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ストラテジー(旧マイクロストラテジー)とは?MSTR株とビットコイン財務戦略・mNAVを解説

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ストラテジー(旧マイクロストラテジー)とビットコイン財務戦略のイメージ

暗号資産(仮想通貨)はビットコイン(BTC)の誕生から始まり、制度や市場が成熟してきて、企業が財務資産として保有するまでに発展しました。企業が保有する仮想通貨の銘柄もビットコインから始まり、現在はアルトコインを保有する企業も増えてきています。

こういったDAT(Digital Asset Treasury)企業の先駆けとなったのは、ビットコインを積極的に増やすことを戦略に掲げているストラテジー(旧マイクロストラテジー)です。

DAT企業の中には、ストラテジーを含めて仮想通貨を売却する企業もあり、最近は特に投資家の注目度が高まっています。特に、時価総額1位のビットコインを世界最大量保有するストラテジーは、大きな関心を集めています。

そこで本記事では、ストラテジーの会社概要やリスク、ビットコイン財務戦略、同社の普通株である「MSTR」への投資などについて、初心者にもわかりやすく解説します。

目次

1. 会社概要

ストラテジーの創設は1989年。本社は米バージニア州にあります。

もとの社名はマイクロストラテジーでしたが、2025年2月に現在のストラテジーに変更。社名の新しいロゴにビットコインを象徴する「₿」の文字とオレンジ色を採用し、ビットコイン事業を重視する経営方針をより鮮明にしました。

同社がビットコイン財務戦略を開始したのは2020年8月。その前は、ビジネスインテリジェンス(BI)のサービスを提供していました。各企業が自社のデータが持つ膨大な価値を活用できるようにサービスを行ってきました。

同社は現在もビットコイン財務戦略を行いながら、BI事業を継続して相乗効果を狙っています。一方で、事業の中心は、企業価値や市場からの評価も含めてビットコインの財務戦略です。

なお、同社の普通株であるMSTRは、1998年6月にナスダックに上場しました。

2. マイケル・セイラー氏とビットコイン哲学

続いて、ビットコイン強気派として知られるストラテジーのマイケル・セイラー氏と同氏のビットコイン哲学を紹介します。

2-1. セイラー氏とは

セイラー氏はストラテジーを共同創設した人物で、現在は同社の会長を務めています。ビットコインの強気派として知られ、同社のビットコイン戦略を主導しています。

会長に就任したのは2022年8月で、それまではCEOを務めていました。会長就任の発表では、CEOの職は後任に託し、自身はビットコインの投資戦略や支持活動にさらに集中していきたいと述べています。

同社の公式サイトによると、セイラー氏の肩書きは起業家、経営者、発明家、作家、慈善家です。ストラテジー以外にも複数の企業を創設したり、48超の特許において発明者として名前が掲載されていたり、書籍を出版してベストセラーになったり、「セイラー財団」を創設して寄付をしたりもしています。

セイラー氏は1987年にマサチューセッツ工科大学を卒業して、空軍での職務やコンサルティングのキャリアを経て、1989年にストラテジーを創設しました。

2-2. ビットコイン哲学

セイラー氏はこれまで、ビットコインに関する強気な見方を多く発信してきました。本パートでは、同氏の見方をまとめ、なぜストラテジーがビットコインへの巨額投資を続けるのかを探ります。

インフレ耐性

まずは、ストラテジーがビットコインを購入し始めたきっかけですが、セイラー氏は米ドルを大量保有することは長期的に見て賢明ではないと判断しました。ビットコイン戦略を開始する前、同社のバランスシートは大部分が米ドルでした。

同社がビットコインを購入し始めた2020年は、新型コロナウイルスが世界的に大流行していた時期です。この時に米連邦準備理事会(FRB)は経済を下支えするために金融緩和策を実施。大幅な利下げと大規模な量的緩和プログラムによって、米ドルを保有することで得られる利益が著しく減少しました。

この時にセイラー氏は、複合的な経済状況を踏まえ、インフレに強い資産への転換が合理的な戦略だと結論づけ、ビットコイン戦略に移行しています。

ビットコインは発行数量に上限が設定されていることで、対インフレ力のある資産との見方は多く、セイラー氏はビットコインの潜在的な強さをゴールド(金)やシルバー(銀)と同等に評価しています。

同社のビットコイン戦略の背景には、インフレや法定通貨の価値毀損への処方箋にするとの考え方があります。

アルトコインやゴールドとの比較

他にもセイラー氏は2025年8月にブルームバーグのインタビューで、ビットコインは世界のデジタル資本であり、今後も株価指数S&P500を上回るパフォーマンスを見せることを確信していると強調しました。

この時は、企業の財務資産としてイーサリアム(ETH)を筆頭にアルトコインへの関心が高まっていましたが、ビットコイン財務戦略こそが低リスク・高リターンの最もわかりやすい戦略だとの考えを示しています。

セイラー氏は、アルトコインを財務資産として保有する企業に注目が集まることによって、ストラテジーのビットコイン戦略の取り組みから関心が逸れる懸念はないとの見方を示しています。

他にも同氏はビットコインを「デジタルゴールド」と呼び、物理的なゴールドの重さ、輸送コスト、関税などの制約を克服する存在として高く評価し、価値の保存手段としては物理的なゴールドよりも優れていると主張しています。

また、ビットコインは数分で世界中どこでも、誰とでも決済が可能だと指摘。決済における迅速性と効率性を強調し、物理的なゴールドからビットコインへの資本移動が加速するだろうとの見方を示しました。

長期保有を推奨

他にもセイラー氏は2025年5月、「Bitcoin 2025」というイベントで「富への21の道」と題した基調講演を行った際、ビットコインを「完璧な資本」と表現し、投資家に長期保有を促しました。

この時に、すべての思慮深い個人が完璧な資本を求め、すべてのAI(人工知能)がプログラム可能な資本を欲するだろうと主張。法定通貨や債券、不動産をビットコインに交換することを推奨し、ビットコインはすべてを上回るパフォーマンスを発揮するよう設計されていると強調しました。

3. ビットコイン保有量の現状と推移

それでは、実際にストラテジーが現在どのくらいのビットコインを保有しているのか、どのように買い増してきたかを確認していきましょう。

3-1. 保有量の現状

まず、2026年9月2日時点におけるビットコイン保有量は84万5,050BTCです。また、累計の取得平均単価は1BTC=7万5,412ドルで、総投資額は約637億ドルです(ストラテジー公式サイト)。

同社の保有量は、上場企業全体の中で最大です。ビットコイン現物ETF(上場投資信託)の中で最も多くのビットコインを保有するブラックロックの「IBIT」の保有量が2026年8月25日の確認時点で約75万BTCなので、ETFの商品を含めても最も多く保有しています。

なお、上場企業によるビットコイン保有については以下の記事をご参照ください。

3-2. 保有量の推移

続いて、保有量の推移を各年ごとの報告を基準にして確認していきます。なお、一部の報告日においてストラテジーの公式サイト、米証券取引委員会(SEC)への報告書類、プレスリリースなどで日付に違いがあるため、本記事ではストラテジーの公式サイトの「LEDGER」タブに書かれている日付で統一します。

まずは、ビットコイン保有量の全期間における推移は以下の通りです。オレンジ色の線(左軸)がビットコイン保有量を表し、緑色の線(右軸)が保有量の価値を米ドルで示しています。

最初の購入は2020年8月10日に公表しました。この時は2万1,454BTCを購入。平均取得単価は1万1,652ドルでした。

また、2020年は12月21日には2万9,646BTCを購入したことを報告。この時の取得単価は2万1,925ドルで、合計保有量は7万470BTCに増加しました。2020年は、この時の報告が最も購入量が多かったです。なお、以下も含めて、前回の発表からの期間を考慮せずに、購入量を比較しています。

2021年は、2月19日に1万9,452BTCの購入を報告。2021年の報告ごとの比較では、この購入数が最も多かったです。この時の平均取得単価は5万2,765ドル、合計保有量は9万531BTCに増えました。

2022年は、年の途中からビットコインを買い始めた2020年を除くと報告回数が5回と最も少なく、購入量も301BTCから4,167BTCの範囲で相対的に多くはありませんでした。この年で最も多い4,167BTCの購入を報告したのは4月5日で、この時の平均取得単価は4万5,714ドル。合計保有量は12万9,218BTCに増えました。

2023年は、最も多くの購入量を報告したのは11月30日で、この時は1万6,130BTCを買いました。この時の平均取得単価は3万6,785ドルで、合計保有量は17万4,530BTCに増加しています。

2024年で特徴的な点は、11月18日と11月25日と2週連続で5万BTC以上の購入を報告したこと。過去の購入履歴を見ても5万BTCを超える購入はこの2回しかありません。購入量が最も多かったのは11月25日で5万5,500BTCを購入。この時の取得単価は9万7,862ドルで、合計保有量は38万6,700BTCに増えました。

2025年の特徴は、報告回数が43回と以前に比べて最も多かったことと、平均取得単価が10万ドルを超える購入が続いたことです。最も平均取得単価が高かったのは2025年10月13日報告の12万3,561ドルで、この時は220BTCを購入。この時点での合計保有量は64万250BTCです。

2026年に入ると、ストラテジーは優先株の配当支払いやSTRCの買い戻し、ドル準備金の積み増しを目的として、保有するビットコインの売却を選択肢に含める方針へ転換しました。2026年6月1日には2022年12月以来初となる売却(32BTC)を公表。この売却後の合計保有量は84万3,706BTCでした。

その後、6月中は小規模ながら買いを再開し、保有量は一時的に増加しました。しかし6月末から7月にかけて大規模な売却を実施し、保有量は再び減少に転じます。さらに8月にも売却を続け、夏の間に合計で約6,900BTC近くを売却しました。

そして8月31日、約2ヶ月ぶりに本格的な買いを再開。4,603BTCを平均取得単価8万318ドルで購入し、合計保有量を84万5,050BTCまで回復させました。この時点での累計取得コストは約637億ドル、平均取得単価は7万5,412ドルとなっています。

4. MSTR株の仕組みと株価推移

4-1. ビットコインの間接投資手段

ビットコインを大量保有するストラテジーのMSTRは、ビットコインの間接投資手段ともみなされています。本節では、その理由や仕組みを解説します。

ビットコインの間接投資手段とされる理由はまず、同社の事業の中心が、企業価値や市場からの評価も含めてビットコインの財務戦略であるためです。ビットコインを大量保有しているストラテジーの価値、つまり株価が、ビットコイン価格と相関することは想像しやすいと思います。

一方で、ビットコイン価格と相関するだけであれば、ビットコインの現物を買ったり、価格が連動するETFを購入したりすることで利益を狙うことできます。

同社の株がビットコインの間接投資手段として利用される最も大きな理由は、価格変動の度合いです。つまり、仕組みは後述しますが、メリットだけを見ればビットコインを上回る値上がり益を狙うことができます。MSTRは強気相場では、ビットコインの値動きを1.5〜2倍ほど増幅して連動しやすいと言われています。

価格上昇の仕組み

この価格上昇の仕組みを理解するには、「mNAV」と「プレミアム」という言葉を理解する必要があります。

まず、mNAVとは、株価と1株あたりの純ビットコイン価値を比較した倍数です。株価を1株あたりの純ビットコインの価値で割って算出します。なお、今回は記事の性質上、細かい定義は割愛します。ストラテジー公式サイトによると、2026年9月2日時点のmNAVは約1.05倍です。

mNAVは1を判断の基準にします。指数は、ストラテジーの公式サイトなどで確認できます。

ストラテジーのmNAV(マーケット純資産価値倍率)表示画面

出典:ストラテジー

mNAVが1を超えていれば、市場はストラテジーの株を、同社が保有しているビットコインの価値以上に評価していることになります。株の方が高く評価される理由は様々あり、ビットコインを買い増しすることへの期待や市場が活気づいていることなどが考えられます。

逆に、1を下回っていれば、市場はストラテジーの株を、保有しているビットコインの価値よりも低く評価していることになります。mNAVは倍率を表していて、わかりやすく言うと「株価が保有ビットコインの価値よりも高いか低いか」を表します。

つまり、1を超えている場合、ストラテジーの株価は保有ビットコインよりも高く評価されていることになり、その差を「プレミアム」と呼びます。

MSTRがビットコインの間接投資として利用される大きな理由は、このプレミアムにあります。もちろん単純にプレミアムが付いていれば代替投資手段として魅力はありますが、それだけではありません。

ストラテジーは、mNAVが1を超えている状況では株を発行して資金を集めやすくなります。そして、この調達資金で、さらにビットコインを買い増すのです。株数は増えることになりますが、発行価格が高いぶん1株の中身が減らず、逆に微増させることができると言われています。

さらに、ビットコインの保有量が増えることで、ストラテジーの評価と株価が上昇します。つまり、mNAVが上昇し、さらに資金調達をして、ビットコインを追加購入するという好循環が生まれるのです。

この循環は、ビットコインを上回る株価を生み出すことにつながります。これが、ビットコインの間接投資手段としてMSTRが機能する仕組みです。

一方で、プレミアムが付くこともあれば、ディスカウントでMSTRが取引されることもあります。ディスカウントで取引される理由にも様々あり、同社の財務やビットコイン相場への不安などが考えられます。

この状態では株を発行してビットコインを買う効率が悪くなり、上述した循環が逆回転する可能性に注意が必要です。

4-2. MSTRの価格推移

続いて、MSTRの価格推移を見ていきましょう。なお、以下の株価はすべて2024年8月の1→10株式分割調整後の値です。以下はTradingViewのチャートで、ストラテジーがビットコインを購入し始めた年の2020年から2026年8月時点のチャートを表示しています(価格は右軸)。また、オレンジ色の線はビットコインの同期間の値動きです(価格は左軸)。

MSTRの価格推移

出典:TradingView

MSTRの価格は、全体的にビットコインの値動きに相関していることがわかります。細かく見ていくと、まずは2020年8月のビットコイン財務戦略を開始後、ビットコインの上昇とともに株価が上昇しています。直前の2020年7月は11ドルから12ドルのレンジで株価は推移していました。

その後、2020年11月ごろからビットコインの上昇に合わせ、ビットコイン財務戦略開始後に初めてMSTRが急騰。2021年2月9日には株価が130ドルを超えました。この時期にはコロナ禍の金融緩和などを背景にビットコインが上昇して最高値を更新したことが株価に影響しています。

また、ストラテジー社はこの時に資金調達を継続しており、このことがビットコイン価格と株価の双方に影響を与えました。

一方で、その後は2021年12月から2022年12月にかけてビットコインも値を下げ、株価は13ドル台に下落。この時の相場には中央銀行による金融引き締め政策や仮想通貨取引所FTXの破綻などが影響しました。

その後は2023年1月を境に株価は上昇に転じます。ビットコインとともに値を上げ、2024年11月21日には株価が、ビットコイン財務戦略開始前も含めた過去最高値を更新し、一時540ドルを超えました。

この期間には、2024年の米SECのビットコイン現物ETF承認や半減期への期待、ドナルド・トランプ氏が大統領選での仮想通貨支持表明後に当選したことなどが影響しビットコインが上昇。また、ストラテジーの材料としては、2024年12月にナスダック100指数への追加が決定しました。

その後も一時的な下落を経て、トランプ政権の発足などを背景にビットコインが2025年の過去最高値更新に向けて上昇する際に再び株価は上がりました。

しかし、上記のチャートを見ると、厳密にはビットコインよりも早いペースで下落していることがわかります。この時期には、2025年8月ごろにビットコイン財務企業の減速が報告されたり、同9月にMSTRがS&P500指数リバランスで編入されなかったりしたことがありました。

その後、米国の関税引き上げによるトランプショックやイラン情勢などを経て、2026年にかけてビットコインとともに株価は下落。仮想通貨相場とともに低迷しました。

一方その後は、2026年8月19日に米財務省が発表した長期国債の買い入れ消却拡大や同日開催のホワイトハウスでの仮想通貨業界との会合などを材料にして、ビットコインと共に株価が上昇に転じたというのが2026年8月時点の市況です。

4-3. ビットコインETFとの違い

続いて、ビットコインへの間接投資手段であるETFとMSTRの違いをみていきましょう。今回は、なぜ投資家がETFではなくMSTRを選ぶのかを探ります。

比較項目MSTRビットコインETF
価格連動過去の強気相場ではBTC価格を1.5〜2倍程度増幅する傾向BTC価格に連動するよう設計
値上がり益ETFを上回る可能性ありBTCに連動
リスク企業固有リスクあり・損失も拡大BTC価格変動リスクのみ
NISA利用成長投資枠で購入可日本では未承認(2026年9月時点)
機関投資家仮想通貨投資不可の機関も保有可規制次第で投資可否が異なる
株価指数組入可能性あり(流動性による資金流入期待)ETF自体の組入は対象外

MSTRは、ストラテジー自体が資金調達を通じた高いレバレッジをかけており、リスクをとってでもETFを上回る値上がり益を狙う投資家に向いています。

なお、今回はMSTRを選ぶ理由に特化しましたが、より大きな利益を狙えることはリスクが高いことと表裏一体であり、損失がより膨らむ可能性もあります。また、ストラテジーの財務状況といった企業固有のリスクなど、デメリットがあることも覚えておきましょう。

4-4. 機関投資家の保有状況

本節の最後にMSTRを保有する機関投資家を紹介します。MSTRが上場するナスダックの公式ウェブサイトによると、2026年8月25日時点で確認できるデータでは、1,086の機関投資家が合計で2.3億株超のMSTRを保有しています。

四半期ごとのデータによると2026年6月末時点では、キャピタル・インターナショナル・インベスターズが約3,490万株を保有していて、2026年9月2日時点では最も保有量が多いです。他にも大手企業では、ブラックロックが約1,939万株を保有しています。

また、ゴールドマン・サックスが約581万株、バンク・オブ・アメリカが約118万株、BNYが約103万株、シティグループが約96万株、JPモルガン・チェースが約62万株、三井住友トラストグループが約60万株保有しています。

5. 資金調達の仕組み

続いて、ストラテジーがビットコインを買うための資金をどのように調達しているかをみていきます。

5-1. 転換社債

同社が行う資金調達手段の1つ目は、転換社債(Convertible Bond:CB)の発行です。

転換社債は名称の通り社債(債券)で、金利(クーポン)や償還などについて設定が行われる点では普通社債と同じです。一方で、転換社債には一定の条件で保有者が発行企業の株に転換できる権利が付いています。

ストラテジーは、ビットコイン財務戦略を開始した2020年から、転換社債の発行による資金調達を活用しています。その後に、以下の株のATM(アット・ザ・マーケット)プログラムも活用するようになりました。

5-2. ATMプログラム

2つ目の資金調達方法は、そのATMプログラムです。

ATMプログラムとは、企業が証券会社と契約し、公開市場でリアルタイムの株価に連動して新株を少量ずつ発行・売却して、資金を調達する方式。大型の一括公募とは異なり、発行タイミングと数量を会社側が柔軟にコントロールできるのが特徴です。

ストラテジーは、普通株や優先株(優先的な権利が保有者に与えられる株)のATMプログラムでの売却を資金調達手段の1つにしています。

なお、この資金調達は普通株や優先株を新規発行しているので、希薄化のリスクがあります。希薄化とは、新たな株を発行して株の総数が増えることによって、既存の株主の持分や1株当たりの価値が相対的に下がることを指します。

一方でストラテジーは、株価にプレミアムが付いたところで株を少量ずつ売却し、その売却益でまたビットコインを買えば、株数は増えますが発行価格が高いぶん「1株の中身」が減らず微増すると述べ、これが「正の希薄化」であると主張しています。

5-3. 資金調達計画

続いて、ストラテジーの具体的な資金調達プランをみていきましょう。まずは、2024年第3四半期(7〜9月)の業績発表時に公表した「21/21プラン」です。

このプランの「21」は調達計画額を表しています。具体的には、210億ドルの株式と210億ドルの債券で、合計420億ドルの資金を調達するという計画のこと。英語だと210億ドルは「21 billion」と書くため、計画名には21が使われています。

同社のフォン・レCEOは当時、株主価値の向上を目指す方針を示し、ビットコイン財務企業としてこの追加資金を活用して、より高いビットコイン利回り(BTC Yield)を達成できる方法で、財務準備資産としてのビットコインを追加取得する方針だと説明しました。

ビットコイン利回りとは、ストラテジーが保有するビットコインの、希薄化後の発行済み株式に対する比率がどれだけ変化したかを示す指標。簡単に表現すると、一定期間に1株の中に入っているビットコインが何パーセント増えたかを指します。

なお、この21/21プランは、2025年第1四半期(1〜3月)の業績発表時に「42/42プラン」に更新されました。

数字の意味は21/21プランと同様です。この時ストラテジーは、株式と債券を通じて資金を確保すると述べ、ビットコイン購入のための資金調達目標額を840億ドルに倍増すると説明しています。840億ドルに到達する目標時期は2027年までです。

6. 投資リスクや注意点

続いて、ストラテジーの株やビットコインに投資する際のリスクや、同社に関する注意点について説明します。

6-1. ビットコイン価格の下落

まずは、同社の資産の中核であるビットコインの価格が下落した場合のリスクです。

ビットコインを大量保有するストラテジーは、企業価値がビットコインの相場から大きな影響を受けます。たとえ含み損の状態であっても、保有ビットコインの損失を計上するため帳簿上のダメージは明確であり、企業の財務健全性、そして破綻リスクに対する懸念が広がるにつれて株価も下落してしまいます。

しかも、ストラテジーはもともと保有していた資金だけでなく、株や社債の発行を通してビットコインを購入しているためレバレッジがかかっており、ビットコイン以上に株価が下落する可能性があります。

また、株価が下落し、mNAVが1を下回って資金調達が困難になることでも財務状況が悪化します。この状態で新株を発行すれば、正の希薄化は実現できず、ビットコインを購入しづらくもなります。

同社が資金調達に活用する優先株や社債はそれぞれ配当と利息を支払う必要があり、資金調達を停止しても過去の調達コストの負担が継続しています。

実際に、優先株の配当支払いなどに使うためにビットコインを売却することもあり、この状態がビットコインのさらなる下落につながって、資金の逆回転に発展するリスクがあります。

6-2. mNAVプレミアムのリスク

株価にプレミアムが付いてmNAVが1を超えて高い状態を維持することは、上述した通りストラテジーのビットコイン財務戦略の原動力ですが、その持続可能性には不確実性が伴います。

mNAVの高さは主に、資金効率良く価値のあるビットコインを買い増し続けられるという期待によって支えられており、その期待が弱まればmNAVが下がることになります。単純にビットコインの下落によって企業評価が下がることでもmNAVは低下しえます。

また、ビットコイン現物ETFの普及や競合するビットコイン財務企業の誕生によって、ストラテジーの希少性が弱まっており、株価に影響を与えているとの指摘もあります。

さらに、プレミアムを前提にした新株発行を続けるほど発行済株式数は増加していき、将来的にmNAVを高水準に維持すること自体が構造的に難しくなっていく側面もあります。株の継続的な発行には希薄化リスクがあります。

プレミアムは保証されたものではなく、投資家の期待に依存する側面も大きく、リスクを伴うものであることを覚えておきましょう。

6-3. 規制リスク

ストラテジーは米国の上場企業で厳格な監督下にあり、特に規制の影響を大きく受けます。

現在はトランプ政権の方針によって仮想通貨に対する当局の姿勢は肯定的ですが、政権交代や当局の対応変更が企業価値に影響しやすい点には注意が必要です。

この影響によって資金調達が制約されたり、コンプライアンスのコストが増加したりする可能性も考えられます。

また、仮想通貨の規制が強化されたり、規制が不明確な状態が維持されたりすれば、ビットコインの下落につながる可能性もあります。上述した通り、ストラテジーの評価はビットコインの価格に大きく左右されます。

6-4. セイラー氏への依存リスク

他にもストラテジーには、セイラー氏個人に依存することによる「キーマンリスク」があります。同氏は個人としてもビットコインを保有しており、同社がビットコインを売却しても自身は一切売っていないとXに投稿して注目を集めるなど、強い発信力や影響力を持っています。

ストラテジーのビットコイン財務戦略は、セイラー氏の強いビジョンや推進力に大きく依存しており、資金調達環境や株価に大きな影響を与えているとの指摘があります。

影響力が強く戦略をリードできるキーマンが存在することにはメリットもありますが、リスクにも注意する必要があります。セイラー氏が退任したり、影響力が低下したりした場合、新体制で同様に戦略を推進できるかは未知数です。

セイラー氏の不在や影響力の低下は、企業戦略の継続性や市場の期待、株価、ビットコイン相場に影響を与える可能性があります。

7. MSTRの投資方法

本節では、日本から行うMSTR投資について解説します。今回は海外銘柄であることに関する注意点に重点を置きます。

7-1. 購入方法

日本の証券会社を利用する際は、まずは証券会社に口座を開設する必要があります。口座開設の具体的な方法については、1社の事例として以下の記事を参照してください。口座が開設できれば、各証券会社のプラットフォームから売買ができるようになります。

MSTRの取り扱いはSBI証券の米国株取扱銘柄一覧よりご確認ください。

7-2. 注意点

海外銘柄であることに関する注意点は、まずは米ドル建てで取引されることです。日本の金融商品とは異なり、円に換算した際の購入コストや損益に為替相場が影響します。

特に投資家が気になるのがリターンへの影響です。MSTRでは、為替変動によって以下の影響があります。

  • 円高:ドル建てで株価が上がっていても、円換算すると利益が目減りしたり、場合によっては損失を被っていたりする場合がある
  • 円安:円高とは逆で、円でのリターンを押し上げるようになる

また、確定申告などの税制に関することも覚えておく必要があります。

まずは、MSTRに投資する際は、NISAの口座と一般口座・特定口座のどちらを使うかを選べます。NISAの口座では売却益(譲渡益)に税金がかかりません。

一方、一般口座・特定口座での売買は売却益に20.315%の税金が課されます。また、源泉徴収ありの特定口座であれば、証券会社が損益を計算して税金を差し引くため、原則として確定申告は不要であることも覚えておきましょう。

MSTR株の売買に伴う課税は以下の通りです。なお、2026年9月2日時点ではMSTRに配当は付与されないため(優先株STRCなどは配当あり)、これから配当がつく時のために参考にしてください。

区分内容
売却益米国では課税されず、日本で20.315%がかかる。税率・手続きは国内株と同じ。NISA口座は非課税
配当米国で10%が引かれ、その残りに日本で20.315%がかかる

なお、配当の二重課税を緩和するために、外国税額控除(国税庁)という仕組みが設けられています。確定申告を行えば、米国で課された税額の一部または全部が控除の対象となります。外国税額控除については、以下の点を覚えておきましょう。

  • 控除には上限があり、全額が戻るとは限らない
  • 源泉徴収ありの特定口座を使っていても、控除を受けるには確定申告が必要
  • NISAの配当は、日本の税金がかからない代わりに控除の対象から外れ、米国の10%が残る

他にも、MSTRに投資する際は、「日本とは取引時間が異なること」「開示される情報が英語で書かれていること」などにもご注意ください。

8. よくある質問

ストラテジーとMSTRに関するよくある質問と回答をまとめました。

  • Q ストラテジーとマイクロストラテジーは同じ会社ですか?

    同じ会社です。2025年2月に社名をマイクロストラテジー(MicroStrategy)からストラテジー(Strategy)に変更しました。新しいロゴにはビットコインを象徴する「₿」の文字とオレンジ色が採用されており、ビットコイン事業を重視する経営方針をより鮮明にしています。ナスダックで取引されているティッカーシンボル「MSTR」は変更されていません。
  • Q MSTRはNISAで購入できますか?

    はい、購入できます。MSTRはナスダックに上場している米国株であり、NISA(少額投資非課税制度)の成長投資枠から購入することが可能です。NISA口座での売却益(譲渡益)は非課税になります。ただし、日本ではビットコイン現物ETFが2026年9月時点で未承認のため、MSTRはビットコインに間接的に投資できる有力な手段の一つとなっています。
  • Q ストラテジーのビットコイン保有量は世界一ですか?

    2026年9月時点では、単一の法人として世界最大の保有量です。2026年9月2日時点の公式データによると保有量は84万5,050BTCで、ビットコイン現物ETFの中で最大のブラックロック「IBIT」(約75万BTC)を上回っています。ストラテジーは企業・ETFを含めても最も多くのビットコインを保有しています。
  • Q mNAVとは何ですか?

    mNAV(マーケット純資産価値倍率)は、ストラテジー株の評価を1株あたりのビットコイン純保有価値と比較した指標です。株価を1株あたりの純ビットコイン価値で割って算出し、「市場がストラテジーをビットコインの実質価値より高く評価しているか低く評価しているか」を示します。1を超えていれば株価にプレミアムが付いており、ストラテジーは株を発行してビットコインを効率よく買い増しできる状態です。1を下回るとその循環が逆転するリスクがあります。
  • Q MSTRとビットコインETFの違いは何ですか?

    最大の違いは価格変動の大きさです。ビットコインETFはビットコイン価格に連動するよう設計されていますが、MSTRは強気相場でビットコインの1.5〜2倍程度の値動きをする傾向があります。これはストラテジーが転換社債やATMプログラムで資金調達しレバレッジをかけているためです。ETFは純粋にビットコイン価格への連動を求める投資家向けで、MSTRはより高いリターン(同時により高いリスク)を狙う投資家や、ETFに投資できない機関投資家に利用されます。
  • Q ストラテジーはビットコインを売却することはありますか?

    あります。長らく売却しない方針を維持してきましたが、2026年6月1日に2022年12月以来初となる売却(32BTC)を公表しました。優先株の配当支払いなど資金需要が生じた際に売却が行われる公算があります。創業者のセイラー会長は個人として一切売却していないと表明していますが、会社の判断として売却する可能性は排除できません。

9. まとめ

以上がストラテジーの会社概要やビットコイン財務戦略などに関する解説です。同社は現在、ビットコインの買い手・売り手の双方として相場に大きな影響力を持っており、投資家からの注目度が一段と高まっています。

仮想通貨投資や株投資を行う際に、本記事の内容を参考にしてみてください。

出典・参考資料
ストラテジー公式サイト(Bitcoin Ledger)
国税庁:外国税額控除
SBI証券:米国株取扱銘柄一覧

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