分析を、実際の相場に当てはめて検証していきます。
2026年2月・2026年6月下旬という2つの下落局面で、主要ツールのデータがどう並び、どこで条件が揃っていたのか?
天井からのショートポジションの精度を高めることができた「答え合わせ」を、詳しく解説していきます。
関連ガイド
木田 陽介
株式会社ICHIZEN HOLDINGS|代表取締役
2016年より暗号資産市場へ参入。2019年に暗号資産メディアCoinOtaku(現CoinPartner)の代表に就任。2020年に同社の株式譲渡を行い、上場企業傘下で暗号資産事業を経験。2025年より株式会社ICHIZEN HOLDINGS代表に就任。現在は暗号資産レンディングサービス「HyperLending」の運営および自己勘定でのトレーディングを統括し、オプション市場を含めた相場分析を日次で配信している。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。



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