「プレミアム市場」が期待される仮想通貨保険市場、世界最大手ロイズやエーオンなど続々参入
- 成長が期待される仮想通貨保険市場、世界の保険大手が次々参入
- 急成長するサイバーセキュリティ市場を超える市場規模拡大が見込まれる仮想通貨関連の保険市場。ロイズやエーオンなど保険大手が次々参入する中、今後5~10年以内に”プレミアム市場”に成長するとの見方もある。
成長が期待される仮想通貨保険市場入
2017年(2年前)に熱狂的な盛り上がっていた仮想通貨業界には「存在しなかった」仮想通貨保険市場が、成長の兆しを見せているようだ。
米サンフランシスコに本拠を置くCoalition社は、2年前に設立されたサイバーセキュリティ保険のスタートアップだが、この2年間で既に10,000社を超える顧客と5000万ドル(約53億5000万円)の保険料収益をあげる企業へと成長している。そのうちの500社以上が、取引所やデジタル資産ヘッジファンドなどの仮想通貨関連企業だという。
米メディアForbesの報道によると、同社の共同創設者でCEOのJoshua Motta氏は、現在の仮想通貨保険市場は、2億ドルから5億ドル(約214億円~535億円)相当の保険料収入があるだろうと述べている。また同氏は、年20%〜25%というペースで急拡大しているサイバーセキュリテイ保険の市場よりも、仮想通貨保険市場はより速いペースで成長すると予想しているという。
仮想通貨保険市場へ参入しているのは、スタートアップだけではない。
イギリスを本拠とする世界最大級の保険組合ロイズ(ロイズ・オブ・ロンドンとして知られる)に属する保険引受業社・ブローカー数社が、すでに、主要仮想通貨関連企業に対し次のような保険サービスを提供している。
- 米仮想通貨取引所最大手のコインベース
- 米カストディサービス企業Anchorage社
- 米機関投資家向けカストディ大手BitGo
- スイス金融テクノロジー企業Metaco
- 米仮想通貨カストディ機関 Kingdom Trust
2億5500万ドル(約273億円)を上限とするホットウォレットへの補償
顧客保有の仮想通貨への保険サービス提供
最大110億円の保証:秘密鍵のハッキング、盗難、物理的損傷と喪失
金融機関向け デジタル資産管理技術SILOに対し あらゆる盗難や災害に対する補償を想定
ロイズの数ある保険ブローカーの中でも、世界120カ国に営業拠点を持つ多国籍企業Aonは積極的に仮想通貨やブロックチェーン業界へのサービス提供を進めており、上記コインベース、Anchorage社、そしてとMetacoと提携を結んでいる。同社は、仮想通貨保険市場の50%を占めているとも言われている。
中でも、コインベースに対しては、保険仲介業務にとどまらず、同取引所が自社の専属保険会社(キャプティブと呼ばれる)を設立するための支援を提供し、結び付きを強めているようだ。
Aonのテクノロジー保険ブローカー部門の責任者であるEric Boyum氏は、アメリカの規制当局が証券と見なす仮想通貨を明確にし、規制の枠を定めることが、保険市場の成長には追い風になると述べている。また、保険業界のベテランで、仮想通貨保険スタートアップBlockReの保険部門責任者、Ty Sagalow氏は、仮想通貨保険市場の将来への期待を次のように語った。
この市場は次のサイバーだと考えている。今後5~10年以内に数十億ドルのプレミアム市場に成長するだろう。
仮想通貨業界にとって、ハッキング等のサイバー被害をいかに食い止めるかは重大な課題であり、セキュリテイ対策には多くの財源と労力が割かれている。 企業ごとにそのアプローチは異なり、外部の保険に頼らず、独自の保険基金を設けるBitMexやバイナンスといった主要取引所もある。
しかし、時価総額32兆円を超えた仮想通貨と保険による保障規模には大きな隔たりがあるのも事実だ。
そのギャップに対し、大手保険会社がビジネスチャンスを見出し、仮想通貨業界に参入してきたことは、資産としての仮想通貨の地位が固められつつあるということかもしれない。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します