イーサリアム上の匿名性を高める技術「Semaphore(セマフォ)」実装へ
- イーサリアムがプライバシーを強化
- イーサリアム上の匿名性を高める技術「Semaphore」が新しいミキサー「MicroMix」に実装される。イーサリアムのプライバシー強化を支える技術が、研究段階から実験段階へと進んでいるようだ。
イーサリアムがプライバシーを強化
イーサリアムのプライバシー強化を支える技術が、研究段階から実験段階へと進んでいるようだ。
今年5月下旬、イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏は、イーサリアムブロックチェーン上の取引におけるプライバシーを高める方法の提案を行ったが、それがこの度、ミキサー「MicroMix」として具体化された。
ミキサーとは、取引データを複数混ぜ合わせて個別のアドレスを特定できなくするミキシングを行うソフトウェアで、取引情報のプライバシー保護が主な目的だ。
ビットコインやイーサリアムなどのパブリックブロックチェーンでは、通貨の取引履歴と残高は公開されており、「Etherscan」のようなブロックエクスプローラを使えば、特定のアドレスに関連する全ての取引を追跡することが可能だ。透明性が高いということは、匿名性が低くなることにつながる。
MicroMixは、イーサリアムおよびイーサリアムベースのトークンのためのミキサーで、送信アドレスを不明瞭にする方法を用いて、ETHを任意のアドレスに送信することで、取引のプライバシーを高めることができる。MicroMixは分散型かつ非カストディ型であるため、Ether Mixerのような中央集権的で、カストディ機能を持ったミキサーの欠点、つまり、ユーザーが当該ミキサーを全面的に信頼して資金を託すことから発生する、次のようなリスクを回避できるという。
- 預け入れた資金の盗難
- 入金と出金のアドレスをリンク
- 検閲や閉鎖
また、MicroMixはゼロ知識証明技術を用いて、取引履歴を匿名化する。
具体的には、ユーザーがMicroMixアプリを使用して、一部のETHまたはトークンを非カストディ型のスマートコントラクトに預け入れることで、アドレスを公開せずに入金を実行したという証明を生成し、この証明がオペレーターを介してスマートコントラクトに送信される。そして、スマートコントラクトにより、ETHは受取アドレスに送信され、少額の手数料がオペレーターに払い戻される。
資金を混ぜ合わせるトランザクションに対し、ガス(手数料)を支払うのは、第三者であるオペレーターであるため、送信者がガスを受取人に支払う必要がない。
匿名性を高める技術「Semaphore」
このような特徴を持つMicroMixを支える基盤となっているのが、Semaphore(以下「セマフォ」と表記)という新しい「匿名の情報伝達」技術だ。セマフォは、イーサリアム上でユーザーが任意の文字列の承認を通知できるシステムであり、ユーザーの特定情報ではなく、以前に承認された事柄のみを公開するものだという。
セマフォは、スマートコントラクトとゼロ知識証明で構成され、連携して動作する。
開発者によると、セマフォは、ミキシングだけではなく、近い将来匿名ログイン、匿名DAO、匿名投票、報道などの他のプライバシー強化アプリケーションに用いることが見込まれるという。
仮想通貨メディアDecryptによると、MakerDAOのスマートコントラクト責任者は、セマフォが可能にする匿名投票はイーサリアムブロックチェーンに多くのメリットをもたらす可能性があると述べている。
例えば、毎週オンチェーン上でおこなわれる、Makerの重要課題に対する投票などだが、アドレスを公開しなくてはならないため、躊躇するユーザーも多いという。また、アドレスを公開することなしに、希望するプロジェクトへの資金提供も可能になる。
仮想通貨の匿名性を高めるサービスとして注目を集めるミキシングだが、今年に入り、相次いで大手ミキシングサービス会社が強制停止や閉鎖に追い込まれている。匿名性と透明性は相反する概念であり、匿名性を高めることは、マネーロンダリングなどの犯罪行為に利用される可能性が高まることでもある。
そんな中で、分散型/非カストディ型のMicroMixがどのように進展していくのか、注目されるだろう。
なお、MicroMixはまだ実験段階であり、イーサリアムテストネット「Kovan」上のみでプロトタイプとして展開されている。監査も受けておらず動作環境が保証されないため、実際の資金を運用しないようにと、開発者は注意を呼びかけている。
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