医薬品の流通網にブロックチェーン 日通、2021年を目処
2021年までに最大1000億円投じる
日本通運がアクセンチュア、インテル日本法人と協力し、ブロックチェーンを利用した輸送網構築に乗り出した。2021年の完成を目指し、最大1000億円を投じる予定。医薬品を皮切りに、ブランド品などへの応用も検討している。日経新聞が9日に報じた。
偽造医薬品の流通と流通基準の導入
今回報じられた取り組みの契機となったのが、18年末に発表された日本版GDPガイドライン(Good Distribution Practices:医薬品の適正流通)。
これは医薬品の流通過程や品質の管理、偽造医薬品対策を目的とした流通基準で、17年に日本国内でC型肝炎の治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造薬が出回ったことやそれまで国際的に認知されていない基準を採用していたことなどが背景にある。
日本版GDPガイドラインで挙げられる、輸送・保管エリアの温度管理やモニタリング、温度逸脱リスクへの対応、温度記録など出荷までのデータ履歴の作成・保存といった要件をクリアするにあたってブロックチェーン技術が選定されたようだ。
参考:医薬品物流の 共同プラットフォーム構築で品質管理・効率化を実現
全体の枠組みは以下のようになる。
医薬品に無線自動識別(RFID)タグを貼り、輸送用の箱には周囲の温度や位置情報を読み取るセンサーを取り付ける。
工場や製薬会社、倉庫、トラックなどにタグとセンサーの情報を吸い上げる専用機器を設置。
商品が各拠点を通過する際にデータを自動で取得し、共有する。
RFIDタグは衝撃も記録することが可能で、途中で貼り替えられるなどの異常があれば流通経路から排除する。
インテルがセンサーなどの機器を提供し、アクセンチュアがシステム開発を担当する。
ブロックチェーン、ビジネス利用加速か
日経新聞は今回の取り組みについて、「ブロックチェーンは暗号資産(仮想通貨)の利用が先行していたが、大企業が本業に取り入れてビジネスの効率化などに使う段階に入ってきた」と報じている。
昨年5月には、会計事務所「デロイトトーマツ」が「ブロックチェーンは実戦型へ変わりつつある」という内容の調査報告を発表。ブロックチェーン技術を導入する企業の数の順位はテック系、金融に続いて製造業、小売・卸売・物流などサプライチェーンに関連の深い業界が並ぶ。
関連:世界最大級会計企業の最新調査「ブロックチェーンは実用段階に」
大手小売企業ウォルマート・カナダは大量の在庫を処理する際のブロックチェーン技術の効率性に注目し、ブロックチェーンによって自動化された貨物追跡・決済システムを採用した。
関連:加ウォールマート、物流・決済にブロックチェーンを実導入
また、中国ではコロナウイルスへの対策としてブロックチェーンを利用したマスクの物流管理やオンライン診療のアプリケーションが続々と開発されている。
関連:中国:新型肺炎対策でブロックチェーン活用 マスクの物流管理から遠隔治療まで
国際貿易では世界の海運大手の上位6社のうち5社が参加するプラットフォーム「TradeLens」が実際に運用されていて、日本の大手海運「ONE」も参加した。
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証券領域でも、日本取引所グループ(JPX)および証券保管振替機構が、証券の約定後の業務処理で、ブロックチェーンを活用した効率化を目指す実証実験を4月にも開始することがわかっている。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します