USDT(テザー)は、米ドルと1:1で連動するように設計されたステーブルコインで、2026年時点で流通量が約1,800億ドル台に達する世界最大のステーブルコインです。
発行元はTether Limited社で、米国債を中心とした裏付け資産を保有することで価値を維持しています。ただし、公開情報は「完全な会計監査」ではなく、外部会計事務所(BDO Italy)による四半期ごとの「アテステーション(合意手続き)」であり、その違いを理解しておくことが重要です。
日本国内の暗号資産交換業者ではUSDTの取り扱いはなく(2026年7月時点)、海外取引所やDeFi(分散型金融)での利用が中心です。EU圏では2026年7月以降、MiCA規制への未対応を理由に主要取引所でのUSDTへの制限・一部上場廃止の動きが進んでいます(取引所ごとに対応は異なります)。
USDTとは?仕組みと基本情報
USDT(Tether/テザー)は、米ドルに価値を連動させたステーブルコインです。「1USDT = 1米ドル」を維持するように設計されており、仮想通貨特有の価格変動(ボラティリティ)が極めて小さいのが最大の特徴です。
ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)をはじめとする仮想通貨は、価格が短期間に大きく上下することがあります。こうした不安定性を補う存在として登場したのがステーブルコインであり、USDTはその代表格です。
| 通貨名 | Tether(テザー) |
|---|---|
| ティッカーシンボル | USDT |
| 発行元 | Tether Limited社 |
| 発行開始 | 2014年10月(Omni Layer上での発行) |
| 流通量 | 約1,800億ドル台(2026年7月時点・変動あり) |
| 発行上限 | なし |
| コンセンサス | 各チェーンに依存(Ethereum:PoS / TRON:DPoS / TON:PoS) |
| 公式サイト | tether.to |
テザーの仕組み
テザーはもともとビットコインのブロックチェーンを利用したトークン発行プラットフォーム「Omni Layer」上で発行されました。現在は複数のブロックチェーンで流通しており、Tether Limitedが中央集権的に管理・運営しています。
発行の仕組みは以下の通りです。
- ユーザーがTether Limitedに米ドルを預ける
- 同額のUSDTが発行される
- USDTを返却するとドルが払い戻され、そのUSDTは消却される
Tether社はこの裏付け資産として、米国短期国債(T-Bills)を中心に、現金同等物、金、ビットコインなどを保有していることを公式に示しています。裏付け資産の状況は、BDO Italyによる四半期ごとのアテステーション(合意手続き)として開示されており、公式の透明性ページ(tether.to/transparency/)では流通量が日次更新されています。
対応ブロックチェーンとネットワークの選び方
USDTは複数のブロックチェーンで発行されており、用途に応じて使い分ける必要があります。現在主に利用されているネットワークは以下の3つです。
手数料が安く送金速度が速い。取引所間の資金移動に最も広く使われている。
DeFiやNFTなどのWeb3サービスで利用が中心。対応サービスが豊富だがガス代は高め。
2024年に対応開始。TelegramエコシステムでのP2P送金や決済で実需が拡大中。
このほかSolana、Polygon、Avalancheなどにも対応しています。なお、Algorand・EOS・Omni・BCH-SLPの4チェーンは2025年9月以降サポートを終了しており、主要チェーンへの集約が進んでいます。
送金時はネットワークの選択を必ず確認してください。異なるネットワークに誤送金した場合、資産が失われる可能性があります。
USDTの特徴とメリット
USDTは価格の安定性という特性から、仮想通貨市場において多様な場面で活用されています。主な特徴・メリットを整理します。
価格が安定している
USDTは米ドルとのペッグ(連動)により、1USDT = 1ドル前後の価格を維持するよう設計されています。ビットコインが1日に数十%変動することもある中、USDTのボラティリティは極めて低く抑えられています。仮想通貨で利益確定した資産を一時的に保持したり、相場の急落時に避難先として活用したりする際に適しています。
ステーブルコイン最大の流通量・流動性
USDTはステーブルコインの中で最大の流通量を誇り、ステーブルコイン市場全体のシェアの約6割を占めます。また、1日の取引高はビットコインやイーサリアムを上回る日もあるほど活発で、世界中の取引所で高い流動性が確保されています。この規模の大きさが、海外取引所でのデファクト基軸通貨としての地位を支えています。
海外取引所・DeFiでの基軸通貨
Binance(バイナンス)やBybit(バイビット)などの大手海外取引所では、ビットコインやイーサリアムを含む多くの通貨ペアがUSDT建てで取引されています。日本円や米ドルを直接使わなくとも、USDTを保有していれば多くのアルトコインと取引が可能です。また、取引所間の資金移動の中継通貨としても広く利用されています。
関連:DeFi(分散型金融)とは?仕組み・始め方・リスクを完全解説
DeFiでのイールドファーミング活用
DEX(分散型取引所)では、USDTなどのトークンを流動性プールに預けることで手数料収益を得る「イールドファーミング(流動性マイニング)」が行えます。価格変動リスク(インパーマネントロス)を抑えながら報酬を狙える点で、ステーブルコインであるUSDTはDeFiでの運用に適した選択肢のひとつです。
複数チェーンに対応した柔軟性
多くの仮想通貨は単一のブロックチェーン上で発行されますが、USDTはTRON・Ethereum・TONなど複数のネットワークでネイティブに発行されています。これにより、利用シーンに合わせて手数料・速度・対応サービスの異なるネットワークを選択できます。
USDTのリスク・デメリット
USDTは価格安定性の高さから広く利用されていますが、特有のリスクも存在します。利用前に以下の点を理解しておくことが重要です。
中央集権リスク(Tether社への依存)
USDTはTether Limited社が中央集権的に管理しており、その価値はTether社の信用力に依存しています。Tether社が経営破綻したり、裏付け資産の管理に問題が生じた場合、USDTの価値が1ドルを大きく下回るリスクがあります。ビットコインのように分散型で管理される仮想通貨と異なり、発行体の存在が前提となる構造です。
過去にはTether社と関連会社Bitfinexによる損失隠蔽疑惑で裁判に発展したほか、裏付け資産の不足を指摘する報道もありました。これらの多くは和解または否定されていますが、中央集権型ステーブルコインに固有のリスクとして継続的に認識しておく必要があります。
裏付け資産の透明性:アテステーションと監査の違い
Tether社は「100%の裏付け資産(1:1ペッグ)」を公式に主張しており、2026年3月31日時点の報告では純資産(超過準備金)が数十億ドル規模にのぼると報告されています。裏付け資産の構成は米国短期国債が中心で、近年は金(ゴールド)やビットコインの保有比率も高まっています。
ただし、Tether社が開示するのはBDO Italyによる「アテステーション(合意手続きに基づく証明)」であり、国際的な会計基準に基づく完全な会計監査(GAAS監査)ではありません。アテステーションは指定された財務数値を確認するものに過ぎず、すべての財務取引や内部統制の妥当性を包括的に検証するわけではありません。
- アテステーション:特定の主張(「準備資産が流通量以上ある」等)を合意した手続きで確認する報告。範囲が限定的。
- 完全な会計監査(GAAS監査):財務諸表全体の正確性・内部統制・適正開示を包括的に検証する。監査人が独立した意見を表明する。
規制リスク(EU・米国の動向)
2026年7月1日をもって、EUの規制(MiCA)への対応申請を行わなかったUSDTは、EU域内の主要取引所での上場廃止(デリスティング)が進みました。EU圏では代わりにUSDCなどのMiCA準拠銘柄が相対的に優位な立場になっています。米国でもステーブルコイン規制法案をめぐる動向が注目されており、今後の制度変更がUSDTの利用環境に影響を与える可能性があります。
ペッグ乖離リスク
USDTは設計上1ドルとの連動を保ちますが、市場全体が急激に変動した際に一時的に価格が乖離することがあります。過去にはTerraUSD(USTC)崩壊時(2022年5月)やシリコンバレー銀行破綻時(2023年3月)に小幅な乖離が確認されています。いずれも短期間で回復しましたが、極端な市場ストレス時には一定のリスクが残ります。
大きなリターンは期待できない
USDTは米ドルに連動するため、為替変動を除けば価格そのものの値上がりは期待できません。仮想通貨投資で資産を大きく増やしたい場合、USDTはその手段には適していません。資産の安定的な保存や決済・送金の中継通貨として活用するものです。
USDT vs 主要ステーブルコイン比較
ここではUSDTと主要ステーブルコインを比較し、それぞれの特徴や使い分けのポイントを整理します。
USDTとUSDCの違い:規制対応・透明性で異なる2強
ステーブルコイン市場における「2強」は、USDTとUSDC(USD Coin)です。いずれも米ドルペッグの法定通貨担保型ステーブルコインですが、規制対応・透明性・市場での役割において大きく異なります。
| 比較項目 | USDT(テザー) | USDC(USD Coin) |
|---|---|---|
| 発行元 | Tether Limited | Circle社 |
| 流通量 | 約1,800億ドル台(最大) | 約600億ドル台(2位) |
| 市場シェア | 約6割前後(時期により変動) | 約18% |
| 透明性 | アテステーション(四半期) | 月次のアテステーション(Grant Thornton) |
| EU規制(MiCA) | 未対応(EU上場廃止) | 対応済み(EU継続利用可) |
| 日本での取り扱い | なし | SBI VCトレードで取り扱い |
| 主な利用シーン | 新興国・海外取引所・DeFi・送金 | 機関投資家・EU市場・規制準拠環境 |
| 裏付け資産 | 米国債・金・BTCなど | 米ドル・短期米国債が中心 |
USDTはグローバルな流通量と取引所での圧倒的な基軸通貨としての地位を持ちます。一方、USDCは規制準拠と透明性の観点で機関投資家から評価されており、EU市場での存在感が増しています。MiCA施行後のヨーロッパではUSDCが優位ですが、アジア・中東・アフリカなどの新興市場ではUSDTが依然として圧倒的な存在感を示しています。
その他の主要ステーブルコイン
| 名称 | 種別 | 発行元 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| DAI | 仮想通貨担保型 | MakerDAO | 分散型。OverCollateral(超過担保)方式でペッグを維持。日本国内取引所での取り扱いは要最新確認 |
| PYUSD | 法定通貨担保型 | Paxos(PayPal向け) | PayPalプラットフォームで利用可能 |
| JPYC | 法定通貨担保型 | JPYC株式会社 | 日本円連動。電子決済手段として法的に分類 |
| JPYSC | 法定通貨担保型(信託型) | SBI新生信託銀行 | 日本円連動。SBI新生信託銀行が発行する信託型ステーブルコイン(第3号電子決済手段)。SBI VCトレードで取り扱い。 |
| RLUSD | 法定通貨担保型 | SCTC社(Ripple Labs傘下) | Ethereum・XRPLで発行(国内対応はERC-20のみ)。SBI VCトレードで2026年6月より取り扱い開始。日本初の第4号電子決済手段 |
関連ガイド
USDTの最新動向(2026年)
2026年はUSDTを取り巻く規制・市場・事業の各面で大きな変化が起きています。主要トピックを整理します。
EU:MiCA規制への未対応によるデリスティング
EU(欧州連合)のデジタル資産規制「MiCA(Markets in Crypto-Assets)」が2026年7月1日を境に厳格化され、Tether社が同規制に基づく認可申請を行わなかったことから、EU圏内の取引所でUSDTに対する取引制限・一部上場廃止の動きが進んでいます。対応状況は取引所によって異なりますが、MiCA準拠型のUSDCやEURCが相対的に優位な立場となる場面が増えています。
ただし、USDTの市場支配力はEU外では引き続き強く、アジア・中東・アフリカなどの地域やDeFiでの利用は変わらず活発です。
裏付け資産の多様化と透明性の向上
裏付け資産の構成は米国短期国債が引き続き大きな割合を占めていますが、近年は金(ゴールド)やビットコインの保有比率も高まっています。Tether社は流通量を上回る超過準備金を保有していると報告しており、準備資産の状況は公式Transparencyページで日次更新されています。透明性は過去と比べて改善されていますが、アテステーションにとどまる点は従来通り留意が必要です。
法執行機関との協力
Tether社はOFAC(米国外国資産管理局)などの法執行機関と連携し、不正取引やサンクション違反が疑われるウォレットアドレスの凍結に積極的に協力しています。2026年に入ってからも複数の大規模凍結事例が報告されており、コンプライアンス対応の姿勢は強化されています。一方で、TRONネットワークを中心とした匿名性の高い利用が規制の届かない領域での悪用を助長するとの批判も続いています。
事業の多角化
Tether社はステーブルコイン発行にとどまらず、ロボティクス(Neura Roboticsへの投資)、教育・トークン化推進(ドバイ等との連携)、金(ゴールド)関連商品への展開など、事業を多角化しています。また、米国市場向けの規制準拠型ステーブルコイン「USA₮(USAT)」構想も発表されており、地域規制への対応を念頭に置いたプロダクト分化の動きが続いています。
日本でのUSDTの法的位置づけ
2026年7月時点で、USDTは日本国内の暗号資産交換業者ではいずれも取り扱われていません。日本でUSDTを利用したい場合は、海外取引所やDEX(分散型取引所)を経由する必要があります。
なぜ日本でUSDTは取り扱われていないのか
日本では2023年6月に改正資金決済法が施行され、ステーブルコインが「電子決済手段(EPI)」として法的に位置づけられました。この制度では、ステーブルコインを取り扱う事業者は金融庁への登録と監督が必要です。日本の電子決済手段(EPI)スキームでは、発行体の登録に加え、仲介業者(電子決済手段等取引業)の関与や信託・銀行スキームの整備が必要です。海外発行ステーブルコインの国内流通に向けた制度的な枠組みが未整備であることが、USDT非取り扱いの主な背景です。
国内で購入・取引可能なステーブルコイン
米ドル連動のステーブルコインとして日本国内で取引可能なものとしては、SBI VCトレードで取り扱いが始まったUSDC(USD Coin)があります。また、円建てステーブルコインとしてはDAI(コインチェック・GMOコインなど)、JPYC(JPYC株式会社発行)があります。
今後の展望
日本では金融庁がステーブルコイン規制の整備を継続的に進めており、将来的に海外ステーブルコインの国内流通に向けた枠組みが整う可能性があります。ただし、USDTが日本で取り扱われるためには、Tether社が日本の規制要件に準拠する必要があり、現時点では具体的な見通しは不透明です。
よくある質問(FAQ)
USDTについて、特に疑問を持たれやすいポイントをQ&A形式でまとめました。
Q USDTとは何ですか?
Q 日本でUSDTは購入できますか?
Q USDTとUSDCの違いは何ですか?
Q TRC20とERC20のUSDT、どちらを使えばよいですか?
Q USDTの裏付け資産は何ですか?本当に安全ですか?
Q USDTのウォレットが凍結されることはありますか?
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